現代宮城風土記#40:仙台の愛宕山
愛宕山
愛宕山は広瀬川中流南岸に位置する山で、広瀬川に並行して東西に尾根が伸びている。古くから人の生活の痕跡が残っており、古代の横穴墓が確認されている。藩政時代には対岸に仙台城下町が拓かれ、西に隣接する経ヶ峯に瑞鳳殿が造営された頃から愛宕神社や大満寺が遷座してきた。明治以降は仙台市の人口増加に伴って山麓が住宅地となった。現在の住所では向山となっている。
愛宕山横穴墓群
仙台市太白区向山にある古墳~奈良時代の横穴群。広瀬川に架かる愛宕大橋の南に位置する。7世紀後半から8世紀初頭にかけて営まれた横穴墓群で、これまで都市計画道路建設,宅地造成等に伴って6次の調査が実施され、計33基の横穴が確認されている。また1基は装飾壁画を有する。
仙台愛宕下発電所
かつて仙台市越路にあった水力発電所。1920年に旧・六郷村を供給区域として事業認可を得て1921年に開業した。大橋の下流約320mの所から取水し、竜の口沢から発電所付近までは導水トンネルが設けられていた。昭和初期には発電所の操業が停止したが、導水トンネルは現存する。
愛宕神社
仙台市太白区向山にある神社。広瀬川に沿った『愛宕山』に鎮座している。元は米沢に鎮座していたが、岩出山、元寺小路を経て1650年に現在地に遷座した。本殿と拝殿は仙台市指定の有形文化財。「愛宕上杉通」「愛宕橋」など『愛宕』の名称が周辺の施設でよく利用されている。
境内
本殿・拝殿
「愛宕神社」の本殿および拝殿。江戸時代初期の建造。本殿は一間社流造で、拝殿は幅5間・奥行3間、入母屋造の建物。屋根はいずれも銅板葺だが、元はこけら葺、桟瓦葺だったが修理によって葺き替えられた。昭和中頃に幣殿を接続した。仙台市指定の有形文化財。
神門
「愛宕神社」の神門。江戸時代後期の建立とされる。三間一戸の八脚門形式で、屋根は切妻造、銅板葺。屋根に関しては元はこけら葺だったが後に桟瓦葺になり、1978年の宮城県沖地震際に銅板葺に改められた。門の左右には天狗像が安置されている。仙台市の登録有形文化財。
境内社
仙台市の「愛宕神社」には4つの境内社がある。
・愛宕天満宮:2008年に寄進によって造営
・勝鬨神社:創建年代は不明で、2006年に遷座
・産霊神社:創建年代は不明、寄進により遷座
・稲荷神社:創建年代は不明で、元は仙台市太白区八本松にあったものが区画整理の際に遷座
仙台愛宕山の経緯度測点標石
「愛宕神社」境内にある測量史跡。1883円に当時の内務省地理局が行った全国の経緯度測量の際に設置された測点標石で、当時は天文測量が基本で星を観測する器械をこの標石に設置して測量を行っていた。測量終了後に永久保存することとなり、現在に至る。
仙台妙見堂
仙台市太白区越路にある仏堂。かつて「愛宕神社」の別当『誓願寺(明治初期に廃寺)』の跡地にある。堂内の妙見菩薩は幕末に閖上で漁網にかかり、愛宕神社内に奉納されたものとされる。また元は相馬氏が信奉する妙見社にあったが、片倉小十郎が閖上の海中に沈めたものとも伝わる。
大満寺(太白区)
仙台市太白区向山にある曹洞宗の寺院。創建年代については定かではないが元は青葉山に鎮座しており、1572年に「龍泉院」の3世和尚が中興したと伝わる。仙台城築城時に虚空蔵堂・千躰仏堂と共に「経ヶ峰」に遷座。「瑞鳳殿」の造営により、1659年に現在地の愛宕山の地に遷座した。
大満寺虚空蔵堂
「大満寺(太白区)」にある虚空蔵堂。1659年に大満寺が現在地に移転する際に造営された。三間四方の宝形造で、屋根は桟瓦葺。仙台市指定の有形文化財。内部には堂よりも古い時期のものとされる厨子があり、虚空蔵菩薩とその脇侍の日光・月光菩薩が安置されている。
大満寺の梵鐘
「大満寺(太白区)」にある梵鐘。青銅製。総長98.5cm、径は75.8cm。5代藩主吉村が4代藩主綱村の供養のために造らせたもので『享保庚子年夏五』と、かつて「大年寺」にあったため『両足山大年禅寺』の銘が入っている。明治時代に大満寺に移設された。仙台市指定の有形文化財。
大満寺の鐘楼
「大満寺(太白区)」にある鐘楼。元は1934年に「松島湾」で遭難した旧制二高漕艇部11人の供養のために『明善寮(現・東北大学学生寮)』に建てられたもので、戦時中に鐘を供出したため鐘楼だけとなり、戦後になって大満寺に寄贈された。現在は1720年に造られた梵鐘を吊るしている。
関連する名称
以下の道路、橋、駅の名称は愛宕神社に由来する。
愛宕上杉通
仙台市にある道路。仙台城下では東五番丁、清水小路、上杉山通などと呼ばれていた道が拡幅と延伸によって接続され、大通りとなった。広瀬通から上杉山中学校までイチョウ並木となっており、秋には黄色く色づいた木々が綺麗だが、同時につぶれた銀杏によって非常に臭いのが悩ましい。
愛宕橋
仙台市の広瀬川に架かる橋。仙台市中心部から荒町から姉歯横丁を通って広瀬川の対岸の越路に渡る橋で、1900年に完成した吊り橋が最初といわれる。戦後に愛宕大橋が完成したため、交通量はそれ程多くはない。仙台市地下鉄南北線にはこの橋からの名前の付いた「愛宕橋駅」がある。
愛宕大橋
仙台市の広瀬川に架かる橋。戦後に既存の橋で対処できなくなった自動車交通需要のために広瀬川河畔通などと共に1975年に開通。かつて時間帯によって2車線・4車線、または3車線・3車線に変更されていたため難易度の高い大通りであった。また昭和市電通りには右折できないので注意。
愛宕橋駅
仙台市地下鉄南北線の駅。広瀬川にかかる愛宕橋近く、愛宕上杉通から昭和市電通りに接続する交差点に近く、姉歯横丁をまたぐ位置にある。かつて仙台市電長町線の愛宕橋停留場があった。駅名は南側で広瀬川に架かる「愛宕橋」に由来する。周辺には住宅街が広がっている。
おわりに
階段が長くてしんどい。
更新履歴
2024年10月6日:記事を作成。