現代宮城風土記#37:仙台市の副都心
仙台市の副都心
仙台市が政令指定都市に指定される際、仙台市中心部の一極集中を解消し、高次な都市機能が連携する都市を形成しようと、北は泉中央、南は長町、西は愛子、東は仙台港の4カ所が副都心として設定された。長町は旧仙台市南西部との交通の結節点、泉中央は旧泉市、愛子は旧宮城町の中心地である。仙台港は宮城県と共同で行われた土地区画整理事業に関連している。その後、1997年3月に議決された「仙台市基本構想」と、これを受けて策定された「仙台21プラン・仙台市基本計画(平成10年度~平成22年度)」では「副都心」に言及しているが、以降の基本計画・総合計画からは消えている。2014年3月には、仙台市中心部(都心)と泉中央副都心、長町副都心(広域拠点)の3地区への都市機能集約と、地域特性を踏まえた地区間の分担と連携を重視する都市計画マスタープランを策定し、2021年3月にもその方針を踏襲した計画が策定されている。
また人口減少・高齢化を背景として、公共交通と連携したコンパクトシティが全国的に注目されており、2014年8月には「改正都市再生特別措置法」が施行され、立地適正化計画制度が創設された。これを受けて仙台市では計画期間を「仙台市立地適正化計画(2023~2042年度)」を策定し、階層分けされた「都市機能誘導区域」を仙台市地下鉄2路線中心に設定し、都市機能を集約を図っている。加えて、仙台市独自の設定エリアとして、都市軸・交通結節点のほか、居住誘導区域内における地下鉄駅及び交通結節点となる駅の周辺約1kmのエリアが「生活利便施設集積促進区域」として定められている。これらの区域が設定されているのは主に仙台市地下鉄の駅の周辺だが、JR仙山線愛子駅の周辺、陸前高砂駅の周辺(仙台港近く)、JR仙石線陸前原ノ町駅周辺、JR東北本線南仙台駅周辺にも設定されており、かつて設定された副都心計画の名残がうかがえる。
ところでかつて仙台城下町の北端だった北仙台地区、塩竈街道/石巻街道の最初の宿場だった原町地区も、交通結節点として一定の拠点性を有していたが副都心としては設定されなかった。中心市街に近く市街地が連続しており、開発の余地が少なかったことが理由と考えられる。
泉中央副都心
仙台市の副都心の1つ。旧奥州街道の七北田宿の西側に、昭和末期から平成にかけて開発された。仙台市地下鉄南北線の泉中央駅周辺で、セルバ等の商業施設や泉区役所、イズミティ21などが集約されている。また「仙台スタジアム(ユアスタ仙台:ベガルタ仙台の本拠地)」も立地している。
5つの泉と2つの通り
「泉中央副都心」に整備されたモニュメントと回遊道。泉中央を象徴するモニュメントとして整備された。『5つの泉』は3つが現存し、水が利用されているものが多かった。『2つの通り』は泉中央駅のペデストリアンデッキの南北と「すいせん通り」の歩行者用の通路のこと。
泉中央の三角
「泉中央副都心」にあるモニュメント。1992年に泉中央副都心の駅前開発によってペデストリアンデッキ上に設置された。内部はデッキの下に繋がる階段、また採光窓になっている。尚、モチーフは「泉ヶ岳」であり、フランスのルーブル美術館前のモニュメントと直接的な関係はない。
すいせん通り
仙台市泉区にある歩行者専用道路。泉中央駅前のペデストリアンデッキから旧・七北田宿までを結んでおり、宮城県道35号に沿っている。名称は泉区の花『スイセン』にちなむ。道には花や街路種が植えられており、沿道には飲食店や菓子店、クリニック等が並んでいる。
おへそひろば
泉中央駅前のペデストリアンデッキの階下にあるオープンスペース。イベントスペースと店舗スペースで構成され、イベントスペースはデッキが丸く吹き抜けになっている。名称はデッキから見ると丸くへこんでいて『へそ』のようであることが由来。以前はらせん階段があった。
