咲いた月の下で #04
帰り道。昔のように手を繋いで歩く。
一つだけ違うのは、繋ぎ方。
咲:〜♪
◯:落ち着いた?
咲:なんか、ニヤニヤが止まらないの。最高のクリスマスだ〜♪
◯:喜んでもらえたなら、何より。
咲:しかし、結婚って 笑
◯:変かな?
咲:まぁ、変だよね 笑。びっくりしたけど、後から嬉しさが込み上げてきた感じ。
手をブンブン振りながら、スキップしてると、あっという間に家の前。
咲:…
◯:どうした?
咲:…手、離したくなくなっちゃった。
◯:…俺も。
しばしそのまま、握った手を見つめる。
咲:…また明日も会いたい。
◯:…俺も。
咲:でも、今は他にもやらなきゃいけないことあるもんね。ちょっとだけ、会えたら会おうね。
◯:そうだな。4月から先のため、ちょっと我慢だ。
咲:…じゃあ…バイバイ。今日はありがとう。
◯:うん、こちらこそ。これからもよろしくな、嫁さん。
咲:よ、嫁…ヤバいわ、またニヤけてきちゃう 笑
名残惜しそうに、でも嬉しそうに家に入る咲月を見届け、◯◯も家に入る。
◯母:どこ行ってたのよ、こんな時間に。
◯:ちょっと、散歩してただけだよ。
◯母:そんなニヤニヤして散歩してたら不審者と間違われるわよ。
◯:え、ニヤけてる?
◯母:うん、すっごく。
◯:(無意識にニヤけてるとは…追求される前にさっさと寝よう…)
手早く身支度してベッドに潜る。
◯:(周りになんて言えばいいのかな?てか結婚ってどういう段取りして進めるんだ?)
◯:(咲月さんを僕にください、的なのやるのか?おじさんたちに…)
隣の家でも…
咲:(布団に入ったはいいけど…またドキドキして眠れない!!!)
咲:(嫁って、何?何したらいいの???)
また、眠れない夜になったのだった。
***
翌日。寝不足気味で◯◯が起きると…
咲:◯◯!おはよう!
◯:うわっ!咲月来てたのか。お、おはよう。
不意打ちに思わず狼狽える◯◯。
咲:今日はお父さんもお母さんも早番で出ちゃって。私も出かける用事あるから、一緒に行こうと思って来ちゃった。
◯母:咲月ちゃん朝ご飯まだでしょ?◯◯と一緒に食べちゃいな。
咲:んふふ〜、ありがとうございます!
◯父:咲月ちゃんがいると家族が増えたみたいで楽しいな。
珍しく朝遅めの親父。
咲:それうちのお父さんも行ってました。◯◯がいると男の話ができて楽しいって。
◯父:ハハハ。足して2で割ると、ちょうどいいな。
◯:親はいいけど俺らを2で割るなよ。
◯父:細かいことは気にすんな!さ、母さんそろそろいくぞ〜。
コーヒーを飲み干し、身支度しているお袋に声をかけて出ていく。
◯母:はーい。◯◯、片付けよろしくね。
◯:うん。行ってらっしゃい。
咲:いってらっしゃ~い。
両親が出勤し、二人の食卓。
自分の分のコーヒーを入れて、テーブルにつく。
◯:来ると思ってなかったから、びっくりしたよ。
咲:えへへ。ホントはね、ちょっと朝寝坊してから出かけようと思ってたんだ。でも、実は昨日ドキドキしちゃって全然眠れなくて…
◯:えっ、寝てないの?
咲:ううん、浅くなった感じで、早く目が冷めちゃった。
◯:そっか。実は俺もなかなか寝られなかったよ。親とか周りに、なんて言おうかと思って…
咲:あー、それね…。
口に運んだ箸を咥えて、うーんと頸を傾げる。
◯:まぁ、まず親には言わなきゃなんだけど、あの人たち全然揃わないからな。
咲:個別に言う?
