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The Covers 「Coccoさんは1周した人なのかもしれない」

 「今度のThe Coversは宮本浩次とCoccoが出るんだよね~」と電話で妹が得意気に言うので「私が知らないはずないでしょう〜」と返すと、妹はすかさず「宮本浩次もヤバイけどCoccoもヤバイからね。二人とも似てるから。」と言った。私は恥ずかしながら彼女の歌を聞いたことがなくて、歌番組でチラッと見かける程度だったので、妹の言うことがよく分からなかった。それでも、天才の妹が何気なく言うことは大抵当たっているので心して見ることした。

 そして、先日のThe Coversと昨日のCoccoさんのツイートを見て『やっぱり彼女の言うことは正しかった…』と分かった。

 Coccoさんの純度の高い歌声も素晴らしかったけれど、番組内でのトークでも、素直で的確な言葉に素敵な人だな…と思えた。

 カバーに寄せる思いについては原曲へのリスペクトを語る方が多いなかで「カバーは依頼があってやったことだけど、声とか歌とかを褒めてもらえるのが歌い手としては一番嬉しい。歌い手として依頼されるのが凄く嬉しかった。単純に私の声で歌って欲しいというのが喜びだった。」という率直な言葉が印象的で、隣で聞いている宮本浩次も何度も頷いていた。自身で作詞作曲する作り手であり、歌い手でもあるCoccoさん。その歌い手としての自分を求められる喜びを、素直に喜びとして受け止めている姿は見ている方も温かな気持ちになった。

 また、カバー曲の『I LOVE YOU』尾崎豊について3人で語るところがあったのだけれど、司会のリリーさんは「当時は青臭く感じて受け入れられなかった。」と言い、宮本浩次も「共感出来なかった。」と言った。私も当時は、自分オンリー過ぎる世界観と悲しみが私には綺麗過ぎて、うけつけなかった。更にリリーさんは「当時は青臭く感じていたけれど、自分が年を取れば取るほど、彼は早熟だったことに気づいた。」と話していて宮本浩次もCoccoさんも頷いていた。私は「えっ?」と理解することが出来なかった。

 そこから昨日のCoccoさんのツイート。後出しジャンケンみたいだと言いながら自分の思いを正直に綴った文章に驚かされた。

 尾崎豊と同世代のリリーさんと宮本さんは、当時は青臭く感じて受け入れ難かったという内容で、何というか謙遜されていたけれど、私はお2人の方がよほど早熟だったのではないかと思っていました。永遠が何かも知らずに愛を口走ってしまえる短絡的な潔さみたいな、それはとても清々しいほどの稚拙美で、それを青臭くて、受け入れ難いと感じたのは、当時の2人がすでに生や死や永遠や儚さやこの世の無常を知っていたからだと思うのです。
 そして傷付きながら悦びながら大人になって、生きてここまで来て、全て体感して、経験して、ああもうファンタジーも良いなぁと思えるぐらいになると、1周回って、青臭さも愛おしく感じられるというか、恥ずかし気もなく“I LOVE YOU”と歌うことが、結局、ま、平たく言ってしまえば、それはそうようねって思えたりすることだったりするのかなと思いました。

Twitter 抜粋

 この一文で私のモヤモヤが一気に晴れて、こんなに明瞭に言語化出来るって凄いと思った。だって、私には今でもこの歌に早熟さを感じられないから。だから『稚拙美』という言葉がしっくりきた。自分の思いだけが全てで、目の前のことしか見えない姿は純粋さの極みかもしれない。そして、現実と折合いをつけるつもりもない無謀さは現実に飼い慣らされてしまった今の私には羨ましくも見える。また、この文の中にはリリーさん、宮本浩次、尾崎豊、ならびにそのファンに向けて敬意を払った言葉もあって、細やかな気遣いが見られる。皆、思いは違っても、夫々が夫々の大切に思う気持ちを理解して、尊重できるのは素敵なことだ。

 こんなCoccoさんこそ、酸いも甘いも乗り越え、人生1周回って、厳しい現実のなかでは幻想にも思えてしまう愛や夢を自分の傍らに置くことを許せるようになった勇者なのでは?と思い、番組の最後に歌った彼女の曲『ファンタジー』が心に沁みた訳が分かった気がした。

 自分の気持ちに向き合うこと、そして、それを伝えることに少しも手を抜くことなく、愚直なほどに真摯な姿は、心根に宮本浩次と同じようなものを持っている気がした。



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