MIXI AWARD 2024のキービジュアルはどのように作られた?グラフィックデザインと3DCGの制作担当者に聞いた想い
こんにちは。
MIXI デザイン本部 デザイナーリレーショングループの若狭です。
MIXIでは1年に1度、全社イベントとしてMIXI AWARDを実施しています。
このAWARDの目的は大きく2つあります。
第一に、称賛と表彰の文化を大切にしたいということ。
第二に、MIXIの企業理念である「パーパス、ミッション、ミクシィ・ウェイ、バリュー」(以下PMWV)を体現した人を表彰し、その受賞者の行動を参考にして、他の社員にも行動のヒントを得てもらうことです。
今回はキービジュアル(以下KV)の制作を担当したメンバー2名に、制作プロセスでチャレンジしたことや、こだわりポイントについて、話を聞きました。
MIXI AWARD 2024 KV制作の流れ
━━まず、お二人のキャリアについて教えてください。
西巻:私は2017年に新卒でミクシイ(現:MIXI)に入社し、最初の3年間は主に『モンスターストライク』(モンスト)のキャラクターグッズの制作に携わっていました。
その後、組織の再編を経て、『モンスト』キャラクターのプロモーションに関するグラフィックデザインや、「XFLAG PARK」「MONST FREAK」などのイベントやコンテンツのキービジュアル(KV)制作を担当するようになりました。
原:原:私は以前、3DCG映画や遊技機の映像を制作する会社で働いていました。ミクシイ(現:MIXI)に入社したのは2016年です。
入社当初は『モンスト』の動画広告の制作を担当していましたが、その後、全社横断組織のデザイン本部が立ち上がり、その中で『モンスト』の新キャラクター発表用映像や獣神化発表映像など、CGを駆使した映像制作を経験しました。
現在は映像制作チームを経て、テクニカルデザイングループのR&Dチームに所属し、引き続き映像やCGの制作に携わっています。
━━MIXI AWARD 2024のKV制作の流れについて教えてください。
西巻:MIXI AWARD 2024のプロジェクトが始動したのは、2023年12月です。
人事担当者から「昨年のAWARDのトーンを継承しつつ、今年はよりPMWV(パーパス、ミッション、ミクシィ・ウェイ、バリュー)に焦点を当てた表彰式にしたい」という要望を受け、制作がスタートしました。
クリエイティブディレクターが立案したコンセプトをもとに、「今回のAWARDの目的に合わせて、どのようにPMWVをアピールしていくか」
「それをどのようにKVに反映させるべきか」についてデザイン本部内でディスカッションを重ねました。
その結果、最終的に4つのデザイン案に絞り込み、人事本部にプレゼンテーションを行い、最終的に選ばれたのが現在のデザインです。
━━選ばれたデザインは、どのような点が評価されたと思いますか?
西巻: このデザインのコンセプトは「あなたの中のPMWV」です。
さまざまなオブジェクトが社員を象徴しており、その内側にあるPMWVを称えるという意図で制作しました。
コンセプトが最もわかりやすく伝わるビジュアルであったこと、さらに前年度は平面的なデザインだったのに対し、今年は立体的な表現を採用することで新鮮さを出せた点が評価された理由だと思います。
━━コンセプト決定後はどのように進んだのでしょうか?
西巻: デザインコンセプトが固まった後は、大まかなラフの制作に入りました。
3DCGデザイナーである原さんに引き継ぐ際には、PMWVの表現方法やMIXIらしいトーンなど、より具体的な表現方法を詰める過程を経ました。
ここで大事にしていたのは、昨年のAWARDのトーンを継承することです。
MIXI AWARDは昨年大幅にリニューアルされたため、そのトーンを失ってしまうとブランドの認知が進まなくなります。
しかし、全く同じデザインでは代わり映えしないので、試行錯誤を繰り返しました。
3DCGの知識があまりない中で、「どうしたら原さんに伝わるラフが作れるだろうか」と悩んだ結果、挑戦してみたのが画像生成AIの活用です。
2024年1月にCDO(Chief Design Officer)より、全社で画像生成AIの検証を進めましょうとの呼びかけが出て、ちょうど画像生成AI利活用ガイドライン(ver1.0)が発表されました。
そこで、立体表現のラフ制作にAIを使用してみることにしました。
━━実際に画像生成AIを使ってみてどうでしたか?
