見出し画像

「BIMで残業時間を減らせたら。BIMって3D?編」~一級建築士を持っているだけの凡人がいきなり設計部になった話♯12

前の記事で「BIM」についてご紹介しました。
(前記事▷「時代はBIMらしい」~一級建築士を持っているだけの凡人がいきなり設計部になった話)

軽くおさらいしておくと、BIMとは1つの建設プロジェクトの情報をまるっと3Dモデルに統合し、設計から工事、管理、運用までを一気通貫でやるよ〜!というものでした。


ちょい前からシリーズ化、
近年の日本の建設業界が目指す
「残業時間短縮」 「生産性向上」
にBIMがどのように貢献できるのか

をテーマにお送りしていきます。


今回は、BIMをまだよく知らない人にありがちな勘違いと、BIM入門者が1歩前進できるような情報についてお届けします!





BIMって3D?いや実は・・・


「BIMってなに?」
「3次元CADだよ」


この会話、結構聞くんです。
BIMを知らない人と知ったばかりの人の会話ですね。(つい昨日も建築OBのじいさま同士が話してるの聞いた。)
何なら私も、BIMを知らない人に説明しようとしたら似たような説明の仕方をするかもしれません。

たしかにパッとわかりやすい違いですし、3Dになっただけでも長らく平面図と立面図で過ごしてきた建築屋さんにとってはすごい進化ですもんね。
3Dモデルをくるくる見せてあげるだけで「おぉ~!」となる。(私もいまだになる。)


それでまぁ何が言いたいかというと、BIMをまだあまり知らない人にとっては、BIMって2DCADにZ方向がプラスされただけの3DCADなんです。



BIMをやっている方ならわかると思いますが…非常にもったいない!
もっと!
やればできるんだよBIMは…!!

+1Dで埋もれているようなヤツじゃあないんですよ。



はい、ということでBIMの真骨頂をご披露。
なんとBIMでは、3Dに留まらず、その先の次元に行くことも可能なんです。
いうなれば「卍解」ですね。

今まで黙ってましたが、実はBIMって…


8Dとかまで表現できるんですよ。


HAっつ…!?
8D!?


おどろきモモノキですね。
簡単に説明します。


1D → 線
2D → 平面
3D → 立体
4D → 時間(工程)
5D → コスト
6D → 運用・メンテナンスなど
7D → 持続可能性など
8D → 工事の安全など


ほう。
すげぇでしょ。
もはやDって言い方が合ってるのかわからん問題。
ここまでくるとDの意思を感じますね。


まあそれは置いといて、上記はあくまでBIMの考え方です。
〇〇Dって、数学とか物理学とかではまた違ったものになるので。


皆さんの言いたいことはわかります。
4Dの時間はいいとして、5Dのコストからよくわからなくなってきてますよね。
運用とか安全とか、いわば「段階ごと」の管理ができると言い換えれば良いでしょうか。

それらをBIMのシステムでは〇〇Dで表現しています。



ただし、ここで注意してほしいのは、上記の「6D以降」は世界的に定義が決まっているわけではない点。
企業や団体によってニュアンスの違いや内容の違いがあったりしますし、さらに9D、10Dなんて言っている団体もある模様。


また、3DまではBIMソフトの基本的な機能として備わってます。
これを「アドイン」っていうらしいです。
最近知った言葉です。

じゃあ4D以降の段階はどうなるの?というと、違うソフトを入れてモデルと連携させるっていうのが一般的なようです。
これも最近知った言葉なんですけど「アドオン」っていうみたいです。



だからって3Dモデル=3DCADってわけではないのでご注意を。
前にも説明したように、BIMの3Dモデルはあらゆる情報を持っているコンピューター上の「プラモデル」なので、3DCADのような線情報の集合体とは別で考えなくてはなりません。




BIMモデルにどこまで統合できるの?


