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クリエイティブの在る方へ少しずつ -2024年の活動の振り返り-
本記事は、自分が考えていることや感じていることを整理したり、今年の活動を振り返るような内容となっています。また、クリエイティブに生きたいと思う理由についても、まとめていきます。
どのように生きたいか
■ 「クリエイティブに生きる」ってどんなイメージ
「クリエイティブ」とは、単に「新しいものを作る」という表面的な意味を超え、哲学的には人間の存在、思考、行動に深く根ざした創造の行為を指します。それは自己を表現し、世界と新たな関係を築くための根本的な力であり、私たちの生存や進化そのものと不可分な概念です。
自分の生き方に迷うとき、「何をするか」という問いよりも、「どのように生きるか」「どのような存在でありたいか」といった問いと向き合っていたい。そんな迷いの中で「クリエイティブに生きたい」という考えが自分の心にしっくりと馴染みます。一体、どうしてでしょうか。
クリエイティブに生きることは、日々にワクワクをもたらし、どんなことでも乗り越えられるエネルギーを与えてくれる。そして、その先にある達成感が、また次の一歩を後押ししてくれる気がする。またクリエイティブに生きることは、既存の社会の仕組みやルール・既成概念等に囚われずに、自分の考え方や視点を持って生きることである。そういった子どもがもつ心の在り様に近しい状態を忘れずに、且つ、一人の大人としてしっかり生きていけたらカッコいいなと思ってます。
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■ 自己紹介
VRスタートアップで、視線追跡技術を扱ったソフトウェアエンジニアをしております。プライベートでは、XRで作品制作をしたりアートプロジェクトに参加したりしてます。自然と先端テクノロジーとアートが好きです。
自己紹介が長くなりそうだったので、別の記事を用意しました 。
『およげ!たいやきくん』の楽曲を引き合いに出しながら、クリエイティブに生きる重要性についても考えてみました。
■ 2024年は少しだけクリエイティブになれた気がする
2024年を振り返ると、自分の生活の基軸がクリエイティブの方向へ少しだけ向けられたことを実感できる一年だった。多くの素敵な作品に触れたり、自身も創作活動に挑戦したり、コミュニティやイベントに参加したり、講義やレクチャーを受けたり、旅をしたりと、さまざまなアクションを起こすことができました。
仕事では、VRや視線追跡という先端テクノロジーに触れながら、プライベートでは、アート領域で活動を始めることができました。
なぜアートとテクノロジーなのか
最近よく聞くアートとテクノロジーの2つのワードの組み合わせについて、簡単にまとめてみたいと思います。
■ アートとテクノロジーは同じ語源だった
アートの語源はラテン語の「アルス (Ars)」であり、古代ギリシャ語の「テクネ (Technè)」は「アルス(Ars)」を翻訳した言葉に当たります。「テクネ (Technè)」は現在のテクニックやテクノロジーに該当し、2つの言葉は同じ意味で使われていたそうです。
アートの定義について様々ありますが、以下の定義が自分の中でしっくりきているので引用させていただきます。
「新たな世界の認識を生み出し、人類の行動に変容をもたらす」技術
ここでもやはり「技術」として扱われていますね。2つの言葉が近しい概念を指していることが分かるかと思います。
ここで、アーティストの役割についても言及したいです。アーティストは、作品と共に社会に問いを立て何かしら違和感を探っていき、そこから得られる問いを社会に投げかけてしていく存在です。
この課題を発見する能力は、予測不可能な時代で、且つ、課題が何であるか、どのように定義したらよいか分かりにくい時代において、必要な能力だと言われています。
起業の文脈でも、「アート思考」が取り上げられているのは、この課題発見能力の話から来ていることが多い気がします。他には「変わり者」が未来の市場をつくりだす、という話もありそうですが、アーティストとして活動している方が「変わり者」として見られることが多い、と思えばしっくりきますね。
■ 『創造性のコンパス』モデル
伊藤穰一さんの『創造性のコンパス』の記事が面白いのでご紹介します。下のダイアグラムは、伊藤さんのモデルに自分なりに情報を付け加えたものになります。
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伊藤さんは「面白く印象深い創造を行うにはこれら4つの象限をすべて使うことを求められる場合が多い」とおっしゃってます。自分もそういった、高次元のクリエイションに参画できるように早くなりたい…!自分は、このダイアグラムの中を領域横断できるような、ハイブリット人種をちゃっかり目指しているナウ…..です(なれるかどうかは別として)。
