セーラの叔父さま 13話
ミンチン先生の手紙
ミンチン先生からの手紙は事務的で人間らしい優しさなどはひとかけらもない内容だった。
内容を要約すると
「セーラの父親が一文無しになって亡くなった。
セーラの為に立て替えていたお金がある。セーラの叔父がそれを肩代わりになってくれるのならそれでいいがダメならばセーラ自身が働いて返済する必要がある。
それをしなければ訴えるからセーラはロンドンに戻って少年院のような劣悪な所へ行かねばならないだろう。
尚、セーラの借金は○月○日までに支払うこと。一日でも遅れたら一切受け付ける事は出来ません」
とまあこんな感じだった。
叔父さまはこの手紙を見て「ミンチン先生って哀れな人だね」と呟いた。
「哀れな?」
「よく見てごらん、返済期日って昨日だよ。これはきっと意図的にしているんだと思うよ。
どうしても君を劣悪な環境でこき使いたいようだね。
それになんだ!この文章は!父親を亡くした子供に対してこんな風に書く奴なんて聞いたことがない!!
なんて酷い女なんだ!優しさの欠片なんて全く持ち合わせていないんだろうね。」
「・・・さて、困ったぞ。この文面を見る限り何が何でも自分の思い通りにする気満々だということだ。
お金で解決できるのなら簡単なんだが・・・」
叔父さまは難しい顔をして黙り込んでしまった。
私はどうすれば良いのか良いアイデアなんて全く浮かばない。
寒さと飢えを覚悟するしかないのかな。
それにしてもミンチン先生、ここまで意地悪な女もいないよなあ。いや、世の中私が知らないだけで結構こういう風に意地悪をする人間が多いのかもしれない。
・・・なんて、また仕様もないことを考えていると叔父さまの表情がキラリと輝いた。
いたずらっ子がいいことを思いついたっていうような表情だ。
いい男はどんな表情をしても絵になるなあってまたしても中年のおばさん目線で考えてしまう私。この癖は死ぬまで治らないのだろう。
「セーラ、ここで暗くなってしまうのはいけない。
もうすぐお昼だね、今日はお天気も良いから庭先でランチにしよう!
大丈夫!何とかなるよ。僕が何とかしてあげるからセーラは心配しなくていいからね。
じゃ、お昼にいつもの場所へ来てくれるかな?
二人で楽しくランチしよう!」
にっこり微笑むと叔父さまは軽くセーラのおでこにキスをしてそのまま軽い足取りで部屋を出て行った。
「叔父さま・・・一体何を思いついたのかしら?」