ちょっと変だよ頼子さん。2
僕と頼子さんは、たかプリの喫茶室にいる。
詳しくは「ちょっと変だよ頼子さん。1」をご覧いただきたい。
「えっと、僕たちまだ名乗ってもいませんよね」
「そうですわね。でも必要かしら?」
「この場限りということであればこのままでも全然構いませんが、先ほどのように家族の心配までされるということは今後もお会いするのかなって考えまして」
「そうね、ずっと名無しってわけにもいかないわよね。よくお聞きなさい、わたくしは頼子。この辺りの古いお宅で頼子さん宅はって聞いてもらえればすぐに分かりますから。はい次はあなたよ」
「僕はミワと言います。大徳寺の近くに住んでます」
「そう」
あっさり〜。
「そちらのお砂糖取ってたもれ」
たもれ? お公家さん?
「頼子さんは時々不思議な言葉のチョイスをされますね」
「そうかしら? 自分で感じたことはありませんわよ」
ウルトラ警備隊基地を出たのが14時30分くらいで、コーヒーを飲みケーキを食べているとすぐに夕方となった。
「頼子さん、もう夕方ですよ」
「そうね。あなたお時間は大丈夫かしら? よければ夕飯もご一緒していただける?」
「夕飯をご一緒するのは一向に構いませんが、お恥ずかしい話、私は年金暮らしなのでさほど金銭に余裕はないんです。こちらのコーヒー代くらいなら奢らせていただきますけど、食事代もとなるとちょっと困ります」
「何を心配されてるのでおじゃる? そんなことはわらわに任せておけばよいのです。たかが数度の食事代など、足りなければ田畑や家を売ってでも必ずわたくしがお支払いいたしますから」
おじゃる? わらわ? 田畑や家を売る? どんな食事するつもりなの?
「それにこのホテルなら月毎にまとめて請求が来ますから一々お金に煩わされることはございませんの」
この辺りの相当な地主で、お金持ちだということは分かったけど、このまま世話になっていいものか。
「食事は何がいいかしら? ここの中華は美味しいわよ。それともどこかへ行きましょうか?」
「こちらの中華で大丈夫ですよ。でもいいんでしょうか」
「わたくしがお誘いしているのですから何もご心配いただかなくてもよろしくてよ」
「ですが・・・」
「それよりあなたお酒は?」
「お付き合い程度には飲みます」
「それならお食事の後はこちらのバーで飲みましょう」
「頼子さん」
「あっ、そうだわ、少し電話をしてきますからこちらでお待ちになってね」
「あっはい」
頼子さんはよほど暇なのか、世話好きなのか、それとも格好のオモチャが手に入ったと思ってるのか、何にしろ積極的だなぁ。
あっ頼子さん、電話って言ってたけどスマホはテーブルの上にあるぞ。
意外にそそっかしかったりするんだな。
あっ帰ってきた。
「頼子さん、電話って言ってたのにスマホ置きっぱなしですよ」
「ああ、もういいの。用件は片付いたから。はいコレ」
「これって部屋の鍵?」
「一部屋キープしてきちゃった。ダブルでね」
「頼子さんはご自宅が近いのに帰らないでここに泊まるってことですか?」
「そう。これから食事してお酒を飲んで部屋に入るの。あなたも一緒にね」
「ええ〜。ちょっと待ってください。僕はそんなつもりじゃ」
「わたくしでは役不足かしら?」
「いえ、僕の方が役不足でして」
「じゃあ、役不足で構いませんから一晩お付き合いしてくださるわね」
「どうお返事すればいいのか」
「そういうことをしたくないならそれでもいいの。もちろんしてくれてもいいのよ」
「考えてもいませんでしたから」
「そうね、先程知り合ったばかりですものね。でもね、わたくしには分かるのよ、あなたと相性はいいって。ご不満かしら?」
「不満ではありません」
「では決まりね。でも無理強いはできませんから、これから食事してお酒を飲んで・・・、考える時間はありますわよ。とっとと尻尾を巻いて逃げ帰るならそれでも良くてよ。追いかけはしませんから」
それから一流ホテルの中華料理を堪能することになったのだけど、頼子さんがおすすめの料理を単品でどんどん頼み、すでに食べきれないほどの量がテーブルに所狭しと並んでいる。
そして鮑の大きさがどうとか、燕の巣がどうとか・・・。
私がよく食べる麻婆豆腐や青椒肉絲、回鍋肉などは出てこない。
多分メニューにもないのかもしれない。
食事の間中頼子さんは亡くなったご主人の話とここの中華料理が美味しいと言う話をずっとされていた。
料理の話はまだしも、亡くなったご主人の話はこれからベッドインするかもしれない私に聞かせてどうするつもりなんだろう。
「頼子さんは主治医のところで接種されなかったのですか?」
「だってあの先生、とっても注射が下手なのよ。わたくしが注射嫌いなのはきっとあの先生のせいね。だから先生のところではイヤって言ったらこちらを予約してくださったの。あなたもそうなの?」
「僕は単純に自宅近くの医院などでは日程が合わず予約が取れなかったからなんです」
「そう」
やっぱりあっさり〜。
場面はホテルのバーへ移る。
「わたくしの主人は性に対してすごく淡白な人だったの」
「個人差はあるでしょうからね」
「行為の最中に声をあげると『お前は娼婦か、声など上げるなみっともない』ってよく怒られたわ」
「あの声がいいんですけどね」
「主人がお前はマグロでいいんだっていうからベッドの上でお魚の真似したの。そうしたら主人に呆れられちゃって、お説教もらっちゃったわよ」
「こう言っては失礼ですけどご主人も相当変わってらっしゃいますし、頼子さんは目茶苦茶ウブじゃないですか」
「それはそうでしょ。耳学問はしてましたけれど主人が初めての男性で最後の男性ですから」
「僕が二人目ってことですか?」
「主人が亡くなって一度目はリセットされているからあなたが初めての人になるわね」
「そんなシステムでしたっけ?」
「わたくしにとってわね」
「もう少し選んだ方が良くないですか?」
「先程も言いましたよ。あなたとはきっと相性がいいって」
「しかし」
「これ以上お酒を過ごしてしまうときっと眠くなってしまうわ。そろそろ部屋へ戻りましょうよダーリン」
「ダ、ダーリン?」
「そうよ今日だけはね」
「う〜ん。じゃあ行こうか頼子さん」
「はいダーリン」
頼子さんの足元は覚束ない。ずいぶん飲まれてたからなぁ。でもこの分だと部屋に戻ってお休みというパターンじゃないのか?
子供の産める女性ではないかもしれないけれど、乙女ではある。
これが頼子さんとの出会いだった。
この物語はフィクションです。
そうしておくのが一番無難だと悟りました。
そうでないとアチコチからツッコミ入ります。
だから誰がなんと言おうとフィクションです。
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