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世界一従順な対米従属国家「ニッポン」~自発的隷従と売国~

国民の多くは日本が対米従属国家である事実を知らない

大部分の日本人は、当然のごとく日本国が「独立国家」だと信じて疑いもしません。「いえいえ、日本は世界で唯一の正真正銘の対米従属国家なんですよ。」と言っても「そんな、ばかな。」と一笑に付されるでしょう。

しかし、真に受けない人でもその気になってほんの少でも調べてみれば、日本が本当に対米従属国家であることを知って驚くはずです。日本は軍事、政治、法律、経済などの国家としての根幹を米国に支配された紛れもない属国なのです。

確かに日本は、国際法上は1951年のサンフランシスコ講和条約調印によって占領状態を脱し、独立を果たしたと言われています。しかし、それはあくまでも形式的なもので、講和条約と同時に締結した「日米安保条約」と翌1952年の「日米行政協定」(1960年に「日米地位協定」に改名)によって、引き続き米国の支配の下に置かれることになったのです。

では、日本がどのように米国に従属しているのか、具体的に見ていきましょう。

軍事的・政治的隷属

数年前のオスプレイ墜落事故でまたしても露呈した米軍の治外法権、米軍が支配する広大な横田・岩国・「嘉手納」空域、沖縄をはじめ全国に展開する130の米軍基地(合計1024k㎡、その内、米軍専用基地は81)、東京などの市街地上空を超低空で我が物顔に訓練飛行する米軍機、米軍基地に周りを囲まれた首都東京等は、目に見える従属のほんの一端。

因みに東京都の面積は2,194k㎡なので、米軍基地はその半分の面積に相当します。

広大な横田空域は米軍によって支配されており、日本機は米軍の許可がなければ侵入不可

特権を問う・米軍ヘリ首都異常飛行(9) 識者が語る 日本が“弱腰”な理由

例えば治外法権ですが、米軍ヘリが私有地の畑に不時着した場合、米軍が到着して規制線が張られたとたん、その内側は事実上米国領土となり、日本の警察や事故調査官はもちろん、畑の持ち主である地主さえ立ち入ることができなくなります。

また、日米合同委員会が定期的に開催される港区麻布のニュー山王ホテルは、事実上治外法権を有した建物です。

不平等条約である「日米地協定」を締結してしまったため米軍には日本の国内法は適用されず、米軍関係者が公務中に起こした犯罪については日本の法律で裁くことが出来ません。公務外であれば日本側に第一次裁判権がありますが、日本政府は米軍に遠慮して事実上裁判権を放棄した状態がずっと続いています。

沖縄の米軍は猛毒のダイオキシンを返還された基地内に遺棄した他、日本全国の米軍基地からは発がん物質であるPFASを大量に垂れ流され、周辺の土壌や地下水、河川などが汚染されています。

日本政府は米軍への抗議はおろか基地内への立ち入り検査さえ行わずに傍観。ダイオキシンの処理については日米地位協定の規定により日本側の責任とされている外、PFAS汚染の調査費用や処理費用も日本側の負担になります。

所謂「先進国」で外国の駐留軍にこのような理不尽極まりない「自由」が許されている国は、他にあるでしょうか。また、首都を米軍基地に包囲された上に狭い国土に130もの米軍基地が置かれている国も日本だけです。

戦後75年経っても実質的に日本は米軍の占領下にあり、米軍は日米地位協定の取り決めによって、現在でもその気になれば日本のどこにでも自由に軍事基地を作ることが出来るのです。外務省は日本側の同意が必要と言っていますが、協議するポーズをとるだけで日本側に拒否する権限はありません。

核兵器について日本政府は「非核三原則は国是」としていますが、三原則の内「持ち込ませず」については、米国との「核密約」によって既に有名無実化しています。

そのひとつの例として、1959年6月に広島型原爆と同規模の核弾頭(20キロトン)を搭載した核ミサイルが那覇近くの米軍基地から誤発射されるという重大事故が起きています。