西巻: 今回のデザインは比較的シンプルな立体表現だったため、すぐに使えるイメージを作れる印象でした。
ただし、オブジェクトの角度や、三角錐の表現がうまくいかず、プロンプトの難しさを感じました。
とはいえ、実際に自分で手を動かして作るよりも速く仕上げられた点は大きなメリットでした。
━━ラフ制作のポイントは何ですか?
西巻: まず一つ目は、MIXIらしいトーンの調整です。
デザインが可愛くなりすぎたり、食べ物のような雰囲気になってしまうと、MIXIらしさから外れてしまうので、慎重に進めました。
二つ目は、オブジェクトの配置です。
数や位置によって、デザインが楽しい印象や賑やかな印象になりすぎることがあるため、空間の調整を細かく行い、AWARDらしい上品なトーンを保つよう工夫しました。
三つ目は、オブジェクトの断面のパターンです。PMWVを表現するため、4種類のパターンを用意しました。
「P」は内側から外側に広がる形で、世界を幸せな驚きで包む様子を表現しています。
「M」はつながりを持たせた空間で、心を結びつける場を作り上げるイメージです。
「W」はさまざまなオブジェクトが飛び出す形で驚きを表現し、
「V」はこれら3つを組み合わせて、MIXIの3つのVALUES「発明・夢中・誠実」を表現しています。
華やかで温かみのあるお祝いの場を演出し、参加者がうれしく感じ、また参加したくなるような雰囲気を大切にしながらデザインを進めました。
━━特にこだわった点はありますか?
西巻: 一番こだわったのはPMWVの表現方法です。
当初はオブジェクトの外側と断面の両方を立体的にしようと考えていましたが、制作の過程で両方を立体にすると、デザインが分かりにくくなることに気づきました。
最も重要なのは、オブジェクトの断面がそれぞれの功績を表現するものであることです。
そのため、要素を削ぎ落とし、断面を平面にすることで、より伝わりやすいビジュアルになりました。
これにより、前年度の雰囲気も踏襲することができたと思います。
3DCGデザインの工夫
━━大ラフが完成し、3DCG制作担当の原さんへバトンタッチされたんですね。
原: 私はKV制作のプロジェクトが始動した当初から関わっていたので、コンセプトの立案から制作に至るまで、デザインが徐々に形になっていく様子を見てきました。
提出された4案はいずれも素晴らしく、西巻さんがさまざまなデザインを組み立てていく姿を見て、「力強くて素敵だな」と感じていました。
そして、大ラフをもとに最終的なデザインを作り上げていきました。
もともと、3DCGデザインはKVだけでなく、賞状や賞品などさまざまなアイテムに活用されることが決まっていたため、3D表現を静止画としてどのように見せるかを考慮しながら制作を進めました。
3Dは静止画で見せる場合と動画で見せる場合とでは、制作のアプローチや見せ方が大きく異なります。
そのため、静止画でもインパクトのあるデザインにするために、オブジェクトのレイアウトやライティングを何度もテストを重ねました。
━━3DCGをデザインする上で工夫した部分はどこですか?
