非営利目的の個人的な愛欲

星の数ほどの十把一絡げのモデルを撮影し続けているカメラマンに恋をしてしまった無名のモデルは、どうやって気持ちを伝えることが一番正しいのだろうか?


彼は常に警戒をしている。

枕営業を仕掛けてくる女の子が常にいる。

それを警戒しているという意思を全面に表示している。


「あなたが撮るあたしが好きだ。あなたが演出するあたしが好きだ。あたしを最も美しく優しい姿を引き出してくるあなたが好きだ」


「あたしは売れてないモデルだ。無名なモデルだ。売れたいという気持ちがあるのは事実だけど、そんなものは自分で努力するべき事柄だ。」


あたしにはわからない。あたしはただあなたと親密になりたい。

官能的でロマンティックな関係になりたい。

もっと言ってしまえばただ純粋にあなたとセックスがしたい。耽美で倒錯的で魂を溶け合わせるほどに深い快楽に浸るようなセックスがしたい。

世界とあたしの境界線が消えて、あなたとあたし以外の何一つが存在しなくなった世界で、肌も呼吸も混じり合いたいだけだ。


一度でも、何度でもいい。ただその瞬間を一緒に味わいたい。


それだけができれば、他に望むものもない。純度の高い欲望が、あたしを突き動かしていた。

どうすれば、あたしは営業ではなくただ親密になりたいだけだと、ただの純粋に個人的な欲望が、あたしの奥を渦巻いていただけだということを彼に伝えることが出来たのだろうか?





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?