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第171回芥川賞候補よむ

芥川賞候補作を読んだ。 2作をのぞいて大学図書館のリファレンス利用。 せっかくなので予想 本命 バリ山行 対抗 バリ山行+転の声の同時受賞 穴 いなくなくならなくならないで 6月下旬の今、予想あげてるひとぜんっぜんいなくてさみしい、、 前提として、個人的に描写が抒情的・思弁多め、人が魅力的な小説が好きなので、それにあてはまらない小説はあんまり楽しく読めない。 ↓ネタバレは多分なし。 朝比奈秋「サンショウウオの四十九日」 モノローグ調っぽく杏と瞬が応酬するやりとりに小

    • トークイベントたのしい日記

      町屋良平さん×「とらきつね」書店主 鳥羽和久さんの「生きる演技」刊行記念トークイベントに参加した。 定時間際のMTGでのんびり話すディレクターにじりじりしながら打刻、書店へ向かう。書店近くの大濠公園のパーキングへ駐車。公共施設の駐車場使う時ってまっとうな人間になれた感じがして気持ちいい。 ランドマークの浮見堂と本をパシャる。 とらきつねさんの鳥羽さんは学習塾を営んでいるそう。いまどきの塾って哲学も教えるんですね、すご、、 鳥羽さんが作中のなかからいろんなトピックを抜き出

      • 「新潮」創刊120周年特大号がおもしろすぎる

        丸善へ。岸雅彦をパラ見して新潮を購入。文學界は平積み、新潮は残り一冊だった。 買った後、この雑誌が創作を志す人間にとってとんでもなく重要なものらしいことに気づいた。 これすげーパンチライン… 上に挙げた保坂さんの随筆のように、磯崎憲一郎、九段理江、星野智幸など創作に対しての随筆で心に残るものは多数あったし、それぞれが短いから回遊性があり楽しい。 この雑誌の中で、一番心に刺さったのが村田沙耶香の随筆「実験室の中で」。 村田さんの随筆を初めて読んだ。いや、実際には読んで

        • 芥川賞まわりの読書録

          創作熱と読書熱! 🎥ジャクソンひとり/安堂ホセ 黒人ミックス、同性愛者のマイノリティ中のマイノリティの青年の話 「褐色」って言葉が不愉快な表現にあたるとは考えもしなかった そういう控えるべき言葉って時代によっても変わるとホセさんがラジオで言ってた ラストシーンはあんまりよくわからなくてアイズワイドシャットの儀式シーンを想像しながら読んだけど多分作者が描きたかったのと私の想像全然違うかも…… 📰日曜日(付随する19枚のパルプ)/福海隆 もう一つの受賞作「私は無人島」はレ

          町屋良平 最高日記

          金原ひとみのインタビュー記事を読んでいた。 文藝の「私小説」の責任編集にあたり、自身と小説がオーバーラップされることをおそれてか男性の小説家に何人か断られた、と言う話を読んだ。 その翌日、私は定時で打刻し、地元でいちばん立派な総合図書館へ自転車で30分かけて赴いた。 総合図書館、レンガ調の建物がかっこいい。小さい頃からレジャーランドとしてよく行っていた。近くに福岡タワーがあるんで路肩に車を停めて記念撮影してる人がいた。一人一花という福岡市の緑化活動ののぼりが掲げられた公園

          町屋良平 最高日記

          「哀れなるものたち」、すばらしくもストーリーにモヤモヤ

          ※ネタバレあり 上映終了間際で日曜日の夜のレイトショーだというのに、私含めて観客が3人!この3人全員貸切映画館を目論んでいたんだろうなと思う。ざんねん。 音楽、衣装、建築揃い踏み 前評判とポスタービジュアル通り、映画館であの映像美を拝見するのは至上の贅沢だった。 お色直しするみたいに変わっていくドレスのどれもが劇的にかわいくて、しかもエマストーンに似合いすぎている……! パフスリーブ最高!エマストーンやばすぎ! オリエンタルな感じもするクルーズ船や将軍の館のアンティー

          「哀れなるものたち」、すばらしくもストーリーにモヤモヤ

          「ボーはおそれている」をミーム化するにはもったいない

          ※ネタバレあり 3月に取り壊される中洲大洋という古い映画館で「ボーはおそれている」を見てきた。 自分がネガポジどちらに転ぶのか恐々として見たけど、 結果は想像を遥かに超えて面白かった。 なんなら2時間足らずで映画終わった感覚。 好きなシーン ◆ボーの子供時代のクルージング旅行 富裕層らしくクルーズ旅行をしていたシーンの色彩があまりに綺麗で、ボー自身がその思い出を中年になっても大切にしていることのあらわしのように思えた。 ◆ボーの妄想劇場 大洪水で流された息子と再会

