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咲いた月の下で #11

翌朝。
カーテンの隙間から漏れ入る光が眩しい。

咲:(…ん…昨日いつ寝ちゃったんだろ…)

布団の中で小さく伸びをして目を開ける。

咲:(えっ!!!)

至近距離にあった◯◯の寝顔に驚く。

咲:(そ、そうか…一緒の布団で寝ることになったんだった…)

スヤスヤと気持ちよさそうに眠る◯◯。

咲:(ふふ…寝顔かわいい)

ほっぺやら鼻やらツンツンしてみる。
くすぐったそうにする◯◯を見てると、イタズラ心が湧いてきた。
引っ張ったりつまんだり、抵抗されないことをいいことに、普段やらないことをやってみる。

咲:(◯◯って睫毛長いなぁ〜)

よく見ようと顔を近づけると、急にパチっと目を開けた◯◯と目が合った。

咲:わっ!お、起きてたの?

◯:…今起きた。…何、キスしようとしてた?

咲:ち、ちがっ…

◯:おはよう咲月。

◯◯から顔を寄せてキス。

咲:!!

咲:お、おはよ…

◯:…まだ早いな…もっかい寝よ…

時間はまだ早朝、さっさと二度寝してしまった◯◯。

咲:(ま、またやられた…)

布団の中で悶える咲月だった。

***

〇:ふぁぁ、そろそろ起きるか…

1時間ほどして再び目が覚めた。

〇:あれ?咲月は?もう起きたのかな。

ノソノソと寝室を出て、リビングへと向かう。

咲:あ、〇〇。おはよう…

〇:おはよ…って、なんで赤くなってんの?

朝方のことを思い出し、つい赤面してしまった咲月を見てあっけらかんと聞く〇〇。

咲:なんでって、そりゃあ…ねぇ?

〇:??

咲:えっ?まさか、自分が何したか覚えてないの?

頭の上にはてなマークを浮かべた後、急に焦り始める〇〇。

〇:ま、まさか、その、いわゆる、触っちゃった的なやつをやってしまったとか…?

咲:なっ、ち、違うわよ!!

〇:そ、そうか、よかった…じゃあなんだ?

咲:キースー!私が〇〇のことツンツンしてたらいきなり目覚ましてキスしてきたの!そのあとすぐ二度寝しちゃったの!

この~!と言わんばかりに、腰に手を当ててほっぺたを膨らます。

〇:おぉ…全然覚えてないな…でもまぁ、キスならこれまで何回も…

咲:そういうことじゃな~い!!ぞんざいにするな~!

〇:ごめん、ごめんって!

もちろん本気で怒っているわけではないが、不満はあるようだ。

〇:わかった、じゃあこうしよう!

咲:何よ!

〇:改めて、おはようのキスしよう!

〇〇のカウンターパンチで一気に攻守交替。

咲:なっ、そ、そんなこと!…し、したい…けど…

一気に劣勢へ。

〇:…じゃあ、いざ、尋常に…おはよう咲月。

変な掛け声で、改めてのキス。

咲:ん…おはよう〇〇。…えへへっ…

結局KOされてしまった咲月だった。

***

恒例にすることにした近所散策を朝のうちに終え、発見したパン屋さんで昼食を調達。

咲:町のパン屋さんって大好き〜。

〇:こじんまりしてて、いい感じだったな。何気にこの町良い店多いな。

咲:自炊できなくなるよ〜…

〇:まぁ、おいおいな。まだ生活始まったばっかりだ。

ついついやりがちな言い訳をしつつ、舌鼓を打つ。

〇:午後はなんか予定あるの?

咲:大学の履修登録しなきゃ。〇〇もじゃない?

〇:そうだな。そろそろやっとくか。

咲:私、和と美空と電話で相談しながらやろうって約束してるの。〇〇も瑛紗とか茉央ちゃん?とかと相談したりしないの?

〇:う~ん、相談しようとは言われたけど、具体的な予定はしてない。そもそも何を相談するんだ、という…

咲:取る授業合わせておいたら、レポートとか代返とか楽だよ?

〇:かといって興味がない授業取るのもなぁ。やりたいことを自力でやった方が…

根が真面目な〇〇。とりあえず受けたい授業を取って、共有だけしておくことにした。咲月も二人とビデオ通話をしながら取り組み、数時間後…

〇:咲月…終わった?