そんな感じでDがたくさんあるらしいBIM。


ついさっきも書きましたが、BIMとは3Dモデルにあらゆる情報を持っています。
そして段々と次元を超えることで、プロジェクト全体の情報を1つの3Dモデルに統合できます。


と言われても、「じゃあ具体的にどこまで統合できるの?」と疑問に思いますよね。


今回この記事を書くに当たり調べたところ、下記のデータを統合可能だということが発覚しましたのでお知らせします。


【BIMに統合できる情報】

ジオメトリ情報:
形状、寸法、位置
材料情報:
使用する材料の種類、特性、コスト
構造情報:
構造部材の種類、強度、耐久性
設備情報:
HVAC(暖房、換気、空調)、電気、配管の詳細
施工情報:
施工手順、工期、必要な機材
コスト情報:
各部材や作業のコスト見積もり
スケジュール情報:
プロジェクトのタイムライン、マイルストーン
メンテナンス情報:
設備や部材のメンテナンススケジュール、手順
法規制情報:
建築基準法、地域の規制、許可情報
環境情報:
エネルギー効率、環境影響評価
安全情報:
安全対策、リスクアセスメント
プロジェクト関係者情報:
設計者、施工者、サプライヤーの連絡先

AIで生成


Wow…

思わず本場さながらの発音で驚いてしまいました。
さすが言うだけのことはあるわねBIM。
こんなにあるの。


上記のどこからどこまでが、(先ほどちらっと話した)「BIMソフトの基本的な性能」=アドインで使えるのかというと。


ジオメトリ情報なんかはモデリングする上で必要なので当たり前に入ってるとして、材料情報や構造情報、設備情報は最低限の情報を持たせることも出来ます。


構造計算だ設備機器の計算だなんだとかは今までの方法と組み合わせて使っていくイメージでしょうか。
BIMで何でもかんでもとはいかないというか、そこまでデータに持たせる必要は無いといった方が正しいでしょう。



「BIMモデルに盛り込もうと思えばいくらでも盛り込めるけど、果たしてそこまで必要か、どこまで必要か?」


例えば、施工段階では納まりがわかる必要があるので「製作図」レベルのモデルが必要です。
でも、設備メンテナンスにBIMを利用しようとしたらそこまでの情報は必要ないわ…となりますよね。


ここらへんは少し難しくて、プロジェクトや会社のマニュアルとして決めていかなければいけない分野になります。
性能に関してはカタログ、寸法に関しては詳細図を見ればわかるんだから。
という考え方。
データも重くなりますしね。



BIMモデルにはLOD(詳細度)という、「どこまで詳細にモデリングするか」という考え方があります。
今度また詳しく書きたいと思いますが、要は「平面図と詳細図」の違いのようなものです。

設計図を見れば全体のイメージがわかりますが、詳細図によって細かい部分の納まりがわかります。
計画段階、設計段階、施工段階、運用段階のBIMではこのLODを使い分ける必要があるんですね。



以上をまとめると、全情報を統合できるにはできるけど、使いどころを検討してルール化しようねって話に落ち着きます。



まとめ

ここまで聞くと、BIMってただのモデルとかソフトっていうよりは、ある種の「概念」ということに気づくと思います。
いや~説明しづらいし長くなるしもう。


BIMってBuilding Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)だよ~って説明を過去にしました。
が、最近ではBuilding Information Management(ビルディング インフォメーション マネジメント)って言い方もあるようで、そちらの方がなんだかしっくりくるというか、腑に落ちますよね。



日本は先進国でありながら、諸国と比較するとITの進歩も遅れ、BIMも十数年の差を付けられてしまっていますが、BIMの推進やBIM確認申請を目指して頑張っています。


確認申請の方が進むと、今まで会社やプロジェクトでバラバラだったテンプレートもルール化してきますし、今よりBIMを使った効率化が進むと考えます。


導入のコストと時間ばかりがかかって、なかなか成果に繋がらない企業も多いと思いますし、そんな中BIMを推進する部署に所属する方は不安と焦りがあるはず。(私だ。)

国の動向を見ながら、経営者の顔色を見ながらで早くも老眼になりそうなところですが、建設業の明るい未来に続く道であることは間違いないと確信しています。


高強度コンクリートが普通になったように、木造5階建てが普通になったように、BIMが普通に使われて残業が普通に無くなる日もきっと遠くない未来のはずです。

希望を胸に、BIMの推進頑張りましょう。
そして上手くいった暁にはガッポリ儲けてやりましょう。(我々の秘密です。)



いいなと思ったら応援しよう!