中心施設
泉中央駅
仙台市地下鉄南北線の北の終着駅。1992年に仙台市地下鉄を延伸する形で開通した。泉中央副都心の中心地に立地しており、駅の周辺には商業施設や七北田公園、泉区役所や仙台市泉図書館、バスプールなどがある。バスプールからは泉区各所や富谷市方面へのバスが発着している。
イズミティ21
仙台市泉区泉中央にある複合文化施設。正式名称は『仙台市泉文化創造センター』。1987年に旧・泉市の施設として開館した。大ホール、小ホール、展示室、会議室、練習室などを利用することができる。コンサート、オペラやバレエなどの公演でよく利用されている。
セルバ(SELVA)
仙台市泉区の泉中央副都心にあるショッピングセンター。1999年開業。ファッションや雑貨を中心としたテナントが入居している。仙台市地下鉄南北線の泉中央駅とはペデストリアンデッキとデッキの下で接続している。2016年には西側の隣接地に『セルバテラス』が開業した。
アリオ仙台泉
かつて仙台市泉区泉中央にあったショッピングセンター。1992年に『イトーヨーカドー仙台泉店』として開業。開業後の売上低迷から2012年に閉店する予定になっていたが、東日本大震災後に回復したことから撤回。2013年に改装の後に業態転換。経営合理化で2024年で閉店。
七北田公園
仙台市泉区にある都市公園。泉中央の七北田川沿いに、1989年のグリーンフェアせんだいの跡地に整備され、1990年に開園した。園内に大型遊具や芝生広場、体育館、ユアテックスタジアム仙台などがある。また、入り口付近のベンチには黒川晃彦の彫刻『晴朗な日』がある。
キートス広場
仙台市泉区の七北田公園内の広場。『キートス』はフィンランド語で『ありがとう』を意味する。東日本大震災の復興支援で、フィンランド共和国から寄贈された遊具のある。遊具にはフィンランドの作家トーベ・ヤンソンの『ムーミン』のキャラクターがあしらわれている。
仙台スタジアム
仙台市泉区の七北田公園にある球技場。1997年に開場した。愛称は「ユアテックスタジアム仙台」略して「ユアスタ」。「ベガルタ仙台」と「マイナビ仙台レディース」がホームスタジアムとしている。最寄り駅である泉中央駅の副駅名は「ベガルタ仙台・ユアスタ前」と命名されている。
仙台市こども宇宙館
かつて仙台市泉区泉中央にあった科学教育施設。1990年に複合公共施設『ミルポートS』に開業。機械式マニピュレータや付きの重力体験が出来る設備があった。2007年に閉館した。当時のプラネタリウムの屋根が外観から見える。跡地には子ども図書館や子育て施設が入居している。
長町副都心
仙台市の副都心の1つ。旧奥州街道の長町宿付近にある太白区の中心地で、長町商店街、あすと長町、太白区役所周辺(仙台市地下鉄長町一丁目駅・長町駅・長町南駅およびJR長町駅・太子堂駅)を含むT字のエリアを指す。「あすと長町」の再開発によって一層の発展が続いている。
あすと長町
仙台市太白区にあった旧国鉄の貨物ヤード跡地や工場のあった土地を再開発した地区。東北本線の線路に沿った南北に長い土地に、仙台市立病院、ゼビオアリーナ、khb東日本放送の放送局、大規模な商業施設、マンション等が林立している。休日は家族向けのイベント等で賑わっている。
ながまちくん
「宮城交通」が運行している路線バスの愛称。運行頻度は1時間に1,2本で、長町駅から富沢駅までの範囲の商業施設や住宅地を細かく周遊している。運賃は1回の乗車につき、おとな170円、こども90円。みやぎ応援ポケモン「ラプラス」が描かれたバスで運行されている。
中心施設
長町一丁目駅
