
映画「人間革命」が配信中 前半はなかなかみごたえがある
雑誌「宗教問題」の編集者であり、優れた池田大作論『池田大作と創価学会 カリスマ亡き後の巨大宗教のゆくえ』 (文春新書 1450) を書かれた小川寛大氏のXから。
実はこの映画、知人の尽力により「非公開秘密上映会」(というほどのもんではないが)で観ました。
私の率直な感想を言えば、映画だから事実とは違ってもそれはそれで構わない。ただとにかく「お金を湯水のようにかけて有名俳優をバンバン出してる」ことと「丹波哲郎の熱演と伊福部の音楽でとにかく押し切ってしまう映画」でした。
映画としてちゃんと面白い、と言えるのは正直前半部ですね。若き日の牧口常三郎と戸田城聖のドラマは、戦争中の逮捕と投獄を含め見ごたえはありますよ。戦前に創価学会が弾圧されたのは別に反戦を唱えたからじゃなくて、信仰の立場から、神社のお札を祀ることを拒否したからですが、そこも一応ちゃんと描かれていました。
私は良し悪しは別として、「日蓮原理主義」に立てばそれは一つの信仰の立場だろうとは思います。エホバの証人だって戦争には確か反対していたはず。逆に言えば、反戦だったから、弾圧されていたからというだけで、その思想まで正しいわけではない。
そして獄中での戸田(丹波)の、もう狂気が乗り移ったような苦悩(かなり怖い)とそこからの覚醒(ちゃんと牢獄の窓から朝日が昇ってそれを祝福、大げさすぎて言葉を失う)など、これぞ丹波哲郎としか言いようがない(若き日の丹波が学生服を着てるシーンは違和感そのものだったが、まあワンシーンなので許す)。
しかし後半部はひたすら創価学会の教義の説明となり、これは信仰者には意義深いのだけど、非信者には受け入れにくいものとなる。しかしここでもすごいのは丹波の演技と演説で、ただひたすら教義を熱弁、かつユーモアを交えて説き、かつ人間的にも度量のある親分肌のところを見せます。この丹波の姿は、おそらく学会員にとっての理想の指導者像であり、池田大作はこの作品を見て、とても丹波には及ばないと嫉妬しただろうなあなどと余計なことを考えさせます。
ぜひご覧に・・・とまでおすすめはしませんが、丹波哲郎ファンは見てもいい作品かも。私は宗教団体がある種の宣伝映画を作ってもそれは全然かまわないと思いますよ。それはキリストの生涯を描く映画が素晴らしければ信仰のあるなしを越えて感動するのと同じだから。でも、やはり「教義の説明」映画になってしまったら、それは信者にしか受け入れられない作品になる。そこが難しいところだし、それを演技の力で無理やり乗り越えて見せてしまう、というのはやはり丹波哲郎という人のすごさでした
いいなと思ったら応援しよう!