咲:うん、終わったよ。どうしたの?

〇:瑛紗と茉央に共有だけしたんだけどさ…二人から…

茉瑛L:さっちゃんに会いたい!今から行っていい?

〇:だってさ…

咲:ええ~!い、今から?

まだ夕方少し前。決して遅い時間というわけではないが、急ではある。

〇:まぁ、リビングはそれほど散らかってはないんだけど…

咲:そうだね~、うちに来るのがダメってことはないけど…なぜ私に会いたいの…?

〇:例の噂が広まってるってことだから、茉央は興味本位なんだと思うけど…

咲:品定めだね…

アハハと頬を掻く咲月。

〇:どうする?嫌だったら断るけど?

咲:ううん、ちょうどこれから晩御飯だし、一緒に食べたらいいんじゃない?

〇:そうだな。来るついでに食材買ってきてもらおう。

二人に買い出しを頼み、〇〇と咲月は部屋を片付けて準備をする。小一時間ほどで、二人がやってきた。

茉瑛:お邪魔しまーす!

咲:い、いらっしゃい。咲月です。

瑛:さっちゃーん!久しぶり!

茉:はじめましてやなー!五百城茉央です!よろしくな!茉央って呼んで!

咲:う、うん。よろしくね。

二人の圧に押される咲月。
先日のこともあり、ちょっと緊張していた咲月だったが、二人がグイグイ絡んできたこともあり、すぐに打ち解けた。

晩御飯は、簡単に出来る物の定番、鍋。手早く準備し、四人で囲む。

茉:さっちゃんお料理上手やな~。私もこの春から一人暮らしやけど、まだ全然できひん。

咲:そうかな。私もまだ昨日からこの家に住み始めたばっかりだよ。

〇:花嫁修業だ、って言って鍛えられてたよな。

瑛:さっちゃんが妻だなんて…◯◯にはもったいない!

◯:オマエは誰なんだホントに…

瑛紗のボケ(?)に◯◯が突っ込み、茉央と咲月がケラケラ笑う。咲月と二人でも会話はあまり途切れないのだが、四人いるとまさにノンストップ。終始楽しい鍋会となった。

茉:あー、楽しい。あっ、そうや。デザート持ってきてん。お母さんが送ってくれた神戸のスイーツ!

咲:わー、ありがとう!神戸って行ったことないから嬉しい!

茉:新婚旅行にもオススメやで!旅行はもう行った?

◯:いやー、いろいろバタバタしてたから、まだそこまでは。

瑛:新婚旅行といえば、ハワイじゃないか!?

咲:海外は、ちょっとお金的に無理かなぁ~…

出世払いでよいとは言われていても、負債が大きすぎる。

茉:そやな~。でも国内でもいいとこ色々あるで!北海道、沖縄、四国、九州!

瑛:私は鹿児島に行きたいぞ!鳥刺し食べたい!!

〇:勝手に行けよ…

咲:美味しいものの食べ歩きもいいよね〜。

茉:新婚旅行じゃなくても、大学生やと友達と旅行とかも楽しそうやな!今から休みが楽しみや〜。

夕食が終わった後も、話は途切れることなく続いた。

***

二人が帰った後、片付けをする二人。

咲:あ~、楽しかった〜。高校までってみんな実家だから、こういうのなかったよね。

◯:そうだな。ファミレスで、とかはあったけど、家だとまた違う楽しさあるな。

咲:和や美空も呼んだらもっと賑やかになるかもね。

◯:収集つかなさそう 笑

◯:…でも結果的に良かったよ。今日二人が来てくれて。

咲:何が?

◯:ほら、この前の件があったからさ。どうやったら咲月に心配かけずに済むかな、と思ってたんだけど。

咲:あぁ~…まぁ確かに二人に会えて、どんな人かわかったらちょっと安心したかも…

◯:なんというか、イジられてるくらいがちょうどいいかも、って気がしてきた。咲月は俺の嫁!って言って。

咲:なんか使い方おかしくない?笑

◯:事実だからな 笑

咲:フフッ。でもありがと。私の事、大事に考えてくれて。

◯:世界で一番大事だからな。

咲:も、もう。照れるよ!

ストレートに言われ、また真っ赤になる咲月。
これからも夫婦のコミュニケーションを大事にしていこうと思う◯◯だった。

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