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サウンドデザイナーからMIXIブランドデザイン室の室長へ。デザイン職のキャリアに必要な「軸」とは?

こんにちは。
MIXI デザイン本部 デザイナーリレーショングループです。

前回、MIXIデザイン本部の室長3名にインタビューし、デザイナーのスキルアップについて話を伺いました。

今回は、サウンドデザイナーとしてキャリアをスタートし、現在デザイン本部 ブランドデザイン室の室長として活躍している安井に、これまでの歩みを振り返りながら、どのような視点で現在の仕事にたどり着いたのか、転職を繰り返す中で一貫して持ち続けた軸、そしてクリエイティブ職に求められる心構えについて、話を聞きました。

安井 聡史(やすい さとし)
ブランドデザイン室 室長
2017年6月中途入社。モンスターストライクのサウンドディレクション業務などを経て、2018年4月よりサウンドグループのマネージャーに就任。
2022年よりデザイン本部 Designer Relationsグループへ異動し、デザイン職向けのイベントや新卒社員研修の企画・運営に携わる。2023年よりブランドデザイン室 室長に就任。

音楽にのめり込んだ学生時代


━━安井さんの現在の役割・役職について教えてください。

現在、僕はブランドデザイン室の室長として、「社内外にMIXIのPMWV(パーパス、ミッション、ミクシィ・ウェイ、バリュー)をデザインの
力で浸透させること」
「デザイン職やデザイン組織の価値向上を目指す」というミッションに取り組んでいます。

━━安井さんの原体験を伺いたいと思います。どのような学生時代を過ごしましたか?

クリエイティブの道に進むきっかけは、中学の頃に叔父から譲り受けたアコースティックギターでした。それをきっかけに音楽の楽しさに目覚め、どんどん夢中になっていきました。

高校では応援団に所属し、体育祭で披露するダンスの選曲や、振り付けを担当しました。今振り返ると、この時に「音の編集」に関わっていたのだと思います。

これらの体験をきっかけに、作曲や作詞、アレンジ、ボーカル、パフォーマンスを本格的に学びたいと思い、専門学校への進学を決意しました。

━━もともとアーティストを志していたんですか?

そうですね。当時はプロのミュージシャンを目指していました。
専門学校ではシンガーソングライターを夢見ながら、レーベルやレコード会社にデモテープを送り、自分を売り込んでいましたが、なかなか成功には至りませんでした。

就職活動を始めても期待通りの結果が出ず、焦りを感じていました。というのも、父の反対を押し切って専門学校への進学を選んだため、「なんとかして食べていかなくては」という強い思いがあったからです。

そんな時、専門学校の先生に相談したところ、学校で教育補助員の募集があることを教えてもらいました。
先生方をサポートする仕事をしながら、自身の音楽活動と両立し、なんとかして音楽業界に足を踏み入れたいと考えていました。

スキルを高め、自分をブランディングしていくために転職


━━その後はどのようなキャリアを選択しましたか?

それから2年後、さまざまな経験を経て、専門学校の先輩が働いていた制作会社にサウンド・クリエイターとして入社しました。

主に携わっていたのは、ガラケー向けの着メロ制作で、CDに収録されている楽曲を耳でコピーし、データを打ち込み、64和音に合わせて音を削り、機種ごとにバランスを調整するという作業を行っていました。

その後、会社でインディーズレーベルが立ち上がり、自分の作った曲がCDとして世の中に出るという貴重な経験もしました。

━━それは感慨深いですね。

そうですね、でも実際は思ったほど感動しませんでした。
自分の名前が単独でクレジットされるわけではなく、会社のサウンドクリエイターチームとしてクレジットされていたこともあって、達成感が薄かったのかもしれません。

当時は若さと野心があり、「もっと自分の存在感を高めたい」と強く感じていましたが、一方で限界を感じ始めたのも事実です。

━━限界とは、具体的にどのような点で感じたのでしょうか?

