ダニング=クルーガー効果とボートレース~「ワタシハ舟券チョットデキル」への道
「ダニング=クルーガー効果」という仮説があります。
通称「チョットデキル曲線」とも言いますが、これは「自分の能力を正しく評価できず、過大評価する」という認知バイアスの仮説です。
ステップとしては以下の通りです。
①馬鹿の山
初級者が陥る。少しの成功で物事のすべてを理解した気になり、自信過剰となっている状態。
②絶望の谷
①の状態から失敗を重ね、自分の技術や知識の不足を感じて自信を失っている状態。
③啓蒙の坂
②の状態から技術や知識を更に身に付け、自信を取り戻している状態。
④継続の台地
③の状態から技術や知識が成熟し、正確な自己評価を行うと共に結果を出し続けられる状態。
よく技術者の間では「完全に理解した」→「何も分からない」→「チョットデキル」の順で語られるそれです。
これをボートレースに当てはめると、恐らくこうでしょう。
①的中の山
②ハズレ・抜け目の谷
③ベットマネジメントの坂
④継続の台地
最初は「1から買えば結構当たる」という売り文句に釣られて舟券を買う。そしたら収支は別として結構当たるし楽しい。しかし収支で勝つためには的中だけではなく収支を意識しなければならないことに気付く。そこで買い目を絞ってみたり、厚く張ってみたりしてハズレを量産する。自信を失う。その中でベットマネジメントや選手特徴・場特徴を知り、徐々に自分の舟券を成熟させていく。そして自分の予想スタイルを確立させ、継続の台地へと歩んでいく。
抜け目に関してはベットマネジメントの坂の途中で何度もぶち当たる壁です。なので、名称としては「抜け目とベットマネジメントの坂」が正しいのかもしれません。
もちろん、③の坂を転がり落ちていき、ボートレースから脱落する人も多くいます。この脱落者をどれだけ減らすかが、業界全体の課題と言えます。
そして今もボートレースと戦っている人々は、ほとんどが③と④の間をかなりの長い時間さまよっている状態です。様々な予想のファクターを取り入れたり、捨てたり、またゴミ箱から拾い上げたりして、自分のスタイルを作り上げていきます。それが「できた」=「ワタシハ舟券チョットデキル」状態になるまでには、相当な時間を要するでしょう。
なお、「ワタシハ舟券チョットデキル」になれば舟券で食っていけるのかというと、そういうわけではありません。私はあくまで、予想スタイルやメンタルの部分を語っているのであって、収支は水物です。スタイルとメンタルがしっかりすれば、簡単に調子を崩すこともなくなるし、長くボートレースを楽しんでいけるよね、ということです。
例としてはボートレースライターの三吉功明氏が挙げられます。三吉氏は「小投資で最大限の利益を目指す」という自分のスタイルをほとんど曲げません。そして、ハズレが続いてもメンタルが自分の予想に影響を及ぼすことも少ない。彼もその意味で、「ワタシハ舟券チョットデキル」の域に達していると言えるかもしれません。
ちなみに、この「ダニング=クルーガー効果」の提唱者は、2000年にイグ・ノーベル賞を受賞しました。もしかしたら、この研究を深堀りしていくと我々もイグ・ノーベル賞を受賞できるかもしれません。例えば、③の坂を転がり落ちていく人と登っていける人の差はどこにあるのか、とか。まあ、そもそもその辺の調査を振興会なりレジャーチャンネルなりがやれって話ですが。