これはNHKが2017年に放送した「NHKスペシャル スクープドキュメント 沖縄と核 」で初めて明るみに出した戦慄の事件で、誤射時に米兵1名が巻き込まれて死亡、水平に発射されたミサイルは近くの海に落下しています。安全装置がかかっていたため核爆発は起きませんでしたが、もし爆発していたら沖縄は放射能汚染で壊滅していたはずです。

日米地位協定の規定で、日本側は許可がなければ米軍基地内に立ち入ることはできません。上記の核ミサイル誤射事件は返還前の米軍施政下の沖縄で起きた事故ですが、日本側に核兵器の有無を確認する権利がない以上、現在の沖縄は勿論、本土の米軍基地にも核兵器が置かれていないと言う保証はなく、全ては闇の中です。

予算面でも日本は巨額の出費を強いられており、2021年度の「思いやり予算」は、昨年と同額の約2000億円が計上されています。これにその他の「在日米軍関係経費」を加えれば、軽く1兆円を超えます。日本の負担額は世界でも異常に突出しており、米軍の駐留を認めている独伊など21ヶ国の負担金合計額を超える膨大な金額です。

条約上は日本側に負担する義務はなく、明日から打ち切っても何の問題もないものです。それなのに、日本側がわざわざ米国に忖度して多額の税金を貢納金として進んで宗主国様に献上している訳で、さすがは「世界一の対米従属国家」日本だけのことはあります。

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また、米国にとって日本は事実上国境がない国であり、米軍関係者ということにすれば、米軍横田基地を使って東京へも出入国手続きなしに自由に出入りすることができます。そこから星条旗新聞等が入っている米軍赤坂プレスセンター・ヘリポートまでは一っ飛びです。これは横田基地だけではなく、日本中の米軍基地のどこでも起きていることです。

トランプ前大統領が来日の際、羽田空港を使わずわざわざ横田基地に降り立ったのも記憶に新しいところですが、東京五輪のために来日したバイデン大統領夫人も横田基地に到着しています。

何より恐ろしいのは、米軍基地を利用する「米軍関係者」には当然新型コロナ検査をはじめとする入国時の検疫は何も行われず、フリーパスだという事実。そのまま自由に東京の繁華街へも繰り出すことができますから、いくら水際対策を強化しても穴の開いたバケツと同じでだだ漏れ状態。

日米地位協定第9条2項で「合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される」と定められているので、米軍人は一切の入国手続きを免除されています。日本国民でさえ、外国から帰国時には手荷物検査や手続きがあるのですから、米軍人はまさに特権階級そのものです。

米軍人の検疫については日米地位協定に何も規定がないので、軍用機で米軍基地に直接入る場合は完全にフリーパス状態。軍艦で横須賀米軍基地に入る場合も全く同様。

日本国内の米軍基地・施設は事実上米国の領土なので、日本の国内法は適用されず日本側の検疫所係官が立ち入ることは不可能。日本政府は、米軍に水際対策をお願いすることしかできません。

ですから、新型コロナ対策で政府が外国人の入国を禁止しても、日米地位協定によって水際対策に大穴が開いている状態なのです。

今年の1月には、沖縄、三沢、横田、岩国など日本各地の米軍基地がオミクロン株の感染源になっている事が判明して問題化し、久方ぶりに日米地位協定が注目されました。

日米地位協定の治外法権が壁となって米兵はマスクもせずに基地から繁華街へ繰り出しても日本は何の規制も出来ず、米軍に検査や外出自粛をお願いする事しか出来ない事が大問題になったのです。

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現実に米軍基地と治外法権のために全国の日本国民に危険が及んでいるのですから日本側に正当性があり、米側に日米地位協定の改正を申し入れる絶好のチャンスだと思われました。

ところが、岸田総理は「日米地位協定の見直しは考えていない。」と平然と言い放ち、何の対策も取らなかったのです。この発言は日本国民の生命や健康より米軍の方が大事だと宣言したに等しく、千載一遇のチャンスを自ら投げ棄ててしまいました。

不平等条約である「日米地位協定」を改正しなければ、今後もまた同じ事がくりかえされるでしょう。

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日本と同じ米国の属国である韓国と比べても、日本の隷従度は際立っています

有事の際、米軍は本当に日本を守ってくれるのか?

