仏像の判別方法〜ジャンル編〜
はじめに
私は、中学生の頃に修学旅行で京都・奈良へ行き、そこで教科書に出てくる仏像たちと出会って以来、その魅力に取り憑かれてしまいました。仏像が好きな人には、造りや表情を重視する人もいますが、私は仏像の種類を見分けて、更に他の同種の仏像とその特徴などを分析していくことを好んでいます。
もちろんそもそもの信仰についても学習しましたが、仏像について学んだ際に使った本を2冊紹介したいと思います。
・佐和隆研(1993年)『仏像図典 増補版』吉川弘文館。
・芦田正次郎(1988年)『仏像見わけ方事典 はじめて出会う仏さま』北辰堂。
それぞれ古い本で、初心者向けではないかもしれませんが、良書なので、深い知識を身に付けたい人にはおすすめです。日本の仏像は、「儀軌(ぎき)」と呼ばれる像容の基準があるため、勉強すれば誰でも判別出来るようになりますし、これらの本を持っていて損はないと思います。
前置きが長くなりましたが、本稿では仏像の大まかな種類を最低限見分けられるようになれるよう「如来」「菩薩」「明王」「天部」それぞれの特徴について説明していきたいと思います。
如来の特徴
如来というのは、お釈迦様が悟りを開いた後の姿なので、衲衣(のうえ)を身体に巻いただけで、装身具を身に付けてない仏像を指します。「螺髪(らほつ)」と呼ばれるパンチパーマのようなヘアースタイルも特徴の一つなので、如来は比較的すぐ見分けられるかと思います。
「Wikipedia 薬師如来」(https://ja.wikipedia.org/wiki/薬師如来)より転載。
これは余談ですが、写真の仏像は左手に薬の壺を持ってますよね?これを見るだけで、平安以降に作られた薬師如来像なんだなと分かります。奈良時代に作られた薬師如来は薬壺(やっこ)を持っていないので、機会があればぜひチェックしてみてください。
菩薩の特徴
如来が悟りを開いた後で装身具を付けていないなら、菩薩は悟りを開く前なのでガッツリ装身具を付けております。釈迦はもともと王族の出ということもあり、ラグジュアリーな仕様になってるんですね。仏像鑑賞が趣味の私からすると、衣服で見分けがつきやすい仕様になっているのはありがたい限りです。
「Wikipedia 観音菩薩」(https://ja.wikipedia.org/wiki/観音菩薩)より転載。
千手観音像は色々持ち過ぎなところがありますが、首から胸にかけても装飾が増えていて、如来とは明らかに違うことがわかると思います。装飾1つ1つにももちろん意味はありますが、ジャンルを見分ける上ではこれくらいの理解で十分です。
明王の特徴
仏教由来ではなく、ヒンドゥー教の世界からやってきました。とにかくキレてます。約20種類ほど明王がいるのですが、穏やかな顔をしているのは孔雀明王くらいでしょうか。明王は「悪を制して正しい道を進めるため」に怒りの姿で描かれているのです。菩薩と同様に装身具は身に付けておりますが、怒っているだけあってほとんどが後背(仏像の背中についてるやつ)が「火焔後背(かえんこうはい)」だったり、武器を所持していたりするのが特徴です。
「Wikipedia 不動明王」(https://ja.wikipedia.org/wiki/不動明王)より転載。
人に対して怒ったりできないタイプの私ですが、私の代わりに怒ってくれる人がいるから成り立っているんだなと思いながら、明王的存在のありがたみを感じる今日この頃です。笑
天部の特徴
天部は正直どこまでを天部に含めるか曖昧ですが、七福神とかまで含めて考えることもあるので、これといった共通の特徴があるわけではありません。プログラマーチックに言えば、ELSE(それ以外)に当たる種類だと思っています。ただし、よく見るところでいうと、四天王像のように甲冑を着ていたり、吉祥天象のように天女のようなものもあったり、これまでの3種類とは明らかに違いがある像容となっております。
「Wikipedia 毘沙門天」(https://ja.wikipedia.org/wiki/毘沙門天)より転載。
仏教の守護神だけあって、100回戦って100回負ける自信があります。毘沙門天といえば、軍神と呼ばれた上杉謙信が信奉していたことでも有名ですからね。
おわりに
仏像のジャンルの見わけ方について、最低限の知識だけでぱっと見わかるレベルになっていただければ、本稿を書いた甲斐があったなと思えるので、手始めに参考にしていただけると幸いです。そのうち、各仏像についての見わけ方についても投稿できればと考えております。