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「まとまらない」を愛おしんでいいんだ

「まとめなくていい」
「一端を示せたらいい」
「まとまらないを愛おしむ」
そんなこと考えたこともなかった…。

ライターとして、インタビュー記事を書く機会が少しずつ増え、
「誰かの人生や伝えたいことを言葉に換える」作業に悩んでいました。
とくに、どう起承転結を「まとめる」か。

そんな2024年の年末、旅行先の茨城県の宿で、この本に出会いました。
それはそれは、衝撃を受けたのでした(冒頭)。

「まとまらない言葉を生きる」/荒井裕樹〈あらい・ゆうき〉著


この社会に存在する数々の問題について『 言葉と言う視点』 から考えることを専門とする筆者(文学者)が、「言葉の壊れ」について考え、それに抗うための本。

■内容 <柏書房website紹介文より>
偉い人が「責任」逃れをするために、
「敵」を作り上げて憂さを晴らすために、
誰かを「黙らせる」ために言葉が使われるようになったこの世界で、
凝り固まった価値観を解きほぐし、
肺の奥まで呼吸しやすくしてくれるような……
そんな「言葉」との出会いは、まだ可能だろうか?


本書は、マイノリティの自己表現をテーマに研究を続ける文学者が、
いま生きづらさを感じているあなたに、そして自らに向けて綴った、
18のエッセイである。


障害者運動や反差別闘争の歴史の中で培われてきた
「一言にまとまらない魅力をもった言葉たち」と
「発言者たちの人生」をひとつひとつ紹介していくことを通して、
この社会で今、何が壊されつつあるのか、
人間としての尊厳をどのように守っていけるのかを考えていく。

柏書房websiteより.https://www.kashiwashobo.co.jp/book/9784760153497


18のエッセイに出てくる著名人の言葉と筆者が紡ぐ心に降り積もる言葉に、心がぎゅっと掴まれたような気持ちになりました。

たとえば、

言葉には「降り積もる」という性質がある。放たれた言葉は、個人の中にも、社会の中にも見積もる。そうした言葉の蓄積が、僕たちの価値観の基を作っていく。

荒井裕樹 著「まとまらない言葉を生きる」p26

「この社会に『 言えば言うほど息苦しくなる言葉』 が増えてきた」 と指摘した。たくさん「ある言葉」と言うのは目立つから、すぐに気がつきやすい。対して、「ない」言葉は見つけにくい。そもそも「ない」のだから、気がつきにくいのは当たり前だ。

荒井裕樹 著「まとまらない言葉を生きる」p42


前職から参画しているみんなの外国人ネットワーク(MINNA)では、「生きづらさを抱える人の背景にある社会構造は見ようとしなければ見えない」と声かけあってました。

そっか、同じことが言葉にもあるのか…
話さなければ、書こうとしなければ「ない」ことになってしまうのか…。

当たり障りのない言葉を探してまとめていた自分にぞっとしました。

ライターになる前は、指定の文字数に抑えるために言葉を削ぎ落として、要約、要約、要約の日々…。
いつしか心からの言葉が少なくなっていました。

この本に出会えたおかげで、1年を振り返ることができ、
新年の抱負を考えました。
2025年は「言葉に向き合い表現の幅を広げる」

意識的に言葉に向き合い、誰かのなにかにつながることを、企画・取材し、書く。
きれいにまとめようとせず、読んだ人がクリアなイメージをもてるエピソードを書き、一端を示す。

言葉について深掘りしたい方に読んでほしい本だと思いました。

この本との出会いは、
茨城県 東茨城郡大洗町の「里海邸 金波楼本邸」の本棚でした。
本棚が置かれたラウンジには暖炉があり、宿泊者が想い想いに過ごしていました。
邸内には海をぼんやり眺めて過ごす場所が、沢山あります。
部屋からは、海から顔を出す朝日がみれます。
心が満たされる宿に、また行きたいです。

里海邸の部屋から見えた朝日。神々しかった。



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