ふうりん

ジィジィギィと虫や蛙の鳴き声、自然の音がする方を私は屋根の下でなんとなく見ていた。
ふと「ちりん」と頭の上から音がした。
気になり音の鳴る方を見ると最初はクラゲのお化けが頭の上に浮いていると思ってびっくりした。
しかし、よく見るとそれは夜の色をした綺麗なものであった。
薄蒼く、それでいてキラキラと光って見えるそれから「ちりん」と綺麗な音がした。
素敵なものに見えた。
不思議そうに見ている私に、叔母は微笑みながら「それはね、風鈴っていうのよ。」と教えてくれた。
「ふうりん?」
「そう、風鈴。触ってみる?」
と叔母がぶら下げてあったそれを手渡してくれた。

ふうりんを握り、下の紐を揺らすとカツカツと音がなる。
しかし、どうしても私が握るとぶら下げてあった時のような「ちりん」という綺麗な音は鳴らないのであった。
「それはねぇ、丸い部分を持つと音が綺麗に鳴らないのよ。上の紐の部分を持ちなさい。」
と、また優しく叔母が教えてくれた。
言われた通りに持って見ると
「ちりん」と綺麗な音が鳴った。
私はそれが嬉しくて鳴らしていると、ふと、手を離し割ってしまった。
綺麗な夜の欠片が宙を舞うのだった。



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写真提供「れとろ」 https://note.mu/retro09

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