学園祭ブルース(小説)

今日も高校に通う。僕の高校は桜丘町の街中にあってインテリアデザイン科に合格したので、毎日、将来インテリアデザイナーになる夢をみてソファやテーブルの設計や内装の勉強をしている。
友人の加藤は陽気な性格でクラスの人気者だ。
「今度の学園祭、うちのクラスからバンドをやろうって、圭一カラオケ超美味かったよなあ。バンドのボーカルをしないか?」
クラスの軽音部の小鳥田が話しかけてきた。
「バンドってなんの曲するかにもよるけど、僕で良かったら。ちゃんと歌えるかなあ」
「サンシャインゲートの曲なら歌える?結構メジャーだから知ってるかな?」
「サンシャインゲートなら知ってるよ。こないだも安野がライブ行ってきたって自慢そうにしてた。加藤も誘っていい?」
「加藤君にはギターをしてもらおうか。僕がドラムをするから、ベースは軽音部の吉本がするよ。軽音部が付いてるから初心者でも丁寧に教えるつもりで任せといてね。あと1ヶ月ほどあるし、じゃあ明日から練習ね。音楽室で」
「わかった。加藤に話してみるよ」
何となく引き受けてしまったバンドのボーカル。なんと大舞台デビューじゃん。カラオケはよく行ってるけど、大勢の前で歌うとなると歌詞とか覚えれるかなあ。今日からサンシャインゲートの曲を聴きまくって特訓だ。

「ええ?!?!小鳥田、俺をギターにしたのかよ。ギターのギの字も弾けないぞ。サンシャインゲートのギターって名手の戸谷哲平が弾いてて難しいだろ。」
加藤は慌てた素振りだったが、日頃から人気者で大勢の前で喋ることには慣れてるし、アイツなら大丈夫だと思う。
いつも通り授業が終わって、翌日から音楽室で練習が始まった。
「ギターはコード引き覚えてね。Fコードはこう」
加藤が特訓を受けている。
そこへ、クラスのサッカー部の徳山が音楽室に入ってきたのだ。
「なにか楽器の音が聞こえてきたから覗きに来たんだけど」
小鳥田が返事をする。
「今度の学園祭でコピーバンドをするから練習してるんだ。徳山君、サッカーの練習は?」
「それが、こないだの試合でアシストミスして負けちゃって、なんだか落ち込んじゃって、サッカーやる気がしないんだ。今日は練習サボった」
加藤が口を挟む。
「サッカー部って人気あるじゃないか。それにサッカー部って名勝の荻窪監督だろ?サボってて大丈夫なの?」
「たまにはいいよ、僕も音楽でバンドやりたい」
ベースの吉本がすぐに反応した。
「それならコピーバンド一緒にやろうよ」
「ギターなら出来るんだ。ずっと耳コピでアルテンションの楽曲弾いたり色んな楽曲耳コピで練習してた」
僕は思わず
「それならギターは加藤と交代だ。頼もしい。加藤はマネージャーね」
「アハハハハ」

それから3週間、音楽室で5人で練習し僕もだいぶん歌声に慣れてきた。
お菓子を持ち寄ったりして楽しかった。たわいない話をしたり、メンバーの雰囲気が良かったので徳山君の顔にも笑顔が戻ってきて、ほっとした。
クラスでは
「徳山君、サッカー上手かったのに部活辞めちゃったのかあ」
って、噂話も出たりしてたけど、たいして気にもしてない様子だった。

文化祭当日、加藤の作ったビラ配りを終えて野外特設ステージに立つ。元々サンシャインゲートが人気バンドなのでコピーバンドといえども観客がかなり集まってた。
小鳥田のドラムのカウントからステージが始まり、思いの丈を歌った。徳山君のギターがとても上手だった。2曲ほど歌った頃、観客の中にサッカー部の荻窪監督の姿を見つけたのだ。なんと手拍子とか腕を振ってくれていた。僕は感動してラストの曲まで丁寧に歌い続け、最後の挨拶で「荻窪監督初め観客の皆様ありがとうございました」とステージを締めくくった。

ステージ裏で
「お疲れ様~」と、ポカリスエットをメンバーで乾杯してから飲んでると、そこへ荻窪監督がやってきたのだ
「お疲れ様。軽音部が加わってるだけあってコピーバンド良かったよ。徳山のギターがサッカーに続いて格好良かった」
「ありがとうございます。荻窪監督優しいなあ」
「なあ徳山、サッカー部に戻らないか?1度や2度の失敗で辞めることはないだろう。誰でもそういうことはある。今度の岡坂高校との練習試合で復帰しないか?」
荻窪監督の説得に徳山は
「僕、サッカーも好きだけど軽音部に入りたいんです。すみません」
と答え、吉野が
「練習試合終わってから軽音部に遊びにおいでよ。荻窪監督が必要としてくれてるよ」
と、徳山をサッカー部に促した。
なんだか、こうゆう雰囲気の軽音部員が好きだった。

4日後、グラウンドで岡坂高校との練習試合に徳山君の走り回る姿を見た。
パスサッカーからサイドからのアシストでエースストライカーがシュートを放つも、ゴールキーパーが抑える。
オフサイドトラップをかけたり、ディフェンスもよく出来てて、接戦の中、徳山君が気持ち良さげな汗をかいていた。
そんな所を加藤が大声援を送ってるので笑った。
学生時代の青春のひとコマ
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