仙台市地下鉄南北線の駅。副駅名は「市立病院前」。旧奥州街道沿いの広瀬橋の南岸、「あすと長町」の北端付近に駅が位置している。かつて仙台市電長町線の電停が同じ名前でほぼ同じ場所にあった。周辺には住宅街が広がっている。五橋から移転した仙台市立病院の最寄り駅。
長町駅
仙台市地下鉄南北線、JR東北本線が乗り入れる駅。1896年に日本鉄道本線(現在の東北本線)の駅として開業した。「長町副都心」の中心に位置する。JRの線路は高架化されており、高架下には「tekuteながまち」が営業している。「あすと長町」の再開発で利用者が激増している。
長町南駅
仙台市地下鉄南北線の駅。開業前の仮称駅名は『鍋田』で、計画案では名取市方面と茂庭方面の分岐駅だった。現在はバスプールが隣接し、太白区各地へ向かうバス路線が発着する。周辺には太白区役所、ザ・モール仙台長町、ララガーデン長町、地底の森ミュージアム等の施設や住宅街がある。
太子堂駅
JR東日本の駅。「JR東北本線」「JR常磐線」「仙台空港アクセス線」が乗り入れる高架駅。「あすと長町」の再開発事業の一環で2007年に開業した請願駅で、あすと長町の南端付近に位置している。駅名は周辺の地名の『太子堂』が由来。駅の周辺には住宅街が広がっている。
たいはっくる
仙台市太白区の長町駅前にある複合施設。かつて秋保電鉄長町駅、宮城交通のバスターミナルとして利用されてきた土地に、1999年に設置された。太白区文化センターや太白図書館、太白区中央市民センター等の公共施設や、商業施設、マンションなどが一体となっている。
地底の森ミュージアム
仙台市太白区長町南にある歴史博物館。正式名称は『仙台市富沢遺跡保存館』で「富沢遺跡」の遺物や遺跡を展示している。1996年開館。遺跡を発見された状態で保存し、展示している。敷地内には発見された森林跡から2万年前の植生が再現された『氷河期の森』がある。
富沢遺跡
仙台市太白区で発見された複合遺跡。長町・富沢周辺の各地に約90haの広さがある。90次にを超える調査によって、旧石器時代の樹木と石器群、弥生時代以降の水田跡と木製農工具、中・近世の居城跡などが発見された。旧石器時代の森林跡は地底の森ミュージアムで保存、展示されている。
ゼビオアリーナ仙台
仙台市太白区あすと長町にある多目的アリーナ。2012年に開業。ゼビオをはじめとする企業団体が組成するLLPで運営している。B.LEAGUE所属のプロバスケットボールチーム「仙台89ERS」のホームアリーナである。アーティストのコンサートやライブでも使用されている。
ぐりりスポーツパーク
仙台市太白区あすと長町にある複合施設。『FUT MESSE!(フットサルコート)』や『ウイニングショット(屋内テニスコート)』『HALEO DOME(バスケットボールコート)』などのスポーツ施設、複数の飲食店、整骨院、保育園などで構成される。「ゼビオアリーナ仙台」に隣接している。
ザ・モール仙台長町
仙台市太白区・長町副都心にあるショッピングセンター。1997年に開業し、2000年にPart2が開業した。仙台市地下鉄南北線長町南駅に直結している。仙台市民が『モール』といったらほぼココ。仙台駅周辺に大型のシネコンが無かった時期は、Part2の映画館が重宝された。
ララガーデン長町
仙台市太白区・長町副都心にあるショッピングセンター。2009年に開業した。仙台市地下鉄南北線長町南駅に直結。ファッション、雑貨、飲食店等だけでなく、仙台市の子育て支援施設『仙台市子育てふれあいプラザ長町南』『のびすく長町南』や保育園もテナントとして入居している。
東日本放送
宮城県を放送対象地域としているテレビ朝日系列のテレビ局。1975年に開局した。略称はkhb。開局当初は社屋が上杉にあったが、1991年に双葉ケ丘、2021年にあすと長町に移転した。マスコットキャラクターは「ぐりり」で、原案は宮城在住の漫画家「いがらしみきお」による。
