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低酸素とアンチエイジング

本記事は2008年3月8日に日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです

チョモランマ山頂の標高8848㍍では20歳の青年でも90歳の体力になるという。この値は、人間の有酸素能力が標高と共に低下する値を体力年齢に置き換えたときに算出された推定体力年齢である。(鹿屋体育大学・登山運動生理学・山本正義)

この考えを当てはめると、2003年に三浦雄一郎が70歳でチョモランマ山頂に立った時の推定体力年齢は143歳。この推定体力年齢は122歳の世界最高齢で生涯を全うしたフランスのジャンヌ・カルマンさんの実年齢をはるかに超える状態で登山活動をしていたことを意味する。

1970年代前半まで、チョモランマの頂上は無酸素での登頂は不可能とされていた。しかし、1978年にラインホルト・メスナー氏が無酸素登頂に成功すると、その後も十数人が山頂に無酸素状態で滞在して帰ってきた。

なぜ彼らがチョモランマの頂上に無酸素状態で到達できたかということはその後の研究によって解明された。例えば、チョモランマの頂上近くでは、肺が吐き切る二酸化炭素の量が増え、より多く酸素を肺に取り入れやすくなる。また高度順化が進むにつれ、体内の赤血球が増えより多くの酸素を運搬できるようになるといった生理学的変化が認められている。しかしこれらの高所で観察される変化が「なぜ」起きるのかということに関してはほとんど研究されていない。

今回のチョモランマ遠征プロジェクトでは、低酸素環境でどのような変化が起きているかを遺伝子レベルで解析することを目指している。

(株)ミウラ・ドルフィンズと(株)アンチエイジングサイエンスは順天堂大学、加齢制御研究の第一人者である白澤卓二教授のもと、(株)ミウラ・ドルフィンズの低酸素室において、4000㍍の高所をシュミレートした酸素濃度(12.4%)内において、アジレント社のDNAチップを使用し、低酸素室滞在前後にどのような遺伝子が発現増強、あるいは発現抑制するのかという研究を開始した。

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