大塚国際美術館 スクロヴェーニ礼拝堂 高貴な青色の献身
大塚国際美術館に行ってみたい…と思ってから10年以上が過ぎた。子供が小さい頃は、旅行先といえばテーマパークやディズニーランドが最優先で、「四国にある美術館に行ってみたい!」なんて言えずに月日が経った。そして、今回は思い切って私の趣味を最優先に旅行先を決めた。
この美術館は世界の名画が陶板レプリカで勢揃いしていて大人のアミューズメントパークのよう。しかも、現地の空間をまるごと再現したB3階の「環境展示」は見応えがある!絵画に全く興味の無い夫や娘も充分楽しめたようで、なかでもシスティーナ礼拝堂は「紅白で米津玄師が歌った所だよーっ」と唯一、家族3人が分かり合えた場所となった。
そして、環境展示のなかで一番心に残ったのが鮮やかな青色の天井が印象的なスクロヴェーニ礼拝堂。
この青色が気になって後日調べてみると、スクロヴェーニ礼拝堂の天井に使用されている青色は、当時大変高価だったラピスラズリから作られているそうだ。また、ラピスラズリは宗教画の聖母マリアが羽織る青いマントに用いられ『高貴な色』とされていたらしい。
何の予備知識も無く身体に任せて、そんな青色を再現した天井を仰ぎ見たり、何かに目を奪われることも無くぼんやりと周りを眺めながら、主役のような緻密で情感豊かなフレスコ画、鮮やかな青色、繊細なモザイク、どれかが自己主張し過ぎることも無く一体となって調和しているのは何故だろう?と考えた。そして、ふと「あー、際立つひとつ、ひとつが空間に奉仕しているんだ…」と思った。ドラマチックな絵画や高貴な青色の献身によって作られた空間は美しく、濃密で潔い。そして、あちらもこちらに視線を投げかけてくるような呼応を感じられる安心感や、礼拝堂に漂う美しい眼差しに包まれる心地良さは上手く言葉に出来ない。ただ、暫くこの場所に佇んでいたいと思えた。こうして見たいというより居たいと思える空間が礼拝堂なのかもしれない。こんな感想を持てるのも環境展示の醍醐味だと思う。
様々な展示を満喫してB3階を後にする頃には、家族揃ってスッカリ観光地巡りをしたような気分になっていた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?