一番のファンは誰?
あたしには漫画家を目指した時期があった。
それはいじめにあって、学校に居場所がなくても、家に帰って「友達と遊んでこい!」と無理やり家から出され、家にも居場所がなくても、幾度となくあたしを慰めてくれるのが漫画だったから。
ノートと鉛筆さえあれば別の世界線に飛んでいける。魔法。
そしてまた一番のファンが居てくれたから。
それは4つ上の腹違いの姉。
当時あたしは小学5年生だったから、姉は中学2年生ぐらいだと思う。
あたしの描く、つたない漫画を「面白い!めっちゃ面白い!早く続き描いて!!」とほんとに面白そうな顔でいつも言ってくれるのだ。
姉はあたしより絵も上手く。ガンダムのフィギュアとかも繊細に造れるような才能の持ち主。その、才能溢れる姉に毎回褒められるものだから、あたしも嬉しくて。夢中になって描いた。
姉とは別々の家に住んでるので、会うのは1ヶ月に2回程度。それも「姉の家に行く」というと苦虫を噛み潰したようかのような表情を浮かべる母親に罪悪感をいだきながらも、その「自分の漫画を褒められる」という脳内麻薬欲しさに頑張って行ったものだ。
ある時ポツリと姉が言った。
「…あたし、学校でバイキンって言われてるんだよね…」
あ、この才能溢れる人も、学校ではあたしみたいに上手くいってないんだ。さすが血は争えないな。と思いつつ返した言葉は
「…バイキン、可愛いじゃん。」
子供ながらに精一杯の慰めだったし、なんか当時ほんとにバイキンだか、宇宙人だか忘れたけど、ほんとにそれっぽい可愛いキャラクターがあったのよ。
「可愛いくないよ…」
いつも笑顔で漫画を読んでくれる姉が顔を曇らせていた。
「…あたしもブスブスってめっちゃ言われるよ…」
お互いに詳しい事は聞かず。会話はそこで終わった。その時はあたしの漫画ではなく当時2人でハマってた週刊少年ジャンプの単行本を無言で読み漁った。
そして最後にはあたしの漫画も読んでくれて、また「面白い」と褒めてくれた。
いつものような屈託のない笑みはでなかったけど。
そのうち、その「姉が面白い」と言ってくれ続けた事によって、あたしは漫画を描き続けた。そして中学生になり、徐々に新しい友達にも自分が描いた漫画を見せるようになっていた。
友達も「面白い!また見せて!」と言ってくれる。それでも。
やっぱなんか姉の「面白い!!」とは違うのだ。
そのうちあたしは自分の絵を描く才能のなさに気付き、漫画を描くのをやめた。
環境が変わったことで、いじめも薄くなっていた。それと共に別の小学校出身の友達も出来、あたしより絵が上手い子もたくさん回りに居るようになっていた。
努力はしてたつもりだった。いっぱい描いたし、絵の練習もした。
それでもなにか「才能」とか「センス」ってものには勝てないんだなって悟った。
だから一時期は「姉に絵を描いてもらってあたしがストーリーを考えた漫画が一番面白いのではないか?」という考えにいたって実行してみたものの、姉はどこかおちゃらけた所があり、シリアスにしたい場面でもどうしてもあたしの思うように描いてくれない。
何でそこに毒キノコはえとるねん!
何でそこにクリボーいるねん…
てなことでその作戦も失敗に終わり、あたしは本格的に意欲をなくした。
結論。
「才能には勝てない」
でもやっぱり、あたしの漫画の一番のファンは姉の貴方だったよ。
今はもうこじれた関係性になってるけどね。
これもお互い大人になったって証拠かしらね?
ここまで読んでくれてありがとうございます。m(_ _)mペコリ。
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