セーラの叔父さま 25話
セーラのつぶやき
セーラの部屋にはほとんどベッキーと叔父さまぐらいしか来ない。
しかし、アーメンガードは行くことが出来る機会があればたまにやってくる。
もっともそういう機会は滅多にないのだが。
今までお金持ちで周りからちやほやされてたのに突然一文無しになると、まあほとんどの人は関わり合いになりたくないと思ってしまう。それが人間というものだ。
だけど、アーメンガードはセーラの境遇が変わっても変わらずセーラを好きでいてくれる。
こういう人は大事にしなければいけない
セーラはこういう境遇になって始めてアーメンガードの素晴らしさに気がついたのだ。
「辛い目に遭うと、人のことがよくわかるのよ。私も辛い目に遭ったので、あなたがどんなにいい人だか、本当によくわかったわ」
と、原作で言ってた通りの台詞をセーラ(私)はアーメンガードに呟いた。
アーメンガードってね、申し訳ないけれどあまり頭が良いわけではない。
セーラが優しくしてあげて友達になったけれど、セーラ自身も気がついていないかもしれないけれど、優越感。というものがあったに違いない。
できの悪い子に勉強を教えてあげる、出来が良くてしかも優しい私・・・っていう心理があったのは間違いないと思う。
ロッティに対してもそう。ロッティが屋根裏部屋にやって来た時空想力を最大限使って、ここは素敵な場所だと言うのだけど、それはロッティに惨めな自分を同情の目で見られたくないからなのだ。
セーラはかなりプライドの高い子供なのだ。
今まで気にもとめていなかった貧乏人に自分がなってしまったということを恥ずかしく思っているのだ。
しかし、それを周りに悟られることは死んでも嫌なのだ。
かなり疲れる性格だよね・・・と私(セーラ)は何となくそんなことを考えているうちにいつの間にか寝てしまっていた。
翌朝、ああ今日も一日中仕事仕事仕事・・・。
身支度を整えて叔父さまに挨拶をした後ベッキーと共に階下に降りていく。
「遅いじゃないか!さっさと準備をしな!セーラは買い出しだよ!」
いつもの通りコックは怒鳴り散らしている。
何故この人は普通にしゃべれないのだろう。いつも偉そうに怒鳴ってばかり。こういう風にすることによって自分自身が偉いのだと安心するためなんだろうか?
本当に偉い人はこんな横柄な態度はしないはずだということをこのコックは知らないのだろう。
セーラはコックに言いつけられたとおり買い物かごを手に買い出しに出かけて行く。
外は寒い。もうすぐクリスマスなのだ。だが、セーラにはクリスマスなんて全く関係の無いことなのだ。
セーラがいつも心の中で「大家族」と読んでいる家の前を通りかかったとき、その「大家族」の子供たちが通りに出てきた。
この家族は八人の子供がいた。お金持ちらしくみんな白いレースのついた上着など可愛い服を着ている。
中でも5歳ぐらいの小さな男の子は、ほおはバラ色、青い目金髪のとても綺麗な子だった。
「叔父さまの小さい頃はあんな風だったのかしら?」
ついつい、立ち止まってその子を眺めていたセーラ。
そこにその男の子が近寄ってきてセーラに言った。
「ねえ、かわいそうな子。6ペンスだよ。これ、君にあげよう」
うわっ!しまった!このシーンはセーラがみすぼらしい格好をしているから哀れな子供に間違えられるところなんだわ。
心の準備をしていなかったものだから私(セーラ)は少しあわててしまった。
「いいえ、結構なんです。本当に、結構なんです。ご親切は嬉しいですけど、本当に、いただくわけにはまいりませんの」
なんとか原作通りの台詞を言うことはできたけれども、実際にお金を恵んで貰う立場になるなんて精神的にかなりキツイ。
結局、その6ペンス硬貨を受け取ることになるのだがその日の夜はなんとなく気が塞いでしまった。
原作ではセーラはこのこのことで「大家族」の子供たちへの愛情がだんだん深くなったようだけどね、私は彼らを嫌いにはならないけれど過去の自分を含めて金持ちが貧乏人を見る目などについて考えずにはいられない。19世紀末のロンドンと21世紀の日本にいた者の考え方の相違だろうか。