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遺作写真展「レンズを通して」のご案内

仁後文晃遺作写真展「レンズを通して」を開催します。
亡くなるまでの約20年の間に撮りためた中から、100点ほどを展示します。
雑木林の中をゆっくり歩いていると出会う風景や小鳥、昆虫、きのこなど。
毎日通って、日々の小さな変化をカメラに収めていました。
ギャラリーでの散策の後は、喫茶コーナーの美味しいコーヒーでおくつろぎください。

2024年10月10日(木)~  20日(日)、10:00~17:00
(10月14日(月)はお休みです)
最終日10月20日は16:00まで

ギャラリー麦
〒350-1331 埼玉県狭山市新狭山2-9-11・2階
電話: 04-2954-7778
西武新宿線 新狭山駅 北口から徒歩約2分
入場無料
月曜、祝日休館

合わせて、仁後文晃本人によるブログ「レンズを通して」も、下記リンクよりご覧ください。http://blog.livedoor.jp/fnigo/

里山の写真散策 

仁後文晃 

           (「埼玉・人とこころ」平成26年7・8号 掲載)

 予期せぬ野鳥が間近の枝に止まっている。ルリビタキである。それも色でそれと直ぐ判る雄である。思わずいつも持ち歩いているカメラを美しい被写体に向ける。息を止め焦点を合わせシャッターを切ろうとした直前、相手は断りもなく眼前から消える。ポーズをして撮って! ということにはならない。

 野鳥に出会うことが期待できる季節は多くは冬である。梢まで裸になった林は、見通しがよくなり見つけやすくなる。高い梢を小さなエナガが飛び歩く。コゲラ、アオゲラが枯れ木でドラムを響かせる。シジュウカラ、ヤマガラ、メジロなどが近くの枝を飛び交う。モズやジョウビタキは低木が守備範囲のようである。ウグイスやアオジは茂みの中、シロハラやコジュケイは林床を音を立てて歩きまわる。変わり種としてはソウシチョウとガビチョウもこのあたりで見かける。特定外来生物に指定されている。在来種の野鳥を駆逐してしまうということのようだ。

 2000年に定年退職したが、考えてみれば現役の時代には空をほっと見上げたり、林をゆっくり散策する余裕も無かった。まして、外資系企業の本社国際部での勤務の時には、否応なしに世界の異文化の海に身を投じることとなった。頭の中にはいつも仕事をどうこなすかで一杯であった。「心ここにあらざれば見れども見えず」だったのだ。しかし、このカルチャーショックが自然を楽しむことや複眼思考を与えてくれることとなった。

 退職を契機に健康維持のため体操会に、また林の手入れなどのボランティア活動のために地元の里山の会にも入会した。幾つかの写真の会には退職前から入っている。「今日が一番若い」という言葉があるが、やりたいことを先延ばしにするのではなく、そのつもりであれば今日も体操と身近の武蔵野の林の散策が楽しめる。どこに出かける時もカメラは常に持参する。

 冬には野鳥、春には木々の芽吹きや若葉や花々、夏にはセミやカブトムシなどの昆虫が子供の頃の夏の日を再現してくれる。秋には黄葉・紅葉にキノコなど刻々と姿を変える雑木林の撮影を楽しめる。毎日のように林の散策をしながら「非日常的な」その時にしか見られないキノコや野鳥に出会うこともある。これも私の写真散策の量が、写真の質に変換されたということになるのであろうか。 

(2014年執筆)





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