キミが存在しないラブコメ 第49話
*
――第一の刺客……?
もしかして綿里さんが《第二の組織》の最初の刺客なのか?
「でも、なんで綿里さんなんだよ……?」
「仕方なかったのです。そういう運命だったのですから」
「運命って?」
「わたしが《機関》に所属して神憑くんと戦う運命です」
どうして戦わなくてはいけないんだ……。
「わたしの能力は《氷雪》です。つまり、フィールドを強制的に氷漬けにすることが可能なのです」
術を唱える綿里さん。
「氷の針」
自動追尾する氷の術が放たれる。
「ヒルコ!」
追尾する氷の針を吸収する。
「もう、これで終わりにしてやる」
《習合》能力を使用して神を呼び出す。
「カグツチ」
迦具土と呼ばれる神は、神産みにおいてイザナギとイザナミとの間に生まれた神であるが、火の神であったために、出産時にイザナミの陰部に火傷ができたことで、イザナミは死んでしまう。そのあとに怒ったイザナギに天之尾羽張で首を落とされ殺されたという。
「氷の季節を、終わらせろ」
神の炎が氷を蒸発させる。
「絶対零度」
再び氷の季節になろうとするが。
「カグツチ」
再び氷を蒸発させる。
その繰り返しによる攻防が時間が止まった空間でおこなわれている。
「猛吹雪! 凍りつく槍騎兵! 氷の針!」
「ヒルコ」
すべての氷の術を吸収する。
「もう、なにをしても吸収することで終わりにできる。無駄だよ」
「わたしの《氷雪》能力が……」
決意に満ちた目で……。
「なら、最後の技を――」
氷雪系、最強の技を放とうとする。
「氷精霊」
瞬間的にフィールドが凍りつく。
絶対零度を超える寒さを感じる。
「カグツチ!」
カグツチとセルシウス――火の神と氷の精霊の戦いが起こっている。
その戦いは止まることを知らない。
「氷を熱しても、また氷が出てくる……」
「しつこいくらいに炎が燃え上がっていますね……」
「決着がつきそうにない」
「どう決着をつければいいのでしょうか」
「知らないよ……っていうか、どうして僕たちは戦っているんだ」
「あなたが《機関》の裏切り者だからですよ」
《影》の幽霊である友代を庇っているからか。
「ですが、正直、戦いたくはなかった……こんな形で再会するなんて、ね」
「なら、やめようよ……こんな戦いをやめて協力しあえないだろうか?」
「無理ですよ。《機関》の命令は絶対なのです」
永遠に続くであろう時間は止まることを知らない。
だけど、その時間に終わりが訪れる。
「ツクヨミ」
《彼女》の台詞とともに月の神が現れようとしていた。
月のように輝く髪を持つ《彼女》の声により、戦況は変わり始めるのだった――。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?