仙台市立病院
仙台市太白区あすと長町にある市営の総合病院。26の診療科目がある。また救急救命センターを有し、高度な救急医療に対応している。1930年に東二番丁にあった旧裁判所庁舎を利用して開院。1980年に五橋の三島学園跡地に移転。2014年に現在のあすと長町の北端に移転した。
長町商店街
長町地区の商店街の総称。長町1丁目にある『長町一丁目商店街』、長町3丁目・4丁目にある『サンカトゥール商店街』、長町駅前周辺の『長町駅前商店街』の3つで構成される。「奥州街道」および「笹谷街道」沿いにある。それぞれ独自の活動をしつつ、一体的に活動する場合もある。
愛子副都心
愛子地区は旧宮城町の中心部だったこともあって副都心として設定され、地下鉄東西線を通す構想まで持ち上がったようだが、結局頓挫している。現在は交通結節点などの都市機能や、生活利便施設を集約する地区としての開発計画が行われている。
愛子
仙台市青葉区にある地名。難読地名としても有名で読み方は『あやし』。名称の由来は下愛子にある「子愛観音(こあやしかんのん)」とされている。藩政時代には「作並街道」の愛子宿が置かれた。昭和期には旧・宮城町の町役場がある町の中心地だった。仙台駅発の仙山線は約6割が愛子駅行き。
仙台港副都心
仙台港の後背地に設定された副都心である。整備は宮城県と共同で行われ、商業施設などが整備された。
中心施設
仙台塩釜港
宮城県にある港湾。国際拠点港湾、中核国際港湾に指定。奈良時代から地域の外港だった「塩釜港(塩釜港区)」と1971年に完成した「仙台港(仙台港区)」、北上川水運の積出港だった「石巻港(石巻港区)」と松島観光の玄関口である「松島港(松島港区)」が一体的に運用されている。
仙台港
宮城県仙台市、多賀城市、七ヶ浜町にまたがる港湾。仙台塩釜港の仙台港区で、臨海工業用地やエネルギー関連施設、コンテナターミナルが並ぶ。完成車・部品輸送の拠点として機能しており、完成車の年間の輸送台数は30万台を超える。仙台港の南側の海岸線はサーフスポットになっている。
みなと仙台ゆめタウン
「仙台港」の後背地のこと。土地区画整理事業によって仙台港の西部から北部にかけての範囲が、宮城県・仙台都市圏の物流、工業生産、交流の拠点として整備された。三井アウトレットパークなどの大規模なロードサイド店舗や物流施設、「仙台うみの杜水族館」などが立地。
仙台うみの杜水族館
仙台市宮城野区中野にある水族館。松島町にあった「マリンピア松島水族館」の後継として2015年に開業。難易度が高いとされるヨシキリザメの飼育に力を入れており、飼育日数の世界最長記録を持っている。『日本酒ナイト水族館』『マツケンサンバ水族館』等のイベントも開催。
夢メッセみやぎ
仙台市宮城野区、仙台港に設置されたコンベンションセンター。事業主体は宮城県で、正式名称は『みやぎ産業交流センター』。1995年に開館。展示棟、屋外展示棟、会議棟などを有しており、東北地方最大の規模を誇る。一般的な見本市のほか、「仙台モーターショー」の会場にもなる。
’87未来の東北博覧会
宮城県仙台市の仙台港地区で開催された地方博覧会。パビリオンはテーマ館、単独館、共同館、集合館の合計で33館。マスコットキャラクターはこけしを宇宙少年として擬人化した『コケット君』。会場跡地の一部は後に「夢メッセみやぎ(みやぎ産業交流センター)」となった。
国際ゆめ交流博覧会
仙台市宮城野区で開催された地方博覧会。「第8回ジャパンエキスポ」として1997年の夏に開催された。会場は「夢メッセみやぎ」とその隣接地。マスコットキャラクターは『パピットくん』。ゆめ交流シアターでは石ノ森章太郎監修のアニメーションが上映された。
おわりに
バブルの夢のあと。
変更履歴
2024年10月6日:記事を作成。