【Z世代到来】ブラジルの神童エンドリック
その後は?
「レアル」
2017年の夏、11歳のエンドリックはカメラに向かって夢を語りそして7年後、その夢を叶えた。
物語が始まったのは、2021年10月。代理人が、ユース年代で圧倒的なパフォーマンスを見せていたエンドリックのビデオを欧州のビッグクラブにばら撒いたのだ。そして瞬く間に世界中のスカウトから注目される存在となった。レアル・マドリーのスカウト、ジュニ・カラファトもそのうちの一人である。
ネイマールショック
2013年。フロレンティーノ・ぺレスは求愛していたネイマールを逃し、よりによって彼は宿敵バルセロナを選んだ。この一連の事件は、ペレスのプライドをこれ以上なく傷つけ、後のヴィニシウスやロドリゴ等、若い才能に執着するキッカケとなった。エンドリックもその一人で、次のネイマールは逃すまいと16歳にしては法外な移籍金を支払ってまで手に入れた。
役割とプレースタイル
エンドリックは左利きの多彩なアタッカーだ。
若くしてゴール前の冷静さと自信を持ち合わせており、点を取るだけでなく最前線で人と人を繋ぐ役割も果たすことができる。彼は右、左、センターフォワードやセカンドトップでプレーすることができ、ライン間でボールを受けることも得意としている。
パルメイラスでは主に、2トップの一角としてプレー。フィニッシャーでありながらもチャンスメイクに重点を置いていた印象だ。
ヒートマップに表れているように、ボックス内を主戦場とするストライカーから、昨年は低い位置まで下りてボールを受けるシーンが増えている。多彩さ、プレーの幅が広がり進化している。
特徴
エンドリックのドリブルはシンプルながらも効果的なタッチで、常にゴールに向かって前進する。サーカスをするタイプではない。
狭いスペースでも苦にしないボールコントロールとフィジカルを有しており、広大なスペースがあれば、爆発的な加速とアジリティを発揮して相手を置き去りにする。スピードに乗って、ゴールに突進していくようなドリブルはフェノメノを彷彿とさせる。
最も怖さを見せるのはボックス内でのプレーで、ペナルティーエリア内でのマークを外す動きや、スペースを見つける9番としてのセンスを持ち合わせている。彼の決定力と相まって、得点を量産するだろう。
彼は攻撃と得点に重点を置くアタッカーですが、ボールがない時の献身的な守備も特徴のひとつで、前線からのプレス等ハードワークを厭わない。90分間常に相手ディフェンダーを困らせる選手だ。
強靭なフィジカルも彼の強みである。
デュエルに強く、小柄ながらジャンプ力が非常に高いため大柄なディフェンダーとの空中戦もお構いなしのファイターだ。相手を背負ったときはもちろん、パンチ力のある長距離砲やバイシクルなど、アスリート能力の高さは文字通り規格外。特におしりを使ったターンは強力。
彼は特徴的な脚の筋肉について「遺伝だ」と語っている。
課題
エンドリックはしばしばボールを長く持ちすぎて、一人で頑張りすぎる傾向がある。
新しい環境の下、特大なプレッシャーとの向き合い方にも注目だ。
ブラジルサッカー界には笑顔が消えている。ロナウジーニョの言葉通り、セレソンはコパアメリカでも結果を残せなかった。エンドリックがサンバの魂に再生の光を灯すと期待されている。
到着
1年半の待ち時間のおかげで、マドリーはパルメイラスでの急速な成長を見守ることができた。
3月にはセレソンの一員として一足先にベルナベウに足を踏み入れ、あいさつ代わりのゴールを決めた。これから始まる歴史の予告編のようだった。
エンドリックの番はすぐには回ってこない。今季の主役は、あくまで新しい9番と新しいバロンドーラーだ。
「努力と忍耐」が、今後のマドリーでのキャリアにおいて重要な要素となるだろう。
エンドリックは未来への期待と自信を胸に、明日アメリカへ飛ぶ