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咲いた月の下で #32

のんびり過ごした正月を終えると、突如緊張感に包まれる大学生活。
半年間受けてきた授業の試験が一斉に行われ、単位認定の如何が決まる。ここでしくじると半年間の努力が水の泡になるため、ある者は計画的に、ある者は一夜漬けで死力を尽くす。


〇:…で、なんでうちに集まってくるわけ?

瑛:なんでって、そりゃあ…

茉:居心地がよいから?

リビングで持ち込んだお菓子を食べながら答える茉央と瑛紗。


咲:あなたたちまで…

和:みんなでやった方が、

美:効率いいもんね~

ダイニングでお茶を飲みながら答える和と美空。広めの家とはいえ、全員集まるとさすがに手狭感がある。


〇:まったく…自分でやれよ…

文句を言いながらも、同じ授業のレジュメを見せ合ったり、レポートを相互に読み合ったりして、なんだかんだ協力する〇〇と咲月。学祭以来、すっかり仲良くなった6人は、お互いの大学の授業の違いなんかも話したりしながら、一日勉強に費やした。


夜、一日お疲れさまということで、晩ご飯の鍋を囲む。場所を提供した〇〇と咲月へのお礼ということで、準備は4人がやってくれた。


茉:テストは大変やけど、終わったら春休みやなぁ。

和:大学の春休みは長いよね〜。

咲:あっ、そうだ!

何かを思い出し、戸棚から封筒を持ってくる咲月。

美:ん?なぁに?

咲:あのね、この前学祭でカップルコンテスト優勝したじゃない?その時にもらった旅行券、思ったより金額があって。

封筒から賞品を取り出す。

〇:まぁ、不本意ながら、申し込んでくれた一ノ瀬のお陰というのもあるし、せっかくならみんなでどこか行くのもいいかな、と思ってさ。

茉:おおー!太っ腹やな!

瑛:行きたい!みんなで旅行!

〇:全額は無理だから、差額は出るけどな。

和:それでもお得に行けるね!楽しみ!

高校生まではなかった友人との旅行に、テンション上がる一行。


美:問題はどこに行くかよね~。

咲:それなんだけど、実は参考資料がたんまりあって。

新婚旅行先を選んだ時に両親が集めたパンフレットとプレゼン資料を残していた二人。

和:すごい量ね…

〇:ちょうど捨てようか、って言ってた時にこの話を思いついてな。役立ってよかったよ。

瑛:プレゼン資料の充実度がすごい…さっき書いたレポートよりまとまってる…

謎の敗北感を味わいながら、手分けして行き先候補を選ぶ一同。選ぶといっても、6人の意見はそう簡単にまとまるわけもなく、今日は一旦持ち帰りとすることにした。

〇:よし!旅行を楽しみに試験頑張ろう!気持ちよく旅行に行くぞ!

全:お~!!

勉強会が決起集会に変わったところで、本日はお開きとなった。


***


2週間と長いテスト週間が終わった。結果発表はまだ先なものの、ベストを尽くした6人。勉強の息抜きにパンフレットを眺めるスタイルで、旅行を楽しみにつらいテスト期間を乗り切った。
そして打ち上げ兼旅行先決定会議を開くべく、再び〇〇と咲月の家に集合。すっかり溜まり場として定着してしまった。

◯:さて、事前にみんなの意見を集めた結果、割と簡単に行き先が決まりました。

咲:ズバリ!北海道です!!

4人からおぉ~と歓声が上がる。

和:寒さから逃げるのもいいけど、せっかくだから楽しむのもいいね〜。

茉:美味しいもんも多いし、見どころ、遊びどころも満載やなぁ!

沸き立つ4人。

◯:さぁ、ここからはプラン決めだ。


北海道に絞ってやりたいことを積み上げる。それほど長期間というわけではないので、できるだけ効率的に、譲り合いながら決めていった。

咲:ふ〜、だいたい決まったね!楽しみになってきた〜!

茉:しかし、こうなると奈央ちゃんが一緒に行けないのが残念やな。

学祭メンバーで、唯一参加できていない奈央。

◯:まぁ、まさに今、受験生になったばっかだしな…

咲:高校生を旅行につれていくのは、さすがに色々と難しいよね、奈央ちゃんも大学生になったら、また誘ってあげようよ。

奈央に話したらコッソリついてきてしまいそうなので、申し訳ないが内密に進めることにした。


***


出発の朝。北海道へは当然空路での移動となるため、朝早くに空港へ集合した6人。


和:みんな、忘れ物してない?って私大丈夫かな…

美:パスポートっていらないよね?

◯:それは北海道の人が聞いたら怒るやつだぞ。

咲:沖縄以来の飛行機、楽しみ〜!

茉:今度は寄り道せずに着くとええなぁ。

瑛:お寿司!蟹!いくら!

ワイワイガヤガヤしながら飛行機に搭乗。

早朝集合だったこともあり、機内では早々に眠ってしまった一同。着陸の衝撃が来るまでぐっすりだった。


咲:うわー!!雪だ〜!!

和:さすが北海道だね〜。

美:さっ、寒い…

ボーディングブリッジを渡りながら、北の大地に来たことを実感する。荷物を受け取り、札幌行きの電車に乗るため駅へ向かう。

◯:…あっ、咲月、これ知ってる?

咲:地図がどうかしたの?

◯:薄ーく、本州が重なってるでしょ?

咲:ホントだ。比べてみると、北海道ってやっぱり大きいんだね。

◯:これだけ大きいんだから、無茶な計画立てるなよ、って意味らしいよ。

咲:な、なるほど…確かにちょっとあっち行ってこっち行って、ってのは無理そうね…

いきなり実感した北海道の大きさに呆気にとられながら、電車に乗り込む。


瑛:今日はどんな予定だっけ?

茉:今日はホテルに荷物置いたら、昼ご飯、市内観光、晩ご飯!札幌満喫プランやで〜!

咲:ん〜!楽しみ!

楽しみにしていた北海道旅行。
重い荷物を持ちながらも足取りは軽い一行だった。

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