健康寿命とは何か? その活用法とは? そして真の意味は何か?
健康寿命は、病気や介護を必要とせず、自立して日常生活を送れる期間を指します。これは単に生きる年数(平均寿命)ではなく、健康に生活できる年数を意味します。令和5年の健康寿命は、男性72.68年、女性75.38年です。令和5年の平均寿命は、男性81.09歳、女性87.14歳です。
どのようなデータを元に解析するのか?
健康寿命の解析には、自己申告データが使用されます。厚生労働省の「国民生活基礎調査」の健康票(3年ごと)による、一般国民を対象とした無作為抽出調査が基になります。主指標である「日常生活に制限のない期間」は、「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか?」という質問に対する「ある」「ない」の回答に基づき、「ある」と答えた人を不健康、「ない」と答えた人を健康とみなして分析します。また、副指標である「自分が健康であると自覚している期間」は、「あなたの健康状態はいかがですか?」という質問に対する5段階評価を用い、「よい」「まあよい」「ふつう」の回答を健康、「あまりよくない」「よくない」を不健康として評価します。詳細は以下質問5・7を参照してください。
自己申告で大丈夫?その問題点は何か?その信憑性はいかに。
自己申告データにはバイアスが存在するのが問題です。高齢者が自分の健康を過大評価して「まだ健康だ」と感じたり、逆に若者が「体調がすぐれない」と過小評価することがあるため、主観的な誤差が生じやすい点が指摘されています。また、自己申告と実際の健康状態との間には乖離が存在することもあります。(図6-1を参照)
しかし、自己申告には主観が入るものの、大規模な調査によって多くのデータを集めることで、全体の傾向を把握するには十分役立ちます。さらに、年齢や性別などの要因を統計的に調整することで、個々のバイアスがあっても全体として信頼性の高いデータとなります。
バイアスの原因
高齢者が健康を過大評価する原因
自己効力感の維持:高齢者は、長い人生経験によって培った自信や自己効力感を維持したいという心理が働きます。自分が「まだできる」と思い込むことで、社会的役割や自立した生活を続けたいという意識が強くなります。
老いへの抵抗感:年齢を重ねることを受け入れづらく、老化や身体の衰えを認めたくないという思いから、健康状態を実際よりも良く認識する傾向があります。
若者が健康を過小評価する原因
ストレスや不安の影響:若者は、社会的プレッシャーや将来への不安から精神的負担を感じやすく、その影響で健康状態を実際よりも悪く評価しがちです。
健康意識の過剰:健康情報が多く流布している現代では、若者は自分の健康状態を厳しく評価する傾向にあります。軽微な体調の変化にも敏感に反応し、健康リスクを過大に感じやすいのです。
健康寿命の活用法は何か?
健康寿命を活用する際、個人の健康目標に焦点を当てることが重要です。予防医療、運動習慣、栄養改善などに関する情報を活用し、健康寿命を意識した生活を送ることが推奨されます。これらの情報は他の医師の意見を参照して下さい
在宅医の私が特に伝えたいことは、
若者は動ける時期にこそ、自分のエネルギーや能力を最大限に活かし、今しかできないことに自己投資するべきだという点です。例えば、旅行や教育、自己成長に向けたスキル習得など、若いうちにしか挑戦できないことにお金を使い、貯蓄より未来の自分を成長させるための投資を行うべきです。
一方、高齢者は体力を過信せず、節約一辺倒の生活から抜け出し、世代を超えた交流や思い出作り、学びの共有、冒険的な自己探求、ライフストーリーの伝承を重視するべきです。これにより、健康だけでなく心の豊かさや社会的つながりを深め、より積極的に人生を楽しむことができます。
結論
健康寿命を延ばすための健康対策や食事、運動は確かに重要ですが、それ以上に重要なのは、各世代がその時々に持つエネルギーを最大限に活用し、充実した人生を送ることです。若者は自己成長に、高齢者は思い出作りや交流にお金を投資し、今しかできないことにしっかりと向き合うことが、単なる健康維持よりも人生を豊かにします。健康寿命を延ばすことを目的化するのではなく、人生の質を高め、世代間で知識や経験、情熱や活力を共有し社会を活性化していくことが真に大切だといえます。
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