さて、事程左様に大事にされている米軍ですが、では、日本有事になった時、本当に日本を守ってくれるのか少し見てみましょう。

日米安保条約堅持を主張している与党は勿論、日本共産党以外の野党も日本有事の際は米国がNATOのように即時軍事行動を発動して救援してくれると信じているようです。しかし、それは日本側の勝手な思い込みか願望です。

そもそも論ですが、日本防衛というのはあくまで日米安保条約の必要性を国民に納得させるための建前に過ぎません。また、日本側に米国を守る義務はないのに米軍が日本を一方的に守ってくれるのだから、多少の不平等や米軍の特権は我慢しなければならないというおかしな理屈もまかり通っています。

在日米軍は別に日本を外国から守るために駐留している訳ではなく、事実上の日本占領軍なのです。実態は米国の新植民地としての日本の内政・外交を支配するための日本占領軍であり、米国の東アジア戦略の軍事拠点(不沈空母)として日本の国土を自由に使うために永久占領下に置いているのです。

確かにアメリカ欧州軍に多くを依存しているNATOは、その条約第5条で「条約締結国に対する武力攻撃は全締結国への攻撃とみなし、全締結国に防衛義務がある」という趣旨が明示されています。

対して、日米安保条約には、軍事的反撃行動を前提とした「防衛義務」はどこにも明示されていないので、米国政府には自動的に日本に対して軍事的支援を実施する義務はありません。

米国政府は国内法に従って、対処方法を決定することになりますが、軍事行動発動のためには議会承認など多くのハードルがあり、特に相手が軍事大国ロシアや経済的に相互依存関係にある中国の場合は発動されない可能性の方が圧倒的に高いのが実情です。

また、仮に議会を通さず「大統領権限」によって軍事支援が発動される場合でも、米国内世論や議会の動向を見定める必要があるので、米軍の軍事支援は軍事衝突によって自衛隊や日本国民に多くの犠牲者が出た後になると考えられます。

米国の軍事支援が受けられるかどうかもわからない不確かな日米安保条約のために日本は属国として甚大な不利益を被っている上に、「思いやり予算」という巨額のな貢納金を毎年むしり取られ続けているのです。

また、日本政府が米国製兵器を相場の2~3倍の言い値で爆買いするのも国民が収めた巨額の税金を米国に献上するためです。

改悪にしかならない「憲法改正」に熱を上げるより、現実に国民の基本的人権や国益を大きく損なっている日米地位協定の改定にこそ全力で取り組むべきなのです。     

日本を支配しているのは自国の憲法ではなく、条約である「安保法体系」

日本が以上のような主権国家としてあるまじき状態に置かれている根本原因は、これまで縷々書いてきたように日米安保条約と日米地位協定に基づいて設置された日米合同委員会、「指揮権密約」(有事の際、自衛隊は米軍の指揮下に入って戦う等)をはじめとする米軍の特権を認めた数々の「密約」(日米合意事項)にあります。

特に「日米合同委員会(米側代表は在日米軍副司令官、日本側は各省庁の高級官僚が出席)」は、憲法を超える存在であるとして国会の国政調査権の埒外にあり、そこでの国政を左右する数々の重要な取り決め(「密約」)は、今も秘密のベールに隠されたままです。

分かっているのは日本国憲法の上位に国際条約である「安保法体系」が君臨しており、「安保法体系」が憲法が抵触する場合には憲法の方が死文化または機能停止すると言う恐ろしい事実です。

つまり日本は自国の憲法ではなく、条約に過ぎない安保法によって支配されるという主権国家に非ざる異常な状態に置かれているという事です。

そもそも論から言えば平和憲法を持つ日本が日米安保という他国との軍事同盟を結ぶこと自体が明確な憲法違反。しかも旧安保条約前文には「集団的自衛権」までが言及されていたのです。

その上、旧安保条約第1条には「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によって引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。」旨が明記。

日本国内の内乱や反政府活動鎮圧のために外国の軍隊をを使用することができるとしたこの条文(内乱条項)には、さすがに不快感を持った保守政治家も少なからず存在したようで、中曽根康弘もその中の一人でした。

