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ひとりじゃないよ

スクールカウンセラーという仕事に就く以前から、子どもたちの涙にはたくさん出逢ってきた。


教育相談という、教員と子どもの1on1の面談では「先生、実はこれ、誰にも言ったことないんだけど…」と幼少期からのとんでもなく大きな話を打ち明けてくれる子も何人もいた。


初めてだからこそ、ちっともまとまらない話を、タガが外れて自分でもコントロール不能な溢れ方をしている話を、聞いて聞いて聞いて。

泣き叫ぶ姿をじっと見て、止まらない涙が止まるのをずっと待って。

話そうと思ってくれてありがと。話すの怖かったでしょ。って、そこから出てくる、今まで誰にどんな風に話そうとして、どんな風に心が折れたのかを、最後まで聞いて。



私はいつも必死だった。

彼女たち(思い返すと女の子ばっかり)がありったけの勇気をもって伝えてくれた「苦しい」「助けて」を裏切るわけにはいかない。

彼女たちには、助けを求めることを覚えてほしかったから。そのためには「助けを求めたら受け止めてもらえた」という経験が必要不可欠だから。


よくいろんな場面で、大人が子どもに「困ったことがあったら声をかけてね」と言うけれど、私ね、あれは宣言だと思ってる。

「助けを求めてくれた時には、私は必ず受け止めるよ」という宣言。

だから、どんな状態でも最後まで聞きたいと思ってたし、聞いたからには、あらゆる手を尽くしたいと思ってた。


ありったけの勇気に、
ありったけのリソースで応えたかった。



当時、彼女たちが打ち明けてくれたのは、不思議とほとんどが"家"の話だった。


私がじっと話を聞くことができたのは、聞きたいと思えたのは、家族が機能不全に陥っていることの苦しさがよく分かったことも関係していたのかもしれない。

彼女たちも、打ち明ける相手はよく選んでいたということなんだろうと思う。


安心して居られる場所がどこにもない辛さも
自分の存在を認めてくれる人がいない痛みも

"生活"どころではなく"命"を握られる怖さも
それでも"家に帰るべき"と言われることへの憤りも

家庭のことは… と誰も助けてくれない悲しさも
気づきもしない周囲への怒りも

自分のことのように、よく分かった。



生まれた時から残念な人生確定ですよと言わんばかりの、世間の「家庭が大事」論に傷ついて

抗っても抗っても抜け出せない現実に絶望して

私ではない"何か"に翻弄され続けることに慣れていって

どんどん麻痺していく感覚も、よく分かった。



だからこそ、話そうと思ってくれた彼女たちの想いには、どうやってでも応えたかった。

まだ諦めきっていないうちに
まだ手が届くうちに
助けを求めることの大切さを覚えてほしかった。


そしてその気持ちは、
職業を変えた今でも変わらない。





あれからもう何年も経つのだけれど、最近ふと、彼女たちの顔が浮かびます。

今あなたたちに伝えたいことは、あの頃と同じ。


あなたが希望があると信じる限り、希望はあるよ。
あなたがひとりじゃないと信じる限り、あなたはひとりじゃないよ。

私は、あなたが好きだよ。




人より早い時期に、
人よりたくさん涙を流したあなたたちが、
幸せな毎日を過ごしてくれていますように。
「助けて」が上手に言えていますように。

希望をもって、生きてくれていますように。



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パーソナルコーチ│スクールカウンセラー
松本 亜衣
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