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【番外編】みうが見るFCバルセロナ

これは20年くらい前のみう本人の映像である。

アイドルはロナウジーニョだった。バルセロナが来日した際にはスタジアムまで足を運び、サッカーショップでは、バルセロナのユニフォームを買ってもらうまで泣きじゃくった。

その後、クリスティアーノ・ロナウドとカカに目移りし2009年から今に至るまでレアル・マドリーを応援している。15年間、マドリーを追うと同時にバルセロナもそれなりに見てきたつもりだ。当時は明らかにバルセロナのほうが強かった。

最もセンセーショナルだったのは、モウリーニョがマドリーに来て最初のカンプノウクラシコだ。手も足も出なかった。


転換点

2008年から2012年、ラ・マシアで育った選手達が同じくラ・マシア出身のペップの元一時代を築き、その面々がスペイン代表でもタイトルを独占した。

2013年、ネイマール獲得の裏でチアゴ・アルカンタラをペップ率いるバイエルンに放出した。チャビ、イニエスタが君臨する中盤の次世代を担う選手としてチアゴは期待されていた。そんなカンテラーノの宝をやすやすと売り払い、その後もラ・マシアの選手は次々に小銭と換金された。

「チアゴの放出は、ネイマール獲得以上に損失である」と現地のジャーナリストはこれに激怒していた。

バウトメウはスアレスを獲得しMSNは欧州を無双、圧倒的な強さを見せた。個の質でなぎ倒す、レアル・マドリーのような勝ち方は以前のスタイルではなかったが結果がそれを善しとしていた。

2018年に核のNを奪われ、その属人的な構造の弱点が露呈した。そして輝かしいピッチ上とトロフィーで覆い隠していたピッチ外での杜撰な経営が同時にバレてしまうこととなる。


負債とギャンブル

気づけば10億ユーロをゆうに超える負債を抱えていたが、トップレベルでタイトルを争う競争力も維持したいという矛盾を叶えてくれるマジックが必要だった。これまで、あらゆる不可能を可能にしてきた神の子はパリに居た。

バルセロナは4つのレバーを駆使し、将来から借り入れチームを強化。スター選手が揃ったチームがゲームに勝ちトロフィーを獲得、スポンサーやスタジアム等ピッチ内外で莫大な収益を上げクラブに好循環を生み出したい。その収益でローンを返済したいという短期的で、楽観的な計画だった。

ただのギャンブルだ。莫大な収入が増えたように見せかけているだけで、クラブは今後長期にわたってツケを払わされる。その場しのぎで、根本的な問題は解決されない。むしろ傷口を悪化させる手法だ。

リーガのタイトルは獲得したものの、衰えが見え始めたレヴァンドフスキは高額なサラリーから悩ましい存在となってしまった。昨シーズン後半にはチャビとひと悶着あり、チャビはフロントに放出を希望した。無理難題を押し付けられたフロントは、チャビともギクシャクしてしまった。

ラフィーニャも値段に見合った貢献とは言い難く、16歳にスタメンを明け渡す始末。クラブは放出したいが買い手が見当たらない状況だ。

2021年の会長選に出馬していたビクトル・フォント氏は、

「バルセロナの財政状況は、ラポルタが就任した時よりも悪化している。バルトメウは問題を先送りしすぎたため、現役員は早急に対処しなければならなかったが、今彼らも同じように先送りしようとしている。

クラブのレジェンドたちを裏口から追い出すのではなく、尊敬する人がクラブを運営することを望んでいる。メッシとチャビの追放は近代史における最大の過ちだ」

と述べている。


ナイキとの揉め事

2016年5月にバルセロナは、ナイキと2028年までの長期契約を締結させた。年間基本給1億500万ユーロに加え、ボーナスは最大5000万ユーロという破格の契約だ。MSNが3冠を達成した絶頂期とも言える時期で、バウトメウのお手柄だった。

ラポルタがナイキを気に入らない理由のひとつに、この特大なボーナスの部分がある。バウトメウ時代には、ラリーガ優勝やCL決勝進出など多くの条項をクリアし多額のボーナスを得られたが、近年のピッチ内での苦戦でボーナスから得られる収入が激減している。

なので、「現在の2倍の額が妥当だ!契約を打ち切るぞ!」と無茶苦茶を言っているのだ。ナイキからしたらクレーマーでありヤクザだ。

とは言えナイキにしてみても、バルセロナは超重要な顧客であり簡単に手放すわけにはいかない。クレーマー相手に和解の道を探っている現状だ。


裸の王様

近年、クラブを去ったのは選手やコーチだけではない。SDのアレマニー、SEOのフィラン・レヴェテル、コーポレートディレクター、カンプノウ再建プロジェクトの責任者、財務担当のエドゥアルド・ロメウなど、多くの幹部が退社している。

フォント氏は「ラポルタは各分野のプロフェッショナルの知識と経験を活用せず、自分の基準で意思決定をしている」と述べている。

その結果、マネージャーには妹が、財団の理事長にはいとこ、アドバイザーには元義理の兄弟、ラポルタの補佐には友人とデジタル戦略担当には補佐の妹を起用。

アレマニーの後任には、ラフィーニャをバルセロナへ連れてきたデコを据え、レヴァンドフスキが移籍した際には代理人で親交のあるピニ・ザハヴィに500万ユーロを支払っている。マルコス・アロンソをチェルシーから獲得した際には、ラポルタの息子が関与しているとされている。周りを身内で固め、やりたい放題だ。

フォント氏は、「ブラックボックス化しており、説明がない」とネグレイラの件も加えて見えないお金の流れを批判した。クラブを近代化し、各分野をプロフェッショナルに任せるべきだと。

次の会長選は2026年6月にある。もしラポルタが次を目指すのであれば、説得力のある成果が必要になる。レバーは正しかったと証明しなければならない。

ただ現状は、バウトメウの傷口を修復出来ず、クラブのレジェンドからは見放されてしまい、ソシオからの印象はとても悪いと言える。

ロナウジーニョは暗黒期を救ったヒーローだが、ラポルタはこの間中学を卒業したばかりの少年をロナウジーニョにしようとしている。

ラポルタの命運はヤマルの左足に懸かっている



復活の兆し

ラ・マシアを超える育成機関は存在しないと断言できる。アンスー・ファティは間違いなくメッシの後継者となれるタレントだったが、ここに来て彼を超える新生が現れた。

ガビ、バルデ、クバルシ等、ゴールデンボーイ級の選手が毎年輩出される。レアル・マドリーは南米から若者を連れてくる必要があるが、バルセロナは自給自足できるのだ。外から選手を連れてくる必要はなく、連れてくるためにカンテラーノを売り払うなんて言語道断だ。

近年の失敗はあれど、バルセロナのブランドと影響力は変わらない。だからこそ、一度立ち止まり地に足つけてクラブを変えなければならない。ボロボロの船が沈没してしまう前に、重荷を海へ投げ捨てるべきだ。

依然、収益はトップクラスであり水面に戻るのに長い時間はかからないだろう。

クラブがあるべき姿に戻った時、メッシやプジョル、チャビ、ペップなどのレジェンド達は皆カンプノウに戻ってくるはずだ。

未来は明るく、ギャンブルは必要ない。

長期的に約束されたレールは既に敷かれているのだから



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