”忘れないで”って言ったっけ?
どこにだって行けるような気がして手をとりあった夜があった。
もうはるか遠い9年前の冬の終わりの日。
春の気配がほんの少しだけする真夜中の公園で「君を好きだけれど幸せにする覚悟がない」とあの子が言って私は何と答えたのだっけ。悲しそうに笑ったんだ。
誰よりも側にいた時間が確かに存ったのに、恋人ではなかったから私たちの物語が終わっていないのだとしたら、手を繋ぐだけでどこまでも行ける気がしたあの日の私たちを今すぐ抱きしめてあげないといけない。
「またね」と言って横断歩道を渡ろうと