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ハリウッド

引っ越しが好きだ
東京に来てから8回は引っ越している
私にとっては"祭り"みたいなもので
必然と躁状態になりご機嫌になる

現在の部屋から引っ越してくる時
業者さんに缶ビールの500mlを
2本差し入れした

"祭り"なんでね

めちゃくちゃ喜んでくれた

そりゃそうだ
ビールが嫌いな引っ越し業者なんか
存在する訳がない

笑顔の引っ越し屋さん
その日は"クリスマス"だった
それもあって
私は気分が良くなってしまい

『ただチキンは自分で買って下さいね』



ハリウッド映画みたいなジョークを
カマしてしまった
するとさっきまで笑顔だった
引っ越しさんの表情が
あきらかに戸惑いの顔になり

『え?チキン?何それ?』
みたいな感じに

私は焦り

いや〜今日はクリスマスじゃないですか?
あ、クリスマスイブか、うん、
まあどっちでもいいんですけど、で
ビールとチキンって合いますよね、なんでチキンは自分で用意して欲しいってやつ?
的な?


途方に困り果てる私に引っ越しさんは

『差し入れありがとうございます!』
と"元気で"ジョークを
無かった事にして帰っていった

新居に残された私は悲壮感に襲われた

『やっぱハリウッドじゃないし無理か』

この手の"ジョーク"は真面目な人には
流されてしまう 

分かる

次の引っ越し作業の事とか
考えてたのかもしれない

伝え方が悪かったのかなぁ
間かなぁ、タイミングかなぁ
私はフローリングに寝転び
あの引っ越しさんとの全ての会話
関わりを思い返してみた

すると、ジョークを入れるスキが全く無いことに気が付いた
確かにスピーディーで感じも良く
プロフェッショナルだとは思う
しかしジョークを入れるスキは全くない

それが今の日本の引っ越し屋の
いや、日本の接客する全ての人の
もっと言えば全ての日本人の
課題なのではないか?
私は考えた
ボケの技術とかクオリティは
置いといて、気付かれないのは悲しい
無かったことにされるのは腹が立つ

ボケの優先順位が低い

ただ私も余裕が無いので難しいんだけど
でもボケを無視しない余裕のある人間になりたい
そしてガンガンとボケていきたい
ボケに気付かないのは
仕事のミスくらい重い罪として
考えていたい

私は
『ただチキンは自分で買って下さいね』
に対して
『チキンは次のお客さんに貰いますよ』
と言って欲しかったんだ

文字に起こすとつまらないけど

これを小粋にやるのがハリウッドだ

ハリウッド・・・やるやん

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