日米安保条約が自国では不評である事が分かっていた吉田総理はサンフランシスコ講和条約締結日の午前中にオペラハウスで華々しく講和条約に署名したその足で、今度はまるで人目をはばかるように当日の午後、サンフランシスコの軍事基地アメリカ陸軍第6軍司令部プレデシオ(将校集会所)に赴き、たった一人で条約文書にサインしたほどです。

これに対し、米国側の署名者はアチソン国務長官、ダレス特使に加え、民主、共和両党の上院議員を加えた4人。日米安保条約に対する両国の国情の違いが如実に反映された調印式でした。

旧日米安保条約は前文と五つの条文からなる短いものですが、前文と第1~第3条は誰が読んでも日本国憲法の理念と第9条に背く事は明白です。ですから、晴れて「独立」した日本の国会は憲法違反の安保条約を批准してはならなかったのです。

1951年10月に開かれた条約批准のための臨時国会では、「米国の日本防衛義務が不明確であること」や「内乱条項」などを巡って紛糾。当時最大野党だった社会党は条約反対の左派と賛成の右派、そして中間派に三分裂して対立が激化。意見の相違から、ついに左右社会党に分裂。社会党の分裂は与党を利することになり、結局、条約は賛成多数で批准され翌年の4月28日に発効。

これ以降、日米安保条約がある限り日本で自国の憲法が完全に実施される可能性はなくなり、憲法の一部が棄損された状態のまま、今日に至るまで米軍による事実上の日本占領状態が続く事になるのです。

日本の政策を左右する日米合同委員会(現代版GHQ)の闇

1951年の日米安保条約調印の翌年、両国は「日米行政協定」を結びますが、内容は日本側に一方的に不利な不平等条約そのもの。この協定の締結によって、日本が米国の属国になることが最終的に確定しました。

「日米行政協定」に基づいて設置された「日米合同委員会」は、建前上は駐留米軍の運用について日米で協議するために設置されたことになっています。しかし、実際の運用は建前を大きく逸脱し、米国による日本統治の司令塔として機能している疑いがあります。

日本の政策はここで「合意」(実際は命令)され、政府自民党はそのシナリオ通りに動かされているのではないのか?という疑惑です。

矢部 宏治「知ってはいけない 隠された日本支配の構造」

                                  敗戦からサンフランスコ講和条約締結まで日本は連合国(実質的には米軍)の占領下にあり、極東委員会の下に置かれたGHQの間接統治下にありました。日本の形式的独立後は、日米安保体制と「日米構造協議」~「日米円ドル委員会」、それに代わる「対日年次改革要望書」(日本側は「対米年次改革要望書」)、在日米国大使館からの指示、などによって米国は日本を米国のコントロール下に置いてきました。

2000年からは米民間シンクタンクCSISの知日強硬派(ジャパンハンドラーズ)が作成する「アーミテージ・ナイ・レポート」も加わり、日本政府は米国によってがんじがらめにされたような状態でした。

このような手も足も出ない状態に一矢報いて風穴を開けたのが民主党鳩山政権。何と2009年に対日年次改革要望書」を廃止ししてしまったのです。困った米国側はそれに代わる日本支配のツールとして日米合同委員会に目を付け、GHQのような機能を持たせたとしても不思議ではないと思われるのです。あるいは、設置された時からそれが目的だったのかもしれません。

「アーミテージ・ナイ・レポート」も重みを増してきており、2024年の第6次レポートまで平均4年に1度、報告書と言う名の「対日要求書」を日本政府に突き付けています。

鳩山元総理は、日米合同委員会について2015年に次のように証言しています。

「そこで決まっていることが何であるかはいっさい秘密で、総理である私にもまったく報告がないわけです。その会合がやっているということ自体も伝わってきていないわけです。でも、現実にはそういうことがあると。そして、それがある意味で日本の憲法より上に行くような話になっているという。」(政治討論番組「【西部邁ゼミナール】鳩山元首相が語る、米軍基地問題」)

吉田敏浩氏は、在日米軍司令部の内部文書では「日米合同委員会の日米双方の代表は、それぞれの『政府を代表』し、『合同委員会の合意は日米両政府を拘束する』」となっていると指摘しています。