なにかモノづくりをする際に、思考方法を適切に切り替えながら、「面白く印象深い創造」ができるようになりたいです。スタートアップという小規模の組織でありながら、先進的な活動に取り組める環境を選んでいるのも、縦割りにならない状態での活動ができ、自分の目指す方向へ成長がしやすいと考えているからです。
また、一人で領域横断できなくとも、隣の領域のエキスパート達と連携をとれるような人材になる上でも、このモデルを意識することは重要だと感じます。それぞれの領域の思考方法や目的、意識している相手の違いについて、把握しておけるのとそうでないのとでは、チームで制作を進めていく際に、連携が上手い取り方や化学反応の起き方に違いがでてきて、最終的な成果物に違いがでてくるのではないでしょうか。
2024年の活動の振り返り
2024年の活動のなかで大きなトピックを取り上げ、振り返りをしてみる。
■ NEWVIEW SCHOOL に通い、久々に制作をした
エンジニア転職して仕事にも慣れて余裕も少しでてきたので、そろそろ作品制作を始めたいとの思いのなか見つけたのが、NEWVIEW SCHOOLというスクールになります。XRをつかった作品制作と思考方法について学べる、4カ月くらいの社会人スクールになります。
前線で活躍されるアーティストや教授、リサーチャーの方々をお招きしながら、レクチャーをしてもらいつつ課題も出してもらい、生徒はその問い達に作品で応答していきます。最終的には、専任の講師についてもらいながら、ゼミ形式で卒業制作に取り組みます。
とーーーっても濃密な時間を過ごすことが出来ました。熱海へ合宿をしたり、気になるXRの展示会に仲間と一緒に行ったり、卒業展示会を運営の方々と一緒に企画しながら進めさせて貰ったりと、アーティストやクリエイターとして活動していく上での基礎を学ぶことが出来ました。
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■ ハッカソンにチャレンジした
東京ドームのハッカソンに参加しました。早速、上のNEWVIEW SCHOOLで出会った方々とチームを一緒に組むことができました。アートディレクターやARエンジニア、3DCGモデラー、バックエンドエンジニアなどそれぞれ強みをもったチーム編成で臨むことができました。
優勝はできませんでしたが、奨励賞をいただくことが出来ました。そして、何よりもチームとして取り組むことで、知識だけでなく制作の考え方を学ぶことができたり、自分に足りない要素に気づけたりして収穫が多かったです。この後、自分の強みを持たねばと燃えました。
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一種のパフォーマンスのようなプレゼンで挑みました。
ジーズアカデミー主催のハッカソン「HACK SONIC」にも参戦しました。
「酒文化」をテーマに、チームで頻度良く打ち合わせしながら楽しく制作を進められました。チームメンバーが全員お酒に弱いことを武器に、逆の発想でアプローチを掛けたのが功を奏しました。
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■ 自主制作にもチャレンジした
TouchDesigner黙々会という、Audio / Visual の表現を探求する方々があつまるコミュニティに参加する中で、11月にグループ展を開催するので参加募集しますとの案内をもらい、飛び込んでみました。
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アクリルペイントをやる人、DJやピアニストとともにライブペイントをやる人、詩人、ゴキブリを電極で動かすマッドサイエンティスト、彫刻家など、個性強いメンバーが集まる展示会で、話しているだけで楽しく、とても刺激の多い機会になりました。自分はロケーションベースのAR作品で、空間の記憶をテーマに作品作りをしました。
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■ 色々活動した振り返り
その他にも制作活動をしておりますが、文面の量の都合と、大人の事情により割愛とさせて頂きます。
活動を通して気づいたことや得られたものを箇条書き
高い目標を立て、下手でもいいので無我夢中に制作に取り組んだり自己表現をしていると、その様子や姿勢を見てくれている心優しい方から、なにかしらの機会に声をかけてもらえ次の活動につながります。
制作するコミュニティーにいくつか飛び込みましたが、熱量持って取り組んでいると、周りがそのエネルギーを感じ取って、自然と仲間が増えていきます。仲間が増えると知識や広がるだけでなく、活動の領域や選択肢が広がり、更にモチベーションも上がるので、プラスの循環に繋がっていきます。
制作活動を通して他者と触れ合うことで、自分の至らなさや課題に早く気づけます。作品のフィードバックも頂けるので、次の一手をどうすべきか具体的な課題に落とし込みながら、考えることが出来るようになります。
おわりに
■ だれでもアーティストになれる!
