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2024年のノーベル物理学賞がある意味歴史的(雑感)

今年のノーベル物理学賞は「人工ニューラルネットワークによる機械学習を可能にした基礎的発見と発明に対する業績」でJohn J. Hopfield氏(プリンストン大学)とGeoffrey E. Hinton氏(トロント大学)が受賞しました。

これはある意味歴史的な出来事ではないか、ノーベル物理学賞の潮目が変わったような気もします。今年のノーベル物理学賞について、少し考えてみるとAIとサイエンス、今後の技術の発展の方向性やそれが私達に与える影響が見えてくるかもしれません。意外と身近な話かも?


歴代のノーベル物理学賞を振り返ろう

今年の物理学賞の前に、まず歴代のノーベル物理学賞の受賞者と受賞理由を振り返りましょう。ちなみにこの表はPerplexity AIで調査し、ChatGPTで表にしています。ファクトチェックはGenspark Autopilot Agentで実施。ファクトチェックまでAIで実施しているのでもしかしたら若干間違いはあるかもしれません。その場合はご連絡ください。

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年 & 受賞理由 & 受賞者 \\ \hline
2024 & 人工ニューラルネットワーク、ボルツマンマシンの理論的貢献 & ジェフリー・ヒントン、ジョン・ホップフィールド \\ \hline
2023 & アト秒パルス光を生成する実験手法の開発と、物質中の電子動力学の研究 & ピエール・アジマン、フェレンツ・クラウス、アンヌ・レュイリエ \\ \hline
2022 & 量子もつれを用いた実験、ベル不等式の検証、量子情報科学の先駆的研究 & アラン・アスペ、ジョン・F・クラウザー、アントン・ツァイリンガー \\ \hline
2021 & 複雑な物理系の理解への画期的な貢献 & 眞鍋淑郎、クラウス・ハッセルマン、ジョルジョ・パリージ \\ \hline
2020 & ブラックホール形成が一般相対性理論の堅固な予測であることの発見 & ロジャー・ペンローズ、ラインハルト・ゲンツェル、アンドレア・ゲズ \\ \hline
2019 & 物理的宇宙論への貢献、太陽系外の地球型惑星の発見 & ジェームズ・ピーブルズ、ミシェル・マイヨール、ディディエ・ケロー \\ \hline
2018 & 光ピンセットとその生物学的系への応用 & アーサー・アシュキン、ジェラール・ムルー、ドナ・ストリックランド \\ \hline
2017 & 重力波検出器LIGOへの決定的貢献と重力波の観測 & ライナー・ワイス、バリー・バリッシュ、キップ・ソーン \\ \hline
2016 & 物質の位相的相転移と位相的相の理論的発見 & デビッド・J・サウレス、F・ダンカン・M・ホールデン、J・マイケル・コステリッツ \\ \hline
2015 & ニュートリノが質量を持つことを示す、ニュートリノ振動の発見 & 梶田隆章、アーサー・B・マクドナルド \\ \hline
2014 & 効率的な青色発光ダイオードの発明による、明るく省エネルギーの白色光源の実現 & 赤崎勇、天野浩、中村修二 \\ \hline
2013 & 素粒子の質量の起源を説明する理論的機構の発見 & フランソワ・アングレール、ピーター・ヒッグス \\ \hline
2012 & 量子系の測定・操作のための画期的な実験手法 & セルジュ・アロシュ、デビッド・J・ワインランド \\ \hline
2011 & 遠方の超新星の観測を通じた宇宙の加速膨張の発見 & ソール・パールマッター、ブライアン・P・シュミット、アダム・G・リース \\ \hline
2010 & 二次元物質グラフェンに関する画期的な実験 & アンドレ・ガイム、コンスタンチン・ノボセロフ \\ \hline
2009 & 光ファイバーを用いた光通信の基礎技術、CCDセンサーの発明 & チャールズ・K・カオ、ウィラード・S・ボイル、ジョージ・E・スミス \\ \hline
2008 & 自然界における対称性の破れの起源の発見 & 南部陽一郎、小林誠、益川敏英 \\ \hline
2007 & 巨大磁気抵抗効果の発見 & アルベール・フェール、ペーター・グリュンベルク \\ \hline
2006 & 宇宙マイクロ波背景放射の黒体スペクトルと異方性の発見 & ジョン・C・マザー、ジョージ・F・スムート \\ \hline
2005 & 光の量子論への貢献、レーザーを用いた精密分光学への貢献 & ロイ・J・グラウバー、ジョン・L・ホール、テオドール・W・ヘンシュ \\ \hline
2004 & 強い相互作用における漸近的自由の発見 & デービッド・J・グロス、H・デビッド・ポリツァー、フランク・ウィルチェック \\ \hline
2003 & 超伝導体と超流動体の理論への先駆的貢献 & アレクセイ・A・アブリコソフ、ビタリー・L・ギンズブルグ、アンソニー・J・レゲット \\ \hline
2002 & 宇宙ニュートリノの検出、X線天文学の先駆的貢献 & レイモンド・デービス・ジュニア、小柴昌俊、リカルド・ジャコーニ \\ \hline
