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トリック・オア・トリートは
フォークの背に乗せたライスをぎこちない手で寄せ集めながら不器用に口へと運ぶ。
むしろ少し前のめりになって口をフォークに近づけると云った方がいい。
僕の生まれた日は イエス・キリストの生まれた前の日で、
父さんはその日に呑んだくれてたって母さんが言ってた。
頑なに切り分けられたケーキに手をつけようとしなかった父。
それをなんとか取り持とうとする母。
白いご飯は茶碗で食べるのが一番美味しいんだと気づいたのは随分後で、
面接官にイヤミを言われて歯を食いしばった夜。
母さんの炊きたてのご飯が やけに美味しく感じたのはその晩だ。
フォーク一本でスパゲティを食べる僕に、
「それはスプーンの上でクルクルと回してから食べるのよ」と君が云う。
知らない間にこの季節がやってくると、
街全体がジャック・オー・ランタンと呼ばれるオレンジ色の灯り。
それは海の向こうの国のおとぎ話で、
あの時父も同じように思ったのかな。
「トリック オア トリート」は僕には馴染まない。