会社に入ってみると、僕よりもはるかに高いスキルを持った優秀なクリエイターがたくさんいました。そんな方々を見て、なんだか自分の野心やプライドがだんだんちっぽけに感じたのをよく覚えています。

また、自分が周りのクリエイターのように素晴らしい技術を持つ未来も想像ができず、自分の能力に限界を感じていました。
さらに、着メロ業界は衰退しつつあり、自分も30歳が近づいていたため、転職を真剣に考えるようになりました。

そして次に選んだのは不動産の営業職でした。
クリエイターとして働く中で、モノを作ってもそれを売るのは他の人たちであり、「自分には売るスキルが必要だ」と感じたからです。

もし将来、フリーランスとして活動するなら、売り込む力やコミュニケーション能力がなければ、いくら良いモノを作っても広まらないと考えていました。

━━そうした気づきから、専門性だけでなく独自性を意識するようになったのですね。

そうですね。自分自身をどうプロデュースし、ブランディングしていくかを考え始めました。

不動産営業は未経験からの挑戦でしたが、それなりに成果を上げることができました。ただ、体調を崩したこともあり1年ほどで退職することになってしまいましたが、この仕事を通じて、相手のニーズを引き出すコミュニケーションスキルなど、多くのことを学びましたね。

その後、音楽系ソフトウェアや機材のカスタマーサポートの仕事に転職しました。以前、優秀なクリエイターたちの姿を見ていたこともあり、そういった人たちをサポートしたいという思いがあったからです。

━━さらに、その後はIT関連企業に転職したんですね。

そうです。
データセンターに常駐し、サーバーを利用する企業の方々から、「システム設計を変更したい」や「不具合を修正してほしい」といった要望を受け、それをエンジニアに伝える仕事をしていました。
不動産営業時代やカスタマーサポートの経験で培った、「お客様の声を聞く力」をこの仕事でも活かすことができたと思います。

自分のポジションや仕事には「固執」しない


━━MIXIへの入社経緯と、現在のポストに至るまでについて教えてください。

データセンターに勤務して半年ほど経った頃、学生時代の先輩から連絡をもらいました。
その先輩はMIXIでサウンドグループのマネージャーをしていて、僕がデータセンターで働いていると伝えると、「音楽を学んできたんだから、やっぱり音楽の仕事をしようよ」と声を掛けてくれました。正直、ものすごく悩みましたね。

━━それはなぜですか?

その頃は前職のIT関連企業に入社したばかりで「今の仕事をやり遂げる前に転職していいのだろうか」という迷いがあったからです。
しかし一方で、「面白そうなチャンスを逃したくない」という気持ちも強く、ジレンマに悩んでいました。

そんな時、妻に相談したところ「悩んでいる時点で行きたいと思っているんじゃない?後悔しない方を選んでね」と言ってくれました。
彼女は僕より年上で、さまざまな職を経験してきた人生の先輩でもありとてもリスペクトしているのですが、そんな彼女が背中を押してくれたのが大きかったですね。
MIXIのサウンドグループに転職を決意できたのは、彼女のおかげです。

━━素敵な話ですね!サウンドグループではどのような仕事を担当したのですか?

『モンスターストライク(以下モンスト)』のキャラクターボイスの権利管理や契約関連の整備を担当し、徐々にサウンドディレクターとしてイベント用の楽曲制作における外部クリエイターへの指示や業務のコントロールを任されるようになりました。

そして、サウンドグループが拡大していく中で、入社から約1年でモンスト事業のサウンド領域のマネージャーを任されるようになりました。

━━それはスピード昇進でしたね。

そうですね。ただ、最初の1年は制作現場での仕事と並行してメンバーの評価も行うなど、戸惑うことが多く、マネージャーとして十分に機能していなかったと感じていました。
そこで、制作現場から離れ、マネジメントに完全にシフトすることを決意しました。

━━制作現場を離れてマネジメントに専念することに、抵抗はありませんでしたか?

マネージャーとしてサウンド領域に関わり続けられていたので大きな抵抗感はなく、純粋に求められる役割に応えたいという気持ちで自然にマインドチェンジができました。

マネジメントに専念すると決めてから、一番重視していたのは「組織の成長をどう促すか」ということでした。

僕がいなくても組織が円滑に回る仕組みを作ることを目指していましたし、後任にマネジメントを任せ、各メンバーの成長の機会を作ることが大切だと考えていました。

僕とは異なる視点を持つ人がマネージャーになることで、組織もさらに成長していくと信じていました。

━━安井さん自身のキャリアについてはどう考えていたんですか?

