キミが存在しないラブコメ 第47話

どうして僕の部屋に、ふたりがいることになってしまったんだ……?

布佐良月子と綿里未雪。

本来なら決して会うことのなかったはずのふたりが、なんの因果か決して、ふたりが同時に入ることのない男部屋にいる。

こんなことがあってたまるか。

だけど、こんなことが起こってしまっている。

綿里さんは普通の精神状態に思えるが、月子は少し眉間に、しわを寄せているように感じられる。

ギスギスした空気が目の前にある。

僕は、どうしたらいいのか、わからない。

こんな……女性が男性の部屋に入って、やることはひとつなんて考える心が汚らしい僕のために争いが、起こるのか……?

「神憑くんの部屋って、ちょっと汚いんだねえ……」

「ごめん、人が入ることを予定していなかったから……散らかってて申し訳ない」

「掃除してあげようか?」

「いや、あまり触ってほしくないかな……僕、意外と神経質だし」

「そかそか」

「あ、でも、少し片づけるよ。なんか悪いし。……そうだ。お茶でも持ってくるよ」

(《想形監視イマジナリーサーベイランス》)

「じゃあ、ちょっと待ってて」

「うん」

想形監視イマジナリーサーベイランス》は仮想のカメラによる監視をおこなうことができる能力である。

今から綿里さんと月子の間でおこなわれるであろう会話を監視する。

仮想の映像による判断となるが、自分の部屋なので、なんとなく感覚はつかめる。

『ところで布佐良さん……神憑くんとは、どこまで進んでいるのですか?』

『進んでいるっていうのは、どういうことですか?』

『関係性のことについてだよ』

綿里さんが月子を攻めの姿勢で話していく。

『友達なのか、恋人なのか、どっち?』

『……今は友達だけど』

『友達だけど?』

『そんなことを聞いて、どうするのですか?』

『どうもしない。彼のことが好きなのなら後悔することになると思う。だから今のうちに言っておきたいことはないのかなって』

『それは綿里さんが武尊に告白するという意味ですか?』

『どうかな……ただ、わたしは今、話さなきゃいけないことを言えなくて後悔することはないか、と言っているだけ』

『それは、どういう意図が含まれている質問なのですか?』

『もし言えないのであれば、彼に言ってあげようか?』

『わたしの心なんて読めないでしょうに』

『うーん……読めるとしたら、どうするの?』

『心が読める超能力でも持っていると言いたいのですか?』

『それに近い能力はあるかもね』

『……なにが言いたいんです?』

『おっと、彼が来る足音が聞こえてきた。ここまでにしておこう』

――僕は部屋に入る。

「……なにを話していたの?」

「ちょっと与太話をね。ね、布佐良さん?」

「うーん……うん」

話に結論は、つかなかったようだ。

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