          「ボーはおそれている」をミーム化するにはもったいない

          過去になりかけている人

          4カ月くらい休職している▫️先輩の存在が日に日に大きくなっている。 夕陽が反射して真っ赤になった看板をバスのなかから見ているとき、納豆に米ぬかパウダーを入れて無心にかき混ぜているとき、大河ドラマのあんまり面白くない歴史説明の場面を見ているとき。 生活の端々に▫️先輩の影がチラつき、水に触れたときだけ微かに痛むささくれみたいな存在感で現れる。 毎日をどう過ごしてるんだろう。 私は優しくて開放的な人にすぐ懐いちゃう癖があって、▫️先輩が会社を辞めるなんてことになったら私はすごく悲

          過去になりかけている人

          「恋の幽霊」で思い出す記憶

          面白い小説は美味しい。続きを読もうと本に手を伸ばすたびにキャラメルを食べた時みたいな感覚が口の中に広がる。モラトリアム期間に本を読んでいた時のあの感覚を久しぶりに恋の幽霊が呼び覚ましてくれた。 4人の接続した心と体。 特殊なような目をこらせばどこかにあるかもしれないような不思議な関係。 学生のとき、他人の皮膚を自分が知覚することで相手と同化しているような感覚の記憶はたしかにあった。大人になってすっかり忘れていた。 パーソナルスペースがでかければでかいほどこの人大人だなあって

          「恋の幽霊」で思い出す記憶

          世にも奇妙な先輩

          「最近、Twitterで読書アカはじめてー」 雑談で先輩に言ったその日の夜、先輩は私のアカウントを特定した。 読書傾向を知っていれば特定は容易だったんだろう。 「かる@読書」というユーザーネームだった。 「先輩の中学校時代の読書好きの友達」という設定になりすまし、DMを飛ばしてきた。読書の話をする相手に飢えていた私はまんまと釣られた。 DMの内容はほぼ、偶然共通の知り合いだと判明した(設定の)先輩についての話だった。 ・よく人を嫌う、照れ屋、変なところで冷たい、押しに弱い、

          世にも奇妙な先輩

          ある青年について

          ▲さんと知り合って少しの時間が経った。▲さんは30歳手前の神奈川に住む青年。SNSのメッセージで急に岡上淑子の画集を薦めてきて、そこから仲良くなった。   一年半前、尊敬する日記作家兼塾講師であるところのFさんと▲さんは読書家の集まるグループを作った。元はと言えば夢野久作を研究している大学生のIさんと私、計4人で通話をしようとなったのがグループの発端だった。▲さんの人脈の広さから生まれた縁だった。 グループはもう残っていない。初対面同士の読書好きが集うグループには人見知

          ある青年について

          映画 ジオラマボーイ・パノラマガール 思春期の屈折を描く

          高校生同士の青春ラブストーリー、のようでいて思春期映画だった。 主人公のハルコは高校を中退した同い年のケンイチに恋をする。 一方、ケンイチは売春婦の女性に恋をしている。ありきたりな三角関係。 ハルコはごく普通の女子高生だから、未成年特有の愚かさともろさを持っている。ナイトクラブや男遊び、そういうものにふっとまみれそうになったり、不法侵入、飲酒運転、危ないところに足を突っ込む。そのあやうさの萌芽は誰もが持っていた、もしくは持っているものだろう。羽目を外しても結局は日常に帰

          映画 ジオラマボーイ・パノラマガール 思春期の屈折を描く

          映画 「ビバリウム」 終わらない集合住宅生活

          ようこそ、夢のマイホームへ・・・ 新居を探すトム(アイゼンバーグ)とジェマ(プーツ)は、ふと足を踏み入れた不動産屋から、全く同じ家が並ぶ住宅地<Yonder>を紹介される。内見を終え帰ろうとすると、ついさっきまで案内していた不動産屋 が見当たらない。不安に思った二人は、帰路につこうと車を走らせるが、どこまでいっても景色は一向に変 わらない。二人はこの住宅地から抜け出せなくなってしまったのだ―― そこへ送られてきた一つの段ボール。中には誰の子かわからないうまれたばかりの赤ん

          映画 「ビバリウム」 終わらない集合住宅生活