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セーラの叔父さま 5話

セーラの叔父さまは・・・

大きなソファーにゆったりと腰掛けているとなんだか眠たくなってきた。
このまま寝てしまっても良いものだろうかと半ばゆめうつつで考えていたとき、突然部屋の大きな扉が勢いよく開いた。
「やあ!遅くなって悪かったね。君が姉さんの娘のセーラだね。
なんて可愛いんだ!」
背の高い金髪碧眼の顔立ちの整った若い男性が私をハグしながら話しかける。
「姉さんの子供の頃の写真にそっくりだ。ロンドンからここまで疲れただろう。十分に休息を取ってくれたまえ。お腹はすいていないかい?食事の用意もすぐにさせるからね。えーと、それからなにが必要なのかな?どうして欲しい?何でもしてあげるからね。」
叔父さまはしゃべり出したら止まらない。
いつの間にか後ろにいたさっきの執事さんが咳払いをひとつする。
「旦那様、お嬢様が困っておられます。」
「あ、そうかそうか嬉しくなってついはしゃいでしまった。」

叔父さまの第一印象は陽気で明るいフランス男っていう感じ。
例えて言うなら京極堂シリーズ(京極夏彦)に出てくる榎木津っていうところか。漫画版の志水アキが描く榎木津に似ている。

お金持ちで空気読まないけど何故か憎めない。
自分の好き勝手して生きているっていう感じだけど人を貶めようとかマイナスの感情がないところがとっても好き。
執事さんも私の好みだけど、叔父さまも私の好みだわ。
今までミンチン先生のような辛気くさい人と顔を合わせていたのにフランスに来た途端明るい未来が見えてきたような気がする。
でも・・・油断は禁物。落ち着いて行動しなければ・・・。

美味しい食事をいただいて素敵な部屋を与えられて広いお庭を散策したり馬車で遠出をして素敵な湖畔でランチを食べたり・・・
まるで夢のような時間を過ごしたのだが果たしてこのまま浮かれていて良いものか?
長期休暇が終わると普通の人ならミンチン女子学院へ戻りなさいって言うだろな。
私の誕生日まであと二ヶ月。
父親が亡くなって孤児になった私はミンチン院長に酷い扱いを受けるようになるって言ったって信じてもらえるだろうか?
かなり難しいだろうなあ。
どうすればよい?

部屋の窓をぼーっと眺めながらそんなことを考えていると後ろに人の気配。
「セーラどうしたの?そんな難しい顔をして。
悩み事でもあるのかな?良ければ僕が聞いてあげるよ。
勉強のことかな?それとも友達のことかな?」
叔父さまがニコニコしながら話しかけてきた。
「いいえ、お友達も優しいし、勉強は楽しいんです。ただ・・・」
「ただ・・・?」
澄んだ青い目で私の顔を見つめる叔父さま。
アラン・ドロンの青い目に似てるわ・・・なんて考えてしまう私。
今はそんなことを考えている時ではない。

「あのね、叔父さま。叔父さまは私が本当に叔父さまのお姉様の子供だとどうして信じたのですか?
一度も会ったことがないし今まで音信不通だったのに急に姪です。なんてやってくるなんて不思議だと思いませんか?」

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