クライミングが上達した要因を分析してみる
クライミングには複雑な要素が組み合わさっています。難しい岩を登ることや、グレードが高い課題を登るためにトレーニングをしている方は多いですが、「強くなった」「登れるようになった」とき、その要因について考えたことはあるでしょうか?もしその要因がわかれば、次の目標が見つかった時に、効率の良いトレーニングプランを考えることができると思います。
今回の内容は、「クライミング未経験者にクライミングのトレーニングを行わせた時、パフォーマンスアップにつながった要因は何だろう?」という内容です。もとの論文は以下URLからご覧ください。(前大純朗ほか、スポーツパフォーマンス研究.2012)
トレーニング対象者
クライミング未経験の男子大学生7名
トレーニング内容
・クライミングウォールで1周30手となる周回ルートを作成。疲れてホールドが掴めなくなり、落下するまでひたすら周回する、という内容。疲労ではなく、足が滑ったなどの理由で落下した場合はすぐに再開。
・上記の内容を1回として、1週間に2回、これを3週間継続。合計6回のトレーニングとした。
簡単なトレーニング方法ではなく、けっこうきつい内容だということがわかります。これを行った結果が下のグラフです。トレーニングを重ねるにつれて、どんどん上達していることがわかりますね。
そして大事なのが、上達した理由です。まずは一つ目。認知能力のアップです。クライミング能力を左右する要因に「オブザベーション能力」といって、ホールドの位置を把握して、どのような動作で移動していくのかを前もって判断する能力があります。これがアップすると、スムーズに動くことができます。初心者でも、繰り返し同じルートをトレーニングすることで、オブザベーション能力が上がったという結果です。
そして二つ目。筋持久力のアップです。下の図を見ると、握力や保持力などの「筋力」は増加していませんが、保持時間が増加しています。これは筋肉の持久力がアップしたことを示しています。
認知能力と筋持久力が向上したことが、クライミングの能力が上がった要因だということがわかりました。しかし、気をつけなくてはならないことがあります。筋持久力は増加しましたが、筋力はまだまだ未発達です。そのため、急激にグレードを上げると、怪我につながる可能性がありますね。
時にはがむしゃらに、とか、無心に・・・ということも必要ですが。成功や失敗体験から次のステップを学ぶこと、この繰り返しが成長につながる近道だと思っています。皆様のトレーニングの参考になると嬉しいです。
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