日米合同委員会での協議内容は主に日本側を拘束するものばかりですから、これが事実なら、憲法の上にある日米合同委員会が事実上日本の最高意思決定機関という事になります。これでは、日本の国会は日米合同委員会で決められた「合意事項」を立法化してを追認するだけという形式的機関に過ぎなくなります。

後で書くように「合意事項」に逆らった総理は民主党鳩山総理のように寄ってたかって潰されます。岸田総理はそのことが分かっていたので、新型コロナの感染源として米軍基地が問題になっても「君子危うきに近寄らず」で、日米地位協定がいかに不平等であろうと自らの保身のために見て見ぬふりを決め込んだのです。

隔週で開かれる日米合同委員会で米側から日本の国内政策に関する指示や命令が伝達されたとしても、日本側はこれを拒むことは出来ません。両国の力関係からいっても、「協議」というのはただの建前に過ぎませんから。

ここでの合意件数が1995年時点で約4000件という事は明らかになっていますが、その後、今日に至るまでの合意件数や議事録、「合意内容」(密約)は国会への報告義務も公表義務もないので今もって秘密のベールに包まれたままです。

日米合同委員会に日本の総理は参加しておらず、その「合意内容」も必要がなければ知らされることはありません。しかし、日米を法的に拘束する「合意事項」は厳然と存在し、時の総理が沖縄普天間基地を県外に移設したいと思っても「合意事項」が壁になって断念せざるを得なくなり、挙句の果ては米国の方針に逆らった総理として失脚にまで追い込まれてしまうのです。

これが「独立国日本」の本当の姿です。

この組織図だけでも日本が未だに米軍の軍政下にある事は、一目瞭然
日米合同委員会は、分科会が36もある巨大な組織

対米独立派総理の政権は短命に終わるが、売国総理は長期政権を約束される

以上のようにサンフランシスコ条約で形だけ「独立」した日本の戦後政治は、今日までずっと米国の実質的コントロール下に置かれてきました。戦後の日本政治を支配してきた自民党自体が、米国CIAが資金を出して作り育てた政党なのですから当然です。

それでも歴代総理の対米従属度には多少の濃淡があり、進んで米国の言いなりになって日本より米国の要求や利益を最優先にした吉田茂、佐藤栄作、中曽根康弘、小泉純一郎、安倍晋三などはどれも長期政権でした。これらの売国総理はドジさえ踏まなければ、あらかじめ長期政権を約束されていたのです。

ただし、戦前から外交官として国政に携わり、戦後は自民党の主流派を率いた吉田茂の場合は少し複雑で、岸信介と同様、単純な対米従属派とは言えない側面もあります。しかし、日本の形式的独立と引き換えに日米安保条約を結び、半永久的に日本を米国の属国にした罪は万死に値します。
                                  これに対し、米国のお眼鏡にかなわなかったり、怒りを買ったりしたと見られる鳩山一郎(再武装論者で対米独立派 日ソ国交回復を実現)、石橋湛山(リベラル保守で対米独立派、表面的には病気により僅か2か月で退陣)、田中角栄(ベトナム戦争派兵要請拒否、日中国交回復、独自の資源外交等で米国の怒りを買い、「ロッキード事件」という陰謀により失脚)などはいずれも短命内閣に終わっています。

以上の他に、鈴木善幸(集団的自衛権を容認せず)、宮澤喜一(宏池会最後の総理でリベラル保守)、海部俊樹(湾岸戦争に自衛隊を派兵せず)、橋本龍太郎(「米国債を売りたい」発言)、福田康夫(清話会にしては例外的にまともな総理)などの内閣もその政治姿勢が米国の気に入らなかったらしく短命でした。

戦犯訴追を免除されるのと引き換えにCIAの手先となる事で巣鴨プリズンから釈放された岸信介と「貧乏人は麦を食え。」発言及び「所得倍増計画」で有名な吉田茂の後継者池田隼人ですが、前者は60年安保反対闘争、後者は病に倒れなければもっと長期政権になっていたはずです。        

