自粛中に観た映画(その1)
『半世界』
緊急事態宣言が発令される前に観た『凪待ち』が良かったので、味を占めて『半世界』も借りてみた。人生のピークを迎えつつ、ぼちぼち折り返す世代が観る映画として、また、今の自粛ムードの中で価値観に革命が起きている今だからこそ観るべき映画として、個人的にも好みの内容の作品だった。いろんなことあるけど人生はなかなか終わらないよね…と自分も常々思ってたところだったので。
池脇千鶴が物凄い生々しい良妻を演じていてグッときたが、その夫で主人公の稲垣吾郎が、やっぱりこの空気の中で一人浮いていたように思う。稲垣吾郎は早く「稲垣吾郎」を辞められたらいいのに。『凪待ち』の香取慎吾は「慎吾ママ」だけではなくちゃんと「香取慎吾」を辞められていて良かった。
『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』
CGアニメ世代の娘(4歳)と一緒に観賞。時々、キャラを殺すことなく普通に面白く観れてたが、噂通りのラストのちゃぶ台返しに、わかっていたけど実際見たらちょっとだけ「うっ…」となった。
昔の名作ゲームにいつまでも執着するなよという考えと、あの頃の冒険の思い出は永遠に不滅だ、という思いのぶつかり合いなのかな。言いたいこともわかるし、そのままドラクエⅤをなぞっても面白くないんだろうけど…世の中にはあんまり言葉にしない方がいいこともあるんだな、と学びになった。娘はビアンカではなくフローラと結婚してほしかったのだそう、髪の色が好きな水色だからなんだとか。なんじゃそりゃ。
『岬の兄妹』
凄かった、『ジョーカー』以来の衝撃。正直『半地下の家族』(監督はポン・ジュノ監督の助監督だったのだそう)よりも全然ぶち抜かれた。眠る前に観たのだけど、朝起きてすぐにこの映画のことを考えた。「よかった…夢か…」みたいなニュアンスで、「よかった…映画だった…」みたいな。悪夢のようで現実しか詰まっていないような映画だった。
この兄妹の暮らし、福祉はどうなってんだ?みたいな意見もあるようだけど、実際はなかなか福祉の門を叩くに至らないのがリアルというか、案外社会から見つけてもらえず、そのままなし崩し的に現状の生活に慣れ、終わりの時間が来るのを待つように暮らしている人たちはいる。我が家の長男がそうだったから。
ラストシーン、兄の携帯にかかってくる電話で締めるのがまた良かった。妹への「お仕事」の電話だろうか。見る人を選ぶだろうけど、個人的には好きなシーンだらけの映画だった。
『惡の華』
朝ドラ『スカーレット』の息子役、伊藤健太郎の演技が好きだったので観た。ノイタミナのアニメでは描かれなかった原作の最終回までを映像化していたが、原作をなぞっただけ感じは否めなかった。ストーリーを必死で追っかるように映像を観ている感じ。中村さん役の子にスポットが当たりすぎるのと、佐伯さん役の子と高校で出会った小説書く女の子が原作ほど魅力的に見えなかったのもあるかもしれない。伊藤健太郎君の演技はスカーレットほどではなかったが、でもやっぱり違和感無く見れた。CGが安っぽいのもちょっと気になった。押見作品はやっぱり漫画で読みたい。
『シンデレラ(実写版)』
娘のために録画しておいた地上波放送のシンデレラを、娘の横でなんとなく観ていたら、これがやけに面白く、つい最後まで観てしまった。本質を射抜くようなシンプルで実のあるセリフがどれも良かった。
絵本で散々見てきた継母とその連れ子たちの執拗な意地悪が、実写になるとああも胸糞悪くなるのかと、それも発見だった。胸糞悪すぎて、その後のシンデレラの逆転劇を見ずにはいられなくなる感じで最後までズルズルと観てしまう感じ。水戸黄門を観続けるおじいちゃんたちも、もしかしたらこれと同じ感覚なのかもしれない。