キミが存在しないラブコメ 第51話

夏の季節になった。

綿里さんが消失して、ちょっとの時間が流れて、もう存在していない彼女の捜索にあきらめの色が出るようになり始めたころに、また、あの新聞部の人が一年A組の教室に訪ねてきた。

矢林御琴だ。

記事にはしないという名目らしいのだが、なにか疑問に思ったことがあるらしい。

「筬屋真海奈さんといい、綿里未雪さんといい、神憑さんの周囲の人物が亡くなったり、行方不明になったり、どうして、こうも神憑さんとつながりのある人物がいなくなるのでしょうか?」

「……僕に心当たりがあるとでも?」

「少しは原因があるのではないですか?」

心当たりがある……か。

心の内をさらすわけにもいかない。

でも、《第三の組織》があるということは別に言ってもいいのではないか?

《第一の組織》と《第二の組織》が存在していることは決して漏らしてはいけないらしいのだが、別に《第三の組織》を秘匿する理由はない。

だって《第三の組織》を運営しているのは僕だから。

いっそ、もう――。

「矢林先輩、僕が知っていることを知りたいですか?」

「ええ、まあ……はい。そのつもりで内緒の取材をおこなっているのですから、知りたいです」

「じゃあ、来てください」

「えっ、どこに?」

(《想形門イマジナリーゲート》)

心のなかで、その言葉を発したら、矢林先輩と僕は仮想の空間へと転移していく。

「――えっ、えっ、えっー!?」

「ここが僕の運営する《第三の組織》です」

「第三の、組織……?」

「事情を説明します。なぜ筬屋真海奈が殺されたのか? なぜ綿里未雪が消えたのか? ……を、順に話していきます」

夏の日照りを感じない《想形空間イマジナリースペース》で、僕は今までのことを話した。

真海奈が、なぜ自殺をしたことになったのか?

《影》という存在について。

情報を管理し、隠蔽する《機関》のひとつである《第一の組織》について。

火花萌瑠が所属している《第二の組織》について。

良い《影》の幽霊である心野友代について。

友代を守るために《第三の組織》を作ったことについて。

綿里さんが実は《第二の組織》の第一の刺客であったことについて。

綿里さんが《謎の存在》によって存在を消されたことについて。

思い出せることは全部、話した。

そうしなければ、公にできないであろう、この情報を、この世界に伝えることができないと思ったから。

「なるほど……現実には信じがたいことですが、こんなことが現実にあるとは……」

「……思えないかもしれませんが、すべて事実です」

「それを話してくれたということは私に、なにかしてほしいことがあるのですか?」

「ええ」

結論を言おう。

「矢林先輩には僕の戦いに関する協力をしてほしいのです」

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