自民党以外の内閣がどれも短命だったのは、言うまでもありません。   対米自立を試みた最後の総理である民主党鳩山由紀夫は、目玉政策だった「最低でも普天間基地の県外移設」が米国と国内の霞が関官僚が結託した「謀略」によって白紙撤回。

「対日年次要望書」を廃止し、「日米合意事項」に逆らった鳩山総理は、その後、米国の意を受けた霞が関官僚、自民党、民主党右派、マスコミなどの総攻撃を浴び、僅か9か月で退陣に追い込まれてしまいました。

この鳩山内閣の事例は「米国に逆らった総理は潰される」という格好の見本となりました。これ以降、米国による日本政府に対するコントロールは格段に強まり、第2次安倍政権以降は米国の理不尽な要求があっても断るどころか進んで迎合。国民の生活などそっちのけで米側要求の実現が全てに優先するようになります。

法的従属

1957年の砂川事件で、「日米安全保障条約」を違憲とした一審の地裁伊達判決に驚愕した日本政府と当時の田中耕太郎最高裁長官は、司法の独立をかなぐり捨てて裁判の経過を何と実質的な被告側である当時のマッカーサー駐日米大使に逐一リーク。         

米国大使からの指示を受けた日本政府は短期的決着を図るため高裁をとばして最高裁に跳躍上告。最高裁は違憲立法審査権を事実上放棄した統治行為論(「安保条約のような重大で高度な政治性をもつ問題は判断しない」)を初めて採用して伊達判決を破棄、一審に差し戻しました。この日を境に、日本は真の意味での法治国家ではなくなってしまっています。

この問題については、こちらの記事で詳述しています。

「砂川事件」の本質を衝いた衝撃的な秀作ドキュメンタリー。

モーニングショー・そもそも総研日本国憲法はすでに死んでいる?』」

上に書いたようにこれによって日本では最高法規である憲法より国際条約である「日米安全保障条約」が上位に立ことが確定。日本は憲法ではなく「日米安保条約」及び「日米地位協定」(密約含む)の所謂「安保法体系」によって支配される国になりました。

ですから、TPPやTiSA(新サービス貿易協定)、日米FTAなどを国家主権をグローバル企業に売り渡す売国協定として裁判に訴えても、「重大で高度な政治性をもつ問題」であるとして最高裁では門前払いになります。

政府自民党が平気で憲法を無視したり、「解釈改憲」をくり返したりするのも、最高裁が絶対に違憲判決を出さないことが分かっているからです。

「モーニングショー・そもそも総研」が指摘しているように、日本の裁判所が米軍基地周辺の騒音被害訴訟で絶対に訓練飛行差し止め判決を出さないのも東京上空で米軍ヘリが毎日超低空で訓練飛行(実は米軍関係者のための遊覧飛行?)を行えるのも、日本では国民の人権を守る最後の砦である憲法が機能していないからなのです。
                                  他の主権国家と違って、憲法の根幹部分が「死文化」または「停止状態」で十分に機能していない日本において、「三権分立」は画に描いた餅でしかありません。「国権の最高機関」であるはずの国会が事実上行政(内閣)に従属しているのが日本の実態であり、司法も全く同じです。

経済的従属

軍事的、政治的、法的従属について考えてきましたが、経済も例外ではありません。これについては以下の記事に詳しく書いていますので、参照願えれば幸いです。

同じ敗戦国独伊の現状

さて、第二次世界大戦で日本と同じ枢軸国側だった独伊と米国との関係がどうなっているのか、参考のために少し見てみましょう。
                                  西ドイツも日本と同様に戦後、米英仏などの占領軍による軍政が敷かれています。1949年の西ドイツ成立後の1955年にNATOに加盟し、不平等な「NATO地位協定」を結びました。しかし、日本と違って戦後の粘り強い対米交渉によって現在では駐留軍の治外法権等の問題はほぼ解消されています。

