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「カバーポップス黄金時代」解説と聴き比べ② 「夢見るシェルター人形」「ハート悲しく」等14曲

カバーポップスの2回目です。時々(いやいや頻繁に)脱線しますが、どうかご