2001 & ボース・アインシュタイン凝縮の実現と初期の基礎的研究 & エリック・A・コーネル、ウォルフガング・ケトレ、カール・E・ワイマン \\ \hline
2000 & 情報技術の基礎を築いた半導体へテロ構造の開発、集積回路の発明 & ジョレス・I・アルフョーロフ、ハーバート・クレーマー、ジャック・S・キルビー \\ \hline
1999 & ゲージ理論の量子構造の解明 & ヘルラルト・'トホーフト、マルティヌス・J・G・フェルトマン \\ \hline
1998 & 分数量子ホール効果の発見 & ロバート・B・ラフリン、ホルスト・L・シュテルマー、ダニエル・C・ツイ \\ \hline
1997 & レーザー光による原子の冷却と捕捉の方法の開発 & スティーブン・チュー、クロード・コーエン=タンヌジ、ウィリアム・D・フィリップス \\ \hline
1996 & 超流動ヘリウム3の発見 & デビッド・M・リー、ダグラス・D・オシェロフ、ロバート・C・リチャードソン \\ \hline
1995 & レプトンの発見、ニュートリノの検出 & マーティン・L・パール、フレデリック・ライネス \\ \hline
1994 & 中性子散乱技術の開発と凝縮系物理学への応用 & バートラム・N・ブロックハウス、クリフォード・G・シュル \\ \hline
1993 & 新型パルサーの発見とその一般相対性理論の検証への応用 & ラッセル・A・ハルス、ジョセフ・H・テイラー・ジュニア \\ \hline
1992 & 粒子検出器の発明と開発、特に多線式比例計数管の開発 & ジョルジュ・シャルパック \\ \hline
1991 & 秩序現象の方法を複雑な形態の物質、特に液晶と高分子に一般化したこと & ピエール=ジル・ド・ジェンヌ \\ \hline
1990 & 陽子と中性子の内部構造に関する先駆的研究 & ジェローム・I・フリードマン、ヘンリー・W・ケンドール、リチャード・E・テイラー \\ \hline
1989 & 分離振動場の方法の発明と、イオントラップ技術の開発 & ノーマン・F・ラムゼー、ハンス・G・デームルト、ヴォルフガング・パウル \\ \hline
1988 & ニュートリノビーム法の開発とミューニュートリノによるレプトンの二重性の証明 & レオン・M・レーダーマン、メルヴィン・シュワーツ、ジャック・スタインバーガー \\ \hline
1987 & セラミックス材料における高温超伝導の発見 & J・ゲオルグ・ベドノルツ、K・アレクサンダー・ミュラー \\ \hline
1986 & 電子顕微鏡の設計、走査型トンネル顕微鏡の設計 & エルンスト・ルスカ、ゲルト・ビーニッヒ、ハインリッヒ・ローラー \\ \hline
1985 & 量子ホール効果の発見 & クラウス・フォン・クリッツィング \\ \hline
1984 & 弱い相互作用の媒介粒子W及びZボソンの発見に導いた大規模実験計画への決定的貢献 & カルロ・ルッビア、サイモン・ヴァン・デル・メール \\ \hline
1983 & 恒星の構造と進化の理論的研究、宇宙における化学元素の核反応過程の理論的・実験的研究 & スバラマニヤン・チャンドラセカール、ウィリアム・A・ファウラー \\ \hline
1982 & 臨界現象に関連した相転移の理論 & ケネス・G・ウィルソン \\ \hline
1981 & レーザー分光学の開発、電子分光学の開発 & ニコラス・ブルームバーゲン、アーサー・L・シャーロー、カイ・M・シーゲバーン \\ \hline
1980 & 中性K中間子崩壊におけるCP対称性の破れの発見 & ジェームズ・クロニン、ヴァル・フィッチ \\ \hline
1979 & 電弱統一理論を含む素粒子物理学の理論への貢献 & シェルドン・リー・グラショウ、アブドゥス・サラム、スティーブン・ワインバーグ \\ \hline
1978 & 低温物理学の基礎的発見、宇宙マイクロ波背景放射の発見 & ピョートル・カピッツァ、アルノ・アラン・ペンジアス、ロバート・ウッドロー・ウィルソン \\ \hline
1977 & 電子構造の量子力学的理論の基礎的な理論的研究 & フィリップ・W・アンダーソン、ネヴィル・F・モット、ジョン・H・ヴァン・フレック \\ \hline
1976 & 重いクォークの一種である新粒子の発見 & バートン・リヒター、サミュエル・チン・チュン・ティン \\ \hline
1975 & 原子核の運動の量子論への貢献 & オーゲ・ボーア、ベン・R・モッテルソン、ジェームズ・レインウォーター \\ \hline
1974 & 電波天文学における先駆的研究、パルサーの発見 & マーティン・ライル、アントニー・ヒューイッシュ \\ \hline
\end{array}
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出典:https://www.nobelprize.org/prizes/lists/all-nobel-prizes-in-physics/
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Nobel_laureates_in_Physics