条約上も駐留軍との関係は平等に近いものに改定されており、訓練飛行は勿論、NATO軍兵士の検疫にも国内法が適用されます。

ドイツの場合は、戦後のドイツがナチズムの完全否定、オーデル・ナイセ以東の広大な旧ドイツ領土の完全放棄による国境線の確定と周辺国との和解、ユダヤ人虐殺に対する謝罪と賠償等を通して欧州諸国の信頼を得、経済発展やEU内での地位向上を背景に、米国などと粘り強い交渉を積み重ねてきた結果です。
                                  また、占領状態が終わり、戦前のナチスドイツとは全く別の国家「ドイツ連邦共和国」が成立して以降は、完全に主権を回復した独立国であり、どこぞの国のように独立国家のふりをしながら実際には主権を他国に売り渡して平然としているなどということもありません。

ドイツと日本の戦後体制の違いについては、こちらの記事で触れています。

これはイタリアも同様で、現在、イタリアに駐留しているNATO軍(米軍)の訓練飛行にはイタリアの国内法が適用され、市街地上空を我が物顔に低空飛行するなど法制上もあり得ないことです。必要があればイタリア当局がNATO軍(米軍)基地内に入って査察することも可能です。

これは独伊だけの例外的な事例ではなく、元植民地のフィリピン、米軍の占領状態にあったイラク、アフガニスタンなどの米軍基地にも駐留国の国内法が適用されており、米軍の完全な治外法権が認められているのは世界広しといえども日本だけです。

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「自発的隷従」からの脱却

日本の場合は、政府自民党自体が現在の不平等な日米安保体制に満足して米国に自発的に隷従し、この体制の半永久的な継続を望んでいるため、地位協定の小幅な改正さえできない状態が70年以上も続いてきたので非常に厄介です。

戦前、天皇がいた地位に現在は米国が「君臨」しており、自民党及び右翼岩盤支持層は支配者としての米国を「臣下」として崇め奉っている有様。広島と長崎に原爆を投下したのが米国である事など、とっくに忘れてしまったようです。

明治時代の元勲や外交官たちは徳川幕府が結んだ不平等条約の撤廃や関税自主権回復のために長年に渡ってそれこそ血がにじむような努力を重ねましたが、現在の政府与党やその周辺のエセ右翼たちには、そのような気概やブライドは皆無です。

現在の体制のままの方が甘い汁を吸い続けられますから、米国の「代官」あるいは米国植民地の「現地支配者」としての地位に満足し切っているのです。

以上の事例を見るだけでも日本の支配政党である自民党が、世界的に見ても非常に特異で異常な政治集団である事がよく分かるはずです。

では、日本がドイツのように真の独立を勝ち取るためにはどうしたらよいのでしょうか。

日本が本当の独立国家になる選択肢は三つ。
①日米安保条約を完全に破棄して、以後、どの国とも防衛条約は結ばない。②日本の頸木になっている日米安保条約を一度破棄して新たに対等平等な条約を結び直す。
③日米地位協定も含めた現在の安保条約を抜本的に改定して、対等平等な条約に近づける。

②と③は憲法に抵触しますから、憲法の改正が必要になります。

言うのは簡単ですが、野党の立憲民主党までが現在の日米安保体制堅持が党是である現状と、ここでは立ち入りませんがどの選択肢を選んでもそれぞれ非常に難しい問題が山積している事を考えると、なかなか一朝一夕のようにはいかないように思います。

それでも日本が米国から独立するための第一歩として、まずは日本国民自身が「我が国は、アメリカのソフトな植民地とでも言うべき対米従属国家である」という現状をしっかり認識し、その事実に真剣に向き合うことが必要です。

現状を正しく知れば、いかな従順な日本人でも怒りを感じないはずはありません。そこから正しいナショナリズムが喚起され、真の独立と主権回復を要求する国民の広範なムーブメントが起これば米国も無視はできなでしょう。

米国施政下にあった沖縄が県民一丸となった島ぐるみの粘り強い運動によって本土復帰を実現したように、真の独立と主権回復を願う国民世論の強い後押しがあれば、米国と言えども門前払いは出来ないはずなのです。
                                  日本国民が長い眠りから覚め、70年以上も続いた「自発的隷従」による思考停止状態から脱却すればドイツなどを手本に日本政府を突き動かし、明日からでも「真の独立」のための第一歩として、対等平等を目指した『日米地位協定』改正交渉を開始することは可能です。

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