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文芸まんがシリーズ『三四郎』感想文

今回は『三四郎』を漫画で読んでみました、という感想文です。どうぞよろしくお願いいたします。

こちらのまんがは「ぎょうせい」から出ている「文芸まんがシリーズ」の一冊で、元・日本近代文学館理事長の小田切進さんが監修しています。

「監修のことば」が素敵だったので引用します。このシリーズの信念というべきことばです。

『「まんが」は活字や映像とならぶすぐれた表現の手段として、限りない可能性をもっています。
このシリーズは、映像(絵)と活字のそれぞれの特色を生かして、明治・大正・昭和の日本の傑出した文学作品を厳選し、「まんが」で表現したものです。
原作の文章、ストーリーの展開、心理描写なども、少年少女の読書力を伸ばすことを考え、できるだけ原作にそった内容にしてあります。
対象とする読者は、少年少女です。しかし原作の質は落としていないので、これまで近代・現代文学になじみのうすい成人の方にも、十分読むにたえる内容になっています。
このシリーズがきっかけとなり、さらに原作や、そのほかの文学作品が読まれることを願っています。』

わたしはまだ小説で『三四郎』を読んでおりません。ですからはっきりしたことは申し上げられませんが、このまんが『三四郎』にはある種の固さ、きまじめさを感じました。これまでに他の名作まんがも出版社を問わずいろいろ読みましたが、この「三四郎」には特にその固さを感じました。それはたぶん、明治時代の世相や小説の文体をできるだけ忠実に再現しようとした結果なのだと思います。「原作の質を落とさず、できるだけ原作にそった内容に」という強い意志が感じられました。


そしてここからは、個人的感想文を書いていきたいと思います。

登場人物「里見 美禰子(みねこ)」。「ストレイシープ」という名言で有名な女性です。彼女は作品内で「新しい女性」として描かれています。彼女が放った光は100年後にまで届いて、(隠れ)中二病であるわたしのこころを震わせました。

名言「ストレイシープ」名場面を二つご紹介します。興味のあるかたはぜひ、まんがをご覧になってご確認ください。しびれます。

❬ストレイシープ名場面①❭
ぬかるみにつまづく美禰子、受け止める三四郎。そしてつぶやく「ストレイシープ」。
Mr.Children「抱きしめたい」的な場面です。
ここで「ストレイシープ」とつぶやく美禰子。そんな美禰子が大好きです。

ページ左端には「ストレイシープ(迷える子)」の語注が載っています。丁寧かつ親切です。ここに、本書の真摯な姿勢を感じます。

❬ストレイシープ名場面②❭
講義ノート見開き一面に、上の空でバーッと「ストレイシープ」と書いてしまう三四郎。それを友人・佐々木与次郎に見られて苦しい言い訳をする。ほんのり中二病の薫りが漂うシーンであります。このシーン、大好きです。

ほかにも何ヵ所か「ストレイシープ」エピソードはでてくるのですが、わたしは考えました。もしかすると漱石先生は、100年前にすでに中二病の出現を予感していたのではないか。
我ながら壮大な問題提起をしてしまいました。

100年後のいまを生きるわたし。本書を読んで『三四郎』の登場人物たちと時空をこえて交信しているような、そんな感覚を覚えました。中二病持ち前の思い込みの激しさかもしれません。しかしわたしは真剣です。中二病は時空をこえるのです。たぶん。きっと。

そんなわけで、まんが『三四郎』を読みまして、漱石先生すごいぜ!という思いを新たにしたのでありました。そして、すばらしい漫画でした。

それでは最後に。
漱石先生とこの漫画に対し、リスペクトを込めて。

ご唱和ください
1、2、3、ストレイシープ!
🐑🐑🐑🐑🐑🐑🐑💨💨💨

お読みいただきありがとうございました🙇

『三四郎』
夏目漱石原作
監修 小田切進
解説 浅野洋
作画 大和正樹
ぎょうせい
2015年4月1日初版発行



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