まずは組織の成長にマネジメントとしてどうやって貢献するかでした。
メンバーの頑張りのおかげもあり組織が成長して、後任にマネジメントを任せることも決めた後、自分の今後について考えが巡ってきたときに「自分のことも考えなければ!」とハッとしました。

━━本当に自分のことは後回しだったんですね。

そうですね。
後任に仕事を引き継ぎながら、約1年かけて自分の次のステップを模索していました。

これまでボトムアップで組織を変革する過程を見てきたことから、組織開発に興味を持っていましたし、現場が動きやすい環境を作ることにチャレンジできたら良いなと思っていました。

そんな時、現執行役員 CDO(Cheif Design Officer)である横山に相談したところ、デザイン本部 Designer Relationsグループへの異動を提案され、デザイン職向けのイベントや新卒社員研修の企画・運営に携わることになりました。

━━安井さんはさまざまな業種・職種を経験していますが、現在のブランドデザイン室の室長というキャリアに進むにあたって最も大きなターニングポイントになった出来事は何ですか?

「ミクシィ」から「MIXI」への社名変更プロジェクトが大きな転機だったかもしれません。当時のブランディンググループが推進していたのですが、よりスムーズに進めるために、「安井さんにお願いしたい」と依頼がありました。

僕はサポート役として現場同士をつなぐ役割を担い、進捗管理リストの作成やメンバーへの周知を行いました。

━━重要なプロジェクトの推進に貢献されたんですね。なぜ任されたと思いますか?

正直なところを言うと分かりませんが、Designer's Meetingの運営などで組織を横断するプロジェクトの管理・推進をしていたり、元々モンストのサウンド制作の現場経験から、事業の現場理解が一定期待できるというのはあったのではないかと思います。

その後に現在のブランドデザイン室が誕生したことも振り返ってみると、このプロジェクトは出来事として大きかったように思います。

周りから寄せられる期待には、110%の成果で返したい


━━これまでのキャリアを振り返って「軸」になっていることは何でしょうか?

30歳を超えてからの仕事の軸は、「誰かの役に立つ」「誰かをハッピーにする」という意識です。常に、自分に寄せられた期待に対して110%の成果を返すことを目指してきました。

少し「おつり」を返せるくらいの成果を出したいという気持ちで、新しいスキルを積極的に吸収したり、より高い効果が見込めるなら自分のポジションを譲ることも厭わないようにしたりしてきました。

僕自身、自分の役割や職能が変わることにあまりこだわりがないのかもしれません。

━━それはなぜですか?

最初に入社した制作会社で、着メロ制作だけでなく、サイト構築やFlashの待ち受け画面制作にも携わった経験が大きいように思います。

そこで、音楽以外の分野にも自分の可能性を感じることができましたし、不動産業界への転職も、自分にとっては大きなギャップではありませんでした。
異なる世界を見る経験は、自分にとっての糧になっていると感じています。

━━だからこそ音楽の世界に留まらず、前向きに新たなキャリアに挑戦できたのですね。

そうですね。
極端な話、必ずしもクリエイターである必要もないし、仕事にすることも絶対ではないと思っています。

サウンドを好きであり続けることは僕がサウンドクリエイターであるかどうかとはあまり関係がなく、良いリスナーであるだけでも音楽との付き合い方としては十分かなと思えています。

昔の自分と比較するとずいぶん寛容になれていると感じますが、おかげで自分のキャリアをフラットに捉えられているかもしれませんね。

━━最後に、これからデザイン職としてのキャリアを考えている人にメッセージをお願いします。

クリエイティブを見る五感を大事にしてほしいと思います。
純粋なインプットができることが大切です。「良い」と思ったものに対して素直に感動できることが、クリエイティブの基礎になると思っています。

高校生の頃は周りが日本の人気アーティストの曲を聴いているなかで、僕自身は自分の個性を出そうと、洋楽のパンクロックやインディーバンドなどに熱を上げていました。

でもインプットの段階でフィルタリングを掛けず、「良いものは良い」と素直に受け入れることが、感動を他の人に伝えるための原動力になると思うんですよね。

心が震える体験をした時に、「自分には表現できない」と卑下するのではなく、その感動をまずは素直に受け入れ「どうしたらこんな表現ができるのだろう」と考えられるようになると、自分のアウトプットにも変化が生まれると思っています。

専門学校の先生から「良いクリエイターである前に、良いリスナーでありなさい」という言葉をいただいたのですが、今思うと、とても大事なことを教えてもらったなと、感慨深くなりますね。

「これを作らなければいけない」という義務感ではなく、「どうすれば期待を超えられるか」という前向きな発想を持てるようになると、デザイン職としての幅が広がると思います。

また、様々な経験を積む中で、自分自身や環境などが変化していくことを恐れず、ポジティブに捉えられる人であれば、将来のキャリアに良い影響を与えると信じています。


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