課長と課長【毎週ショートショートnote】

課長は市民楽団でトロンボーンを吹いている。
普段は全然そんな素振りを見せないのだが、公演が近くなると仕事中もマウスピースを離さない。だから指示は「ヴァーヴァヴァー」と言うだけで翻訳しないと作業に入れない。この時期はそのせいで仕事が滞り課員一同が疲弊する。今年もその時期が来たのだが、いつも以上に仕事が多く翻訳で時間を取られることは避けたい。
そこで一計を案じた。隣の課長に相談してみた。

「それは大変だな。会社の売り上げにも関わるから少し調査しよう」
「それで間違いなければ？」
「まずは課長同士で話す。それでダメなら上に話を持っていく」

翌日から数日小さなドローンが部屋中を飛び回った。そして、

「ドローンの課長が何の用だ」
「お前とこの課員から相談を受けてね」
「何の話だ」
「そのトロンボーンの口調何とかならないかとな」
「そうか課員に迷惑かけていたのか。分かった」
こうして仕事が滞ることなく順調に流れるようになったのは言うまでもない。
(410文字)

今週も参加させていただきます。
たらはかにさま　よろしくお願いいたします。

いやあ、難しかったぁ。
でもトロンボーンが何とか形になって良かったぁ。

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