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久々の手芸に取り組み、保健医療サービスへのアクセスが難しい在住外国人や文化について考えた。

「わからなくてもいいんです」

三島満願芸術祭の運営ボランティアに関わり、アートの底知れない力に圧倒されています。

手芸で彫刻をつくるワークショップ

三島満願芸術祭2024の参加アーティスト3組のうちの1組である、Canis Lupus Familiaris(占部史人・三井淑香)のアート制作ワークショップに参加しました。

Canis Lupus Familiaris(占部史人・三井淑香)
三井淑香と占部史人の元夫婦によるユニット。アーティストの二人が子育てをしながら見えてきた日常に溢れている問題を作品として提示するために結成。結婚をして子供が生まれると、想像以上にたくさんの問題が湧き起こってきた。当たり前とされていることに疑問を持ちながら、より自分達らしく豊かに暮らすためのアイデアや、新しい家族のあり方を模索する。

https://note.com/manganart/n/na8ca301825c7

WSでの占部さんのお題は、「芸術祭の展示作品として作成中のワンちゃんの水車小屋に飾る彫刻をつくってもらいます。布・綿・針・糸を使って、好きなようにつくってください」でした。

ワークショップのフライヤー

「彫刻って彫るものじゃないんだ」「WSの題名とちがう?」と、心に浮かんだ声をスルーして、なにをつくるかしばし思案。このとき、自分の裁縫スキルはお構いなしで、「いつまでに、どのように」といった戦略もすっぽり抜けていました。なみ縫いとボタン付けができるから大丈夫だろう、と…。

思い通りにすすまない…

人型にサスペンダーなどの飾りをたくさん身につけた彫刻のイメージが浮かび、誰よりもはやく作業に着手したのに、WS終了間際になっても土台の人型すらできずにいました。

おしゃべりも途中でやめ、黙々と作業しているのに、、、
なぜこんなに進まないのか?
みんなより大きいサイズにしたから?布が固いから?針が長すぎるから?

<結論>裁縫の知識がないことに気づかず、理想のイメージだけを抱えて、ゴールを考えずノープランではじめていたから。己のスキルを過信していたから。

次々と彫刻を完成させていく参加者との会話の中で、使える材料と時間、自分の裁縫スキルを考慮した計画でなかったことに気づいたのでした。
仕事だったら当たり前のことなのに…。

でも、知らないことも、できないことも笑ってよしとしてくれるワークショップは楽しいひとときでした。誰もなにも強要しない、されない、それぞれが好きなように動きながら時間を共有する心地よさに、アートのちからを感じました。


知らないことに気づかないという【気づき】

誰よりもはやく彫刻を完成させた方の作品をみることで、縫い方がまったく違うことに気づきました。「それってどうやるの?」と聞いたら、丁寧に教えてくれ、あっという間に人型完成。
その方は元手芸部部長の手芸のプロでした!

みよう見まね縫いの右腕。手芸のプロが見て一言「こりゃ時間かかるわけだ」
最終形態『ブランケットステッチ』。この技で一気に仕上げまで進みました。
最小資源で、最短の時間で完成!下手なりに大満足。


知らないことにすら気づけない、ってこういうことか!
無駄な動き(縫い方)をしていても、知識がないので気づかないんです。

知識がなくても、ないことに気づくことができて、知識とスキルがある人がそばにいて、その人に聞くことができて、その人が応えてくれればなんとかなります。
でも、知識がないことに気づかず、周囲に知識とスキルがある人がいない場合、いつまでもあの不毛な作業を繰り返すのかもしれません。

知らないことに気づけて、すぐに相談できる環境は案外少ない

飛躍し過ぎかもしれませんが、この気づきは、保健医療サービスへのアクセスが難しい在住外国人に重なると考えました。
在住外国人は、健康習慣や医療の考え方が異なり、母国と日本の医療体制も異なるので、日本の保健医療サービスやその受け方を知らず、周囲に知っている人がいなければ、そのことに気づくことができないかもしれません。
母国と日本の違いを知り、日本の医療体制やサービスの利用方法を知り、分からないことを周囲の人に聞く(相談する)ことができ、その人が応えてくれれば解決できますが、語学に障壁がある場合、そのコミュニケーションが難しい。
相談された人が置かれた環境も影響します。


頭頂部から反時計回りに、なみ縫い→みよう見まね縫い→ブランケットステッチへと進化したプロセス


アートを介して、文化をつくる活動を考える

アートに長年関わってきた人から、「芸術は文化をつくる」とよく聞きます。
文化とは具体的にどういうことなのか調べてみました。
文化庁のwebsiteでは、こんなふうに書かれていました。

「文化」は,最も広くとらえると,人間が自然とのかかわりや風土の中で生まれ育ち身に付けていく立ち居振る舞いや,衣食住をはじめとした暮らし,生活様式,価値観など,人間と人間の生活にかかわることの総体を意味します

文化庁websiteより。https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/sokai/sokai_2/shakaikochiku_toshin/


「文化」≒「社会規範」でしょうか。
芸術は文化を形づくる重要な要素のひとつ。アートが個人にも社会にも大きな影響を与えると感じていた理由を自分なりに言語化できた気がします。

みんなの外国人ネットワーク(MINNA)の活動で『文化』という言葉をつかうとき、『母国と移住国との文化的な違いが健康に与える影響』など、文化の影響ばかり考えていました。
保健医療サービスへのアクセスが難しいことを説明する時も、『文化の違いを理解して、乗り越えよう』という説明だけで、『その文化(≒規範)を誰とどのようにつくるのか』まで意識できていなかったように思います。
ここを意識して、深みのある活動につなげたいです。

完成品。自分でつくったという事実と、あのときの楽しい時間がよみがえり、親しみがわきます。


▼三島満願芸術祭2024

静岡県三島市内の複数の会場にて、2024年11月2日~12月1日の毎週末(金・土・日・祝/10:00~17:00)の一ヵ月開催する芸術祭です。
会期中は、ATAMI ART GRANT(熱海)、かけがわ茶エンナーレ(掛川)、富士の山ビエンナーレなどの芸術祭も開催されます。
芸術の秋、イベントが多くなりますが、静岡めぐりはいかがでしょうか。

当日ボランティアの方も大募集しています!


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