高校野球にマネジメントの種をまく!
マネジメントという言葉は高校野球界では耳慣れない言葉です。
マネジメントとは、企業が組織の成果を上げるために、経営資源を効率的に活用し、目標やミッションの達成を目指すことです。
経営資源とは、人・物・金・情報・時間を意味します。
私は高校野球部の現場にマネジメントの概念を持ち込み、秋田県立金足農業高校野球部の体質改革プロジェクトの支援を行いました。
その内容は、日刊スポーツプレミアムにおいて、
「金足農:日本初?起業コンサルタントによる野球部立て直し」という特集で記事が掲載されています。興味がある方はご一読ください。
チームに不祥事が起こり、秋季大会を含む、対外試合禁止(3か月)という処分が下りました。再発防止とチームの体質改革を目的に外部である、コンサルタントの私に協力依頼がきたということです。
本題である「マネジメント」ってビジネスの現場ではなじみがそれなりにある言葉であり、日々、マネージャーといわれる人がマネジメント実践して活用しています。
しかし、高校野球の現場でマネジメントってほとんど聞いたことがありません。(私の知る限り)
野球指導者が口にしている言葉は「指導」という言葉です。
多分、指導という言葉の中にマネジメント、リーダーシップ、コーチング、ティーチングなどなどが意味合い的に含まれているようですが・・・。
なぜ、ビジネスの現場では、マネジメントを学ぶ必要があるのでしょうか。ビジネスの事例で説明すると、以下のことが上げられます。
組織で不祥事が起こる場合、マネジメントの問題事象が現場で散見されます。JR西日本は、阪急阪神電鉄とのお客様の奪い合いのために、スルガ銀行は業績向上のために、戦略的な組織行動を起こしました。電車運行の速度を他社よりも上げて、時間短縮でお客様を獲得する。業績向上のために特別なしきたり文化が機能してしまう・・・など、組織内で様々な行動が起こります。世間を賑わす、企業の不祥事も目標達成、価値創出、持続的成長可能な会社づくりなど、総じていうところの利益(成果)至上主義偏重がもたらしているものです。ナチュラルに利益(成果偏重)に組織がふれちゃいます。
(もちろん、最初から悪いこと目当てもあるでしょうが。)
高校野球や少年野球の現場は、「少年・少女の育成」が理念です。
また、海外のスポーツクラブとは違い、教育の現場にクラブ活動として、学校教育の一環としてその活動が存在します。
なぜ、高校野球から不祥事がなくならないのでしょうか。
「勝利至上主義」に走りがちな傾向や周囲の環境、そして、指導者の存在があります。しかし、高校野球界は毎年目にする不祥事や事件が起こるにも関わらず、防止のための打ち手が効果的に行われていないと私は感じています。学校経営の一環で学校PRのために野球部を強くすることなど、これも野球指導の現場だけではなく、経営的視点、マネジメントとリーダーシップの課題でもあります。
指導者も選手も親も学校関係者も、みんな、選手やチームの成長を願っているのになくならない不祥事・・・。
上手くなりたい、強くなりたい、甲子園に出場したいなどは、野球を好きである動機であり、目指したい目標でもあります。
金足農業高校野球部は、「金農旋風」とマスコミが注目する高校野球の老舗であるチームです。しかし、不祥事が起こったことは事実です。
私はずっと考えていたことがありました。それは、
マネジメントやリーダーシップについて、高校野球指導者が学んでいれば、不祥事をゼロにすることが可能なのかもしれない。
私はこのようなダイナミックな仮説を持っています。もっと過激に言うならば、「高校野球が変われば、社会が変わる」ぐらいの勢いで社会変革が行われるのではないか、というふうに考えています。
しかし、高校野球指導者、学校の教員がマネジメントやリーダーシップを専門的に学ぶ機会はほとんどありません。シーズンオフに行われる講習会程度であり、サッカー界やバスケットボール界のように指導者のライセンス化も進んでいません。ライセンス化に賛否がありますが、野球界は他のスポーツ界よりも「指導者の学習機会の場の提供」という点では、他のスポーツにノックアウトされている状態です。
高校野球界、そして、野球界には、学ぶ機会が圧倒的に少ないのです。
社会人野球監督経験者としての自らの後悔
私は、社会人野球、本田技研鈴鹿(現ホンダ鈴鹿)の8代目の監督としてチームの指揮をとった経験があります。33歳の時でした。
チームをつくること、世代交代をいかに進めるか、選手の育成やモチベーション向上、コーチ、選手、会社との関係づくり、スカウティング活動における学校関係者とのネットワークづくり、地域貢献、そして何よりも企業チームですので、「勝つことで従業員や地域に話題を提供する」というミッションの遂行が監督の仕事してありました。
これって、やってることはマネジメントです。笑
グランドで采配を振ることだけが、監督の仕事ではありません。
仕事は多岐にわたります。私はマネジメントやリーダーシップという言葉ややり方はほとんど知らずに、「どうすれば、チーム強くなるのか」ばかりを必死で考えていましたし、必死で行動していました。そして、チームが成績を残せなかったとき、監督更迭という経験をしました。なぜ、自分は上手くいかなかったんだろう・・・。
野球から仕事にキャリアチェンジ。仕事の現場でマネジメントやリーダーシップという言葉が頻繁に出てきて、自身も研修を受ける身となり、「もっとはやくにマネジメントやリーダーシップについて知りたかった・・・。」と後悔ばかりが募ると同時に、興味関心が強烈に沸き、筑波大学大学院ビジネス科学研究科(MBA)で経営、マネジメント、リーダーシップ、組織の中の人間心理などを学ぶようになりました。
名選手、名監督にあらず。
私は迷選手でしたが、一般的にも選手として活躍した方が、監督、指導者として成功するのが難しいという言葉の表現でもあります。
最近では、中日ドラゴンズの立浪監督が苦労されている姿がニュースで取り上げられています。プロ野球の監督ですから、マスコミやファンも容赦なしに言葉を投げかけています。立浪監督は自分なりのベストを尽くしてきたはずです。
最近の言葉いうところのリスキリング、アンラーニングの実践が選手から指導者としてのキャリアを形成する一助になるのではないでしょうか。
金足農業野球部のチームの体質改革においては、チームのメンバーがマネジメントやリーダーシップを理解すること、実践することで、チームの体質変えていく。もしドラのように。そんなことを考えていました。
マネジメントとリーダーシップを学べば、自分が変わる、組織が変わる
マネジメントやリーダーシップという言葉はビジネスの現場でもきちんと理解して使いこなしている人は少ないと思いますし、これらの言葉の思い込みが強くあります。マネジメント=管理。リーダーシップ=引っ張る、まとめる。といった、言葉の意味を自らが意味付けしています。
マネジメント(management)のmanageは何とかするという語源がありますし、リーダーシップ(leadership)は、人から人への影響力を意味しています。言葉の意味、解釈を変えるだけでも、自らの意識や行動に変化があらわれます。マネジメントは、管理だけではないのです。
管理だと英語では、controlになるはずです。
高校野球の指導者がマネジメントを学ぶことで、チーム作りは今よりも上手くできるだろうし、教員としての働き方改革が進むだろうし、チームの長時間練習も是正されるだろうし、監督やコーチのリーダーシップ(影響力)が変われば、野球を通じて成長する(したい)選手が増えると私は考えています。
マネジメントとリーダーシップを野球指導者の武器にしてほしい。素直にそう感じています。
高校野球の現場にマネジメントやリーダーシップの種をまくこと。
私のこれからのミッションの一つです。