キミが存在しないラブコメ 第68話
*
「新たなる世界を創り上げる、とは?」
ヴィジョンが僕に疑問を投げかける。
「こういうことだよ! オオトシ! ヒジリ! ミトシ! ワカトシ! クラミツハ! クニノトコタチ! ククリヒメ!」
時間と空間の神々を自身に憑依させて習合させる。
「ヒルコ!」
ヒルコによる神格吸収をおこない、さらに神格放出をおこなうことで世界のバランスを整える。
すべての時間と空間を掌握し、自身の妄想のなかに存在する架空の十束剣である永遠剣を現実顕現する。
「世界掌握! すべての時空をこの手に! 全世界改変プログラム実行!」
永遠剣を持ち、時空を十字に切り裂く。
「すべての時代の生きとし生けるものを、この世界に顕現させる!」
「それが名も無き太陽神の生まれ変わりである人間のやることか!」
「ヴィジョンと月子の存在を完全に分割させる! そうすれば、月子が無自覚に襲うこともなくなる!」
「キミがしていることは、この世界を混乱に導く! こんなことをしたら日の本を歩けないぞ!」
「そうかもしれない。だけど、もう手段は選べない。《影》によって亡くなった人たちを蘇らせる! そして《影》をこの世界に存在する生物にして敵意をなくさせる!」
僕は願う。
「永遠剣よ、この世界を改変しろ!」
すべてが僕の望む世界になる。
世界が変わり始める。
「ここまでして世界を変えたいか!」
「そうしなきゃ、月子は人殺しなんか、しないんだよ!」
「ツクヨミ!」
ヴィジョンは夜を顕現しようとする。
だけど。
「スサノオ!」
友代が自身のなかにいるスサノオを顕現させる。
どこでスサノオを顕現できるようになったかはわからないが、海と嵐と農耕の神格を持つスサノオなら……でも、まだだ。
僕のなかに存在する太陽神が顕現される。
「アマテラス!」
日本神話の最高神が現れた。
その姿は桜舞に似ていた。
なぜだろう……彼女は、この事情に無関係なのに……いや、桜舞であるはずないが。
「ちょうどいい! その三貴子も吸収してやる!」
世界の再構築をおこなうための神格吸収を実行する。
ビッグバンから逆流し、世界の再起動をおこなっていく。
「すべてが生まれ変わる……自動改変!」
これで、もう……大丈夫だ。
誰も死なない世界へと変化する。
「神格放出!」
僕は無能力の人間に戻っていった。
空間が徐々に形を失っていき、現実の世界へと帰還していく。
これが、新たなる世界の始まりとなるはずだから。
*
気がついたら、僕は閉鎖空間にいた。
僕は今、伝播大学附属病院の施錠された、なにもない部屋に閉じ込められていた。