アーティストというと、センスの良い人しかなれないと思われるかもしれませんが、そんなことありません。みんな子どもの頃はアーティストでした。ピカソも以下のような言葉を残しています。
”Every child is an artist,
The problem is how to remain an artist once he grows up.”
「子供は誰でも芸術家だ。
問題は、大人になっても芸術家でいられるかどうかだ。」
「ヘタうま」スタイルの絵画が印象的なアーティストの五木田さんも、絵描きの中で敵わないと思う人は沢山いるけど、そんななか、一番は「子ども」だとおしゃってます。3歳くらいまでは傑作しかないと。自意識から自由になって描けている様子は、自分もうらやましいなと感じます。
“Good artists copy, great artists steal”
「良い芸術家は真似をする。偉大な芸術家は盗む」
ピカソは上の言葉も残しています。0から1を生み出すアーティストは存在せず、まずは真似をするところから始めればよいと思えば、気が楽になりませんか?
“The most personal is the most creative.”
「もっとも個人的なことが、もっともクリエィティブなことである」
自分の好きなことをとことん突き詰めて、どんどん表現行為につなげていけばいいんです。簡単じゃないですか?少なくともハードルは高く感じなくて良いと思います。
■ 2025年はもっと積極的に制作の機会をつくる
2025年は、積極的に外の世界に出向いていき、知らない世界や人たちに出会いたい。また、積極的にアウトプット(作品制作と発信)をしてフィードバックを受けられるような状況に追い込みつつ、制作の喜びや楽しみ、苦しみを仲間たちと一緒に分かち合えるようになりたい。
2025年も楽しく素敵な出会いのある一年になりますように!
■ クリエイティブに関する引用文の羅列
最後に、お気に入りの引用文を羅列だけして終わります。(本当はこれらの文章を盛り込んだ記事を書きたかったのですが、自身の力量不足でした…)
「現実は小説より奇である。現実がフィクションよりつまらない時代は終わった。テクノロジーは現実とフィクションの間を連続したスペクトラムでつなぎ、すべてを現実に引き寄せてしまう。そのような新しい現実に向かいあって生きていく我々には、それを前提とした哲学・サイエンスが必要である。現実科学はそのための科学である。これまでの定量性を重視する科学とは思想が異なっている。ヒトの主観、すなわち脳によって構築される個々人の現実を科学するための手法を構築し、社会実装のための応用を目指す。」
これまでは、ヒトの創作活動はクオリティに差があるとしても、問答無用に価値のあるものとされていた。しかし、生成AIによって、その問答無用の価値が失われてしまった。であるなら、わたしたちの創造性の価値はどこに依拠すべきなのか。それは自分自身なのだと…
現状の社会システムでは何らかの境界を設定せざるを得ず、境界の内か外かの二者択一でしか幸福を追求出来ない。しかしわたしたちの暮らすモダンな世界では、幸福か不幸という指標ではなく、個人の内面のゆたかさを基準にしたスマートなシステム設計が出来るのではないだろうか。
内面のゆたかさは、自分自身の内部の事象なので、自分で意識的に無限に作り出すことが可能だ。誰かのものがたりを無理して消費する必要はなく、誰かが持っているリソースを奪う必要もない。競争も収奪も必要ない。クリエイティブな作業でゆたかさを感じられるヒトは幸いである。
「みんなを生きるな。自分を生きよう。」