キミが存在しないラブコメ 第33話

いつの間にか、別の場所に移動していた。

そうか、ここが《機関》の中枢部……。

だが、まだ未発達な形だけの組織という印象を受けた。

「神憑先輩が今、思っていることを当ててみせましょうか?」

「まだ《影》に対抗するだけの力がないってことを当てようとしていたのか?」

「あたしが言おうと思ってたのに……まあ、いいです。《機関》は、ご覧の通り、まだ形ができ始めたばかりです」

「それで僕は、どうしたらいいんだ? なにかできることはないのか?」

「あります! ついてきてください!」

萌瑠に《機関》の内部を案内してもらう。

そして、ある部屋にあるヘッドギアを僕に見せる萌瑠。

「この装置を使って、神憑先輩の脳をスキャニングします!」

「そのスキャニングには、なんの意味があるんだ?」

「神憑先輩の脳をスキャニングすることで、神憑先輩の脳の情報をデータ化して、さらに《オーバーライト上書き技術》で神憑先輩に《アビリティ能力》を与えます!」

「オーバーライト? アビリティ?」

「では、早速やっていきましょう! このヘッドギアを被ってください!」

僕は彼女に従うまま、ヘッドギアを被って、柔らかい椅子に座った。

すると、その装置は起動して、僕の脳をスキャニングしていることが脳の感覚でわかった。

「スキャニングは完了しました! データ化も成功です! あとは《アビリティ能力》の付与をおこないます!」

「そのアビリティってのは、どうやって決まるんだ?」

「《アビリティ能力》はスキャニングした脳の所有者のデータから合致している特性をアップロードして、その所有者の異能にします!」

「へえ、なら、合致する《アビリティ能力》を選んでくれ、ヘッドギア!」

ヘッドギア、というより僕の脳から波を出す。

その情報をもとに適性を導き出す。

「《アビリティ能力》の結果が出ました! 神憑先輩の《アビリティ能力》は《習合しゅうごう》です!」

「…………と、いうと?」

「様々な宗教の神々や教義などが合体したり融合する能力みたいですね」

「ちょっと意味が、わからないよ」

「なら、能力を操るための練習でもしてみましょうか。神憑先輩、あたしと戦ってください」

「戦って、どうするんだ?」

「《影》と戦うためには、それなりの経験が必要です。ちょっとだけ付き合ってくださいね。今から移動する仮想空間での時間の流れは精神と時の部屋と同義ですから、ちょっと戦うくらいなら、いくらでもできますよ」

「そっか……じゃあ、やってみるか」

本当は、すぐにでも《影》に復讐したいのだけど……やるしかないよな。

どうやったら、すべての《影》が絶滅するか、わからないし、物は試しだ……やってみよう。

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