原: 今回はシンプルなデザインだったため、3Dにおいては質感の表現とライティングが鍵だと感じていました。
特に難しかったのは断面の見せ方です。
例えば、断面がツルツルだとガラスのように光が反射してしまい、何も見えなくなったり、逆にライトが当たらない角度では暗く映ってしまうことがありました。
最終的に、断面をまっすぐカットするのではなく、少しへこませることでこれを回避しました。
━━確かに良く見ると、断面が少しへこんでいますね。
原: 実は、逆に断面を膨らませる案もありましたが、へこませる方がデザインとして落ち着くという意見が多かったので、こちらを採用しました。
また、オブジェクトの数が多いため、ライトを複雑にするとオブジェクト同士が干渉し、見栄えが悪くなる可能性がありました。
そのため、シンプルな3点ライティングを採用しました。さらに、オブジェクトに影が落ちたり、反射が干渉しないように、オブジェクトのレイアウトも奥行きを意識して配置しました。
描画の美しさを求めたツール選定と新技術への挑戦
━━今回使用した制作ツールと、その選定の決め手についても教えてください。
原: Unreal EngineとMayaのどちらを使うか迷いましたが、最終的には「描画の美しさ」が判断基準になりました。
今回のデザインは、テロップや賞状盾などの2Dデザイン用素材としても使うことが多く、Unreal Engineでは細かい素材の出力に少し不安があったため、Mayaを使用することにしました。
Mayaでのレンダリングは通常Vrayを使用することが多いのですが、今回はMayaのデフォルトレンダラーであるArnoldに挑戦しました。
結果として、V-rayの方が使いやすいと感じましたが、どちらもクオリティに大きな差はなく仕上げられたことが大きな収穫でした。
━━社内向けのイベントだからこそ、挑戦できた部分も大きかったのでしょうか?
原: そうですね。社内向けだからこそ、さまざまな挑戦ができました。
KV制作だけでなく、オープニング映像でもチャレンジングなことに取り組むことができました。
━━それはどのような取り組みですか?
原: 実写合成への挑戦です。
人の周りにオブジェクトが浮かび上がる映像を作りましたが、その際に「NeRF」という、映像や写真から立体を生成する3D生成技術を使いました。
これまでなかなか映像での実用化の場がなかったのですが、社内向けのイベントだからこそ試してみようとなりました。
生成された3Dデータを使い、Unreal Engineで自由なカメラワークを付けて映像を制作しました。
まだ精度は高くありませんが、人物のシルエットや静物である背景はきれいに再現でき、3Dモデルを追加して合成することも可能だとわかりました。
━━今後につながる知見になったんですね。
原: そうですね。動画クリエイティブ室の室長がよく「新しいことにチャレンジしよう!」と言っているのですが、実際に挑戦してみて、その大切さを改めて感じました。
「これは無理だ」と思っていたことでも、実際にやってみたら「意外とできた!」と感じることが多いです。たとえ上手くいかなくても、その経験が今後どこかで活きるかもしれません。とにかくやってみる姿勢が重要だと思います。
━━MIXI AWARDのKVは、司会台の背景や賞品、演出用の手紙、フォトスポットなど、さまざまな場面で展開されましたね。
西巻: 昨年の制作リストにあったものだけでなく、AWARD開催直前に「これもあった方がいい」と判断して追加制作したものもあります。
原: 映像や会場の演出に関しては、プロジェクトが進むにつれて決まることが多く、直前に決まることも少なくありません。
西巻: ディレクターや人事担当者と密に話し合いながら、臨機応変に対応していきました。
今回は、焦る場面もありましたが、なんとか乗り切れたので、次回はもっと余裕を持って取り組めたらと思います。
インハウスデザインの魅力
━━改めてプロジェクトを振り返っていかがですか?
西巻: インハウスのデザインだからこそ、企画の段階から実際に形にしていく過程に携われるのが本当におもしろいところだと思います。
MIXI AWARDを有意義なイベントにするため、チーム全員で協力しながら作り上げていく経験を積めたことは、とても貴重でした。
原: 今回は総合ディレクターのそばで仕事をする機会があり、実写撮影など、ディレクターの仕事を間近で見ることができたのがとても良かったです。
来年のプロジェクトに参加するデザイン職には、引き続きチャレンジングな映像制作に取り組んでほしいと思っています。
西巻: これまでも何度か原さんと一緒に制作をしてきましたが、今回は特に近い距離で働くことができ、3DCGモデルやその特徴について教えていただけたことがとても勉強になりました。
自分の視野が広がったように感じ、とても楽しかったです。
原さんからよい刺激を受け、私も3DCGソフトの「Blender」を勉強し始めました。
原: そうなんですね!私も西巻さんと同じ意見です。一緒に仕事をすると、相手の仕事が理解できて興味が湧いてくるものですよね。
新しいことに挑戦できましたし、KV制作プロジェクトは本当に楽しかったというよい思い出です。
CDOがさまざまなAI関連書籍を紹介しているこちらの記事もあわせてご覧ください!
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