※表をnoteに埋め込む手法はこちらの記事を参考にしています。

ノーベル物理学賞の変遷まとめ

この表をもとにノーベル物理学賞の変遷をまとめると以下のようになるかと思います。

  • 1970〜1980年代: 素粒子物理学、量子力学の基礎理論が中心。

  • 1990年代: 宇宙物理学、高エネルギー物理、技術革新(レーザー/通信)。

  • 2000年代: 量子力学の応用、ナノ材料や半導体技術。

  • 2010年代: 宇宙論、量子情報科学、重力波観測。

  • 2020年代: 気候変動、複雑系物理、AIと物理学の融合。

基本的には、基礎理論の発見、物質の性質、宇宙の仕組みに関わる理解が中心テーマのようです。計算科学が中心となるような受賞としては、2021の複雑物理系の理解への貢献(地球の気候の物理モデル化)が挙げられるかと思いますが、こちらも計算科学が受賞したということで話題になったと記憶しております。とはいえ、計算科学が直接的に気候変動という物理的な現象を説明する一助となった意味で、今年の受賞とは異なると考えています。

今年の物理学賞が意味するところ(雑感)

近年は2014年の青色発光ダイオードや2000年の集積回路など技術応用に関する受賞も徐々に増えてはいましたが、計算科学の理論が物理学賞に選ばれるのは非常に異例だと感じました。AI(人工ニューラルネットワークやボルツマンマシン)が物理を解き明かすツールを発展させたとして捉えると「なるほど、そういう観点もある。」と思います。しかし、これまでツールが受賞した例としては、1997年のレーザー冷却技術、2018年の光ピンセット等で、これらは現象解明に役立つ装置・実験手法です。
今年の受賞は、人工ニューラルネットワークといったデジタルツールで、データ解析・モデリング等において強力な手段となるようなものです。つまり、計算科学やデジタル技術の理論が物理学(現実の世界)に大きな影響を与える時代に移行していると言えるのかもしれません。

そして、今後に関する妄想

GPT-o1が発表され、推論を重視するAIの登場、いかにAIに深く考えさせるかというトレンド、そしてAI技術とロボット技術の融合、これらが今後数年で私達の生活を一変させる可能性が見えてきています。このタイミングでAIに関連した技術がノーベル物理学賞を受賞したというのは、AIが科学に及ぼす影響、ひいては私達の生活に及ぼす影響の大きさを示唆していると言えるのかもしれません。
AIの推論力がこのまま強化されていくとどうなるのか、人が自由になるのか、それともAIに使われる存在となるのか、なかなか深いテーマだなと思いながら今年のノーベル物理学賞をぼんやり眺めていました。

※そういえば、AIと人の関係という意味で、本日2024年10月9日こんな興味深いニュースが。。。

デジタル空間が現実世界と融合してきている現代においては、人とAIの競合が生じる可能性があるのかもしれません。

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