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セーラの叔父さま 9話

セーラの告白

「叔父さまはもし私が未来からやって来たと言うと信じられますか?」
「未来!おお!それは面白い!!未来ってどの位未来なんだね?」
「21世紀・・・21世紀の日本・・・です」
「じゃあ、その時代の日本のことがわかるんだね。」

叔父さまは目をキラキラ輝かせながら私を見つめる。
叔父さまが本当に信じているのか信じたフリをしているのかわからないが楽しんでいるのは事実のようだ。

「でも何故そういう君がセーラの姿をしているんだい?」
「それが私にも不思議なんです。外見はセーラ。中身が未来からやってきた日本女性。
どういうことなのか考えても考えてもわからないのです」
「ふーん。君が日本人かどうかは調べることが出来るが、それは後にしよう。
もっと詳しく君の話を聞いてみたいな」

やっぱり叔父さまは頭の切れる人物で間違いないようだ。こういう子供の話を全否定せずに冷静に分析しようとしているようだ。

「今、叔父さまのいる世界が本当は小説の中の世界だと言えば信じられますか?」
「ここが小説の中の世界だって!?」

さすがに冷静な叔父さまもこういう設定には少々驚いたようだ。そりゃ驚くだろうね。私自身とっても驚いたんだから。

「セーラ、君の言う話が君の創作だとしたらかなり奇想天外で小説にすればウエルズとかジュール・ヴェルヌよりも面白い物が書けるかもしれないねえ」
「私もそう思います」
「・・・で、ここはなんという小説の世界なの?有名な小説かな?」
「『小公女』というお話です。作者はフランシス・ホジソン・バーネット。出版は1905年です。この小説自体は1850年代ぐらいを回想しながら書かれた物だと思われるのでまだこの世界では実在していないと思います」
「ほほう・・・これはなかなか詳しい設定だね。君が創作したとするなら驚きだよ」
「やっぱり創作だと思われます?」

少し悲しそうな顔をして叔父さまの顔を見上げると、叔父さまは優しい顔をしてセーラに話しかける。

「いやいや、そうじゃない。信じているよセーラ。もっと話を続けてくれないかな。
君の話は実に面白い。もっともっと先を聞きたいんだ。いいだろう」

叔父さまが信じているかどうかもうどうでもよいと思えてきた。普通こんな話をまともに聞いてくれるわけないし、聞こうとしているだけ叔父さまがとても辛抱強い人なんだろう。
10歳の子供の戯言を大真面目で聞こうとする叔父さまの優しさに甘えるのもどうかと、実際中年女性の私は思うのだ。

「ごめんなさい叔父さま。これはやっぱり私の創作なんだと思います。それを大真面目に聞いてくださってありがとうございます」

叔父さまはしばらく真剣な顔をしてセーラの顔をじっと見ていた。
そしてにっこり微笑んでこう言った。

「セーラ、ちょっと君に見せたい部屋があるんだ。こっちにおいで」
「部屋?」


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