咲いた月の下で #37
翌日。この日も二人とも授業は午後に少しのみだったので、少しゆっくり目の朝食をとる。
〇:さて、昨日は興奮のあまり、テンパっちゃったわけだけど…
咲:私もつられてだいぶ舞い上がっちゃった 笑
〇:とりあえず、今体調は大丈夫なの?
一晩経って少し冷静になると、色々気になる点が出てきた。
咲:今は何とも。でもこれから悪阻とか色々出てくるのかなぁ。
〇:そうだよなぁ。う~ん…圧倒的に知識が足りないな…勉強しないと。
咲:まずは大先輩に相談じゃない?
〇:お袋たちね。どんな大騒ぎになるのか、想像がつかないな。
咲:たま◯クラブ、ひよ◯クラブくらいは多分もうあるよ 笑
結婚したら次は子供、なんてことを言っていたくらいだから、おそらく既に色々と揃えているのだろう。
〇:ちょうど明日から週末だし、報告に行くか。
咲:うん、そうだね。
親たちの喜びようを想像すると、思わず笑みが溢れる。
***
翌日。偶然にも4人揃っていたようで、全員に一度で報告することができた。
◯母:あらぁ…おめでとう。
咲母:よかったわね…
少し涙ぐみながら静かに答える二人。
咲:あれ?大喜びするかと思ったら、案外なリアクションだね?
てっきり大騒ぎになるかと思ったが、拍子抜けの反応。
◯母:覚悟はしてたけど、もうおばあちゃんになっちゃうのかと思うと…
咲母:なんか、ズシンと来るわね…
咲:あぁ…そういうことね…
わかったようでよくわからないが、まぁ一応喜んでくれているようでよかった。
◯父:しかしお前たちはいつも少し早いな。卒業までもうちょっとってところで。
口元のゆるみを隠し切れない様子の〇父。
〇:まぁ、結婚はちょっとどころかだいぶ早かったんだけどな。せっかちなのかな、俺たち。
咲父:今2ヶ月ってことは、予定日はちょうど年明けくらいか?
咲:うん、1月の中頃だって。
〇父:大学とか就職はどうするんだ?
咲:大学は前期のうちに卒業要件揃えちゃって、後期はゼミだけにできると思う。ゼミの先生にも相談しなきゃだけど。
真面目にやってきたことが功を奏し、それほど多くの講義に出なくても問題なさそうだった。
〇:就職は、まだ内定はもらってないよな?
咲:うん。でもさすがに入社していきなり育休は無理だろうから、一旦就活は止めとこうかな。また子育てが進んだら考えるよ。
〇:そっか…なんか悪いな。
咲:ううん、こればっかりはね。その分稼いでね 笑
〇父:そういうお前はどうなんだ?
〇:大学はどうとでもなるから、しっかりサポートできるようにするよ。就職も出来ないってことはないだろうけど、早く十分稼げるように頑張らないとな…今のうちにもバイト増やして稼げるだけ稼いでおかないと…
これまでもひたすらバイトに明け暮れていたため、実はすでにそれなりの蓄えを作ってきている二人。結婚式や新婚旅行の費用の返済をしながらも、なんとかやっていけそうな感じではあった。
◯父:そうか、なんとかなりそうならよかった。父さんたちもできることはしてやるから、頑張ってみなさい。
◯:うん、ありがとう。またいろいろ世話になると思うけど、よろしくお願いします。
初めての子育て。不安は多いが、両親が近くにいることはこの上ない安心感がある。
咲:…で、みんな既にどれほどの準備をしているの?
咲母:フフフ…さすが咲月ね。こちらの動きを読んでいるとは。
〇:悪いけど、もう普通。七五三の着物買ってても驚かないぞ。呆れはするかもしれないけど。
〇母:さすがにそこまではしないわよ。性別もわからないのに。
咲:お母さんたちなら雛人形と五月人形を両方揃えかねないのよ…
てっきり子供服くらいは買い始めているかと思っていたが、案外そうでもなく、いくつかの子育て雑誌程度だった。二人は当然読んだことがない書籍だったので、ちょうど色々勉強することができた。
〇:…なるほどなぁ。なんとなく、これからどういうことが起きそうかはわかってきたな。
〇母:まぁ、個人差が大きいことだけどね。悪阻の酷さも症状も人それぞれだし。
咲:そうなんだ…さっきの本には、やたらと氷を食べたくなったり、マ〇クのポテトをひたすら食べたり、みたいなことが書いてあったなぁ。
咲母:お医者様と相談しながら、やっていくしかないわね。もう一人の身体じゃないんだから、くれぐれも無理しないようにね。
その後も二人が産まれた時の話など、いろいろと情報を仕入れた二人。わからないことだらけではあるが、経験者の話を多く聞けたことで、なんとなく不安を和らげることができた。
***
話も一段落したので、家に戻った二人。
夕食の最中も、食べ終わったあとも、やっぱり話は今後のことに終始していた。
◯:大学もだけど、バイト先とかにも報告しないとな。
咲:うん、そうだね。明日シフトはいってるから、早速言っておくよ。
◯:俺も行こうかな。なるべく迷惑かけないように、俺が入れるところは入りたいし。
咲:後は友達くらいかな。和と美空以外は、安定期になってからでもいいかな。
◯:そうだな。慌てて何もかもやろうとしなくてもいいと思うし、落ち着いてやろうぜ。
咲:うん、そうだね。
実家からもらってきた雑誌を二人で眺めていると、夜も良い時間になってきた。寝る準備をして布団に入る。
◯:…なんか、同じ布団で寝るのもちょっと緊張するな…俺の寝相大丈夫かな?
咲:え〜、今頃?笑 ◯◯は寝相いいから大丈夫だよ。
いつものように、◯◯に寄り添う咲月。
咲:卒業前だったからちょっと不安だったけど、みんな喜んでくれて嬉しかったなぁ…
◯:そうだな…何言われようが、やることは変わらないけど、応援してもらえると嬉しいな。
咲:私たちがしてもらったみたいに、一杯愛情注いであげようね…
お腹の上で手を重ね、眠りについた二人だった。
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