◯:いや、全員揃ってるときに言っちゃうのがいいと思ってる。家族ぐるみの付き合いだし、個別に言ってもどのみち向こうの家は、ってなるだろうし。
咲:それはそうだね。あっ、正月は毎年両家揃ってご挨拶と初詣行くよね。その時は?
◯:あぁ、そうだな。今年の予定聞いてないけど、まぁいつもと同じだろ。その時にしよう。
咲:なんて言われるかなぁ。付き合うだけなら駄目ってことはないと思うけど、結婚って…
受け入れたものの、やっぱりおかしなな状況にクスッと笑う。
◯:リアクション読めないよな。
咲:お前なんかに娘はやらん!とか言われたりして 笑
◯:このシチュエーションだとそう言うのが普通の親な気がする。
咲:アハハ…確かに。
◯:想定問答ができないから、出たとこ勝負だな 笑
咲:当たって砕けろ!じゃない?私たちの気持ちは変わらないし!
◯:砕けたら困るんだけど 笑
苦笑しながらも、咲月のこの前向きさが好きだなぁ、と思う◯◯。
◯:そういや今日はどこ行くの?
咲:和と美空と会うんだ。もともと今日だけは少し息抜きしようって決めてたの。
◯:クリスマスに女3人で?
咲:だから、昼間のちょっとだけだよ。まぁ誰も彼氏できる予定じゃなかったんだけど 笑
◯:飛び越えちゃったな 笑
咲:二人には言ってもいいかなぁ?
◯:あの二人なら変に言いふらしたりしないだろうし、いいんじゃない?
咲:うん、そうだね。◯◯は誰かに言う?
◯:俺はそういう話するやついないから。
咲:ふーん、そうなんだ。
朝食を食べ終え、身支度して出発。もちろん、しっかり手は恋人繋ぎ。
◯咲:〜♪
そもそも恋人振る舞いもまだまだ新鮮な二人にとっては、単なる駅への道のりも幸せな散歩道のように感じられた。
***
和美:け、結婚!!!???
咲:しーーっっ!声が大きいよ…
和と美空と合流し、カフェでおしゃべり。
早々に咲月の醸し出す幸せオーラに気付いた二人に問い詰められた。
和:結婚ってアンタ…ようやくくっついたのかと思ったら、プロセス飛び越えちゃってんじゃん!
咲:ようやくって…そんなに雰囲気出してた私?
和:さっちゃんのエピソードトークに出てくるの◯◯くんばっかりだもん。しかもすっごい嬉しそうに話すし。
咲:えぇ~…そうだったのか…
自覚がなかったことがちょっぴり恥ずかしい。
美:しかしやるなぁ◯◯くん…
咲:そうなのよ。私もびっくりしちゃって…
美:OKしちゃう咲月も咲月よ。
咲:えぇぇぇ…やっぱり??
和:まぁ、それだけ好きってことなんでしょ?
咲:うん…
恥ずかしくて、真っ赤になって縮こまる。
美:うん、だって!キャー!!
驚きのあまり、リアクションが突っ走り気味な美空。
和:美空ちょっと落ち着きなよ 笑
美:おめでとうっていう気持ちと、先を越された悔しさと、突き抜けちゃった驚きとが混じってコントロールできないよ!
和:まぁ美空は置いといて、なにはともあれ、さっちゃんよかったね。おめでとう。
咲:和〜…ありがとう…
祝福の言葉を受けて、しみじみと喜びを感じる。
和:結婚式が楽しみだわ。
美:結婚式といえば誓いのキスだよね!
咲:き、キス…◯◯と…
質問攻めで十分照れていたところに追い打ちをかけられ、頭から湯気が出そうなほど茹で上がる咲月。
和:えっ、キスくらいしてないの?イブに結ばれたのに。
咲:いやもう驚きと喜びが爆発しすぎて…とてもそんなことまで考えられなかったよぅ…
和:あらー…ピュアなのねぇ。
美:ピュアというか、いきなり高いハードル越えちゃって大混乱してる感じ?
咲:そ、そうかも…あっ、手は繋いだよ?
和美:中学生かっ!
結局この日は洗いざらい◯◯との関係を吐かされ、様々な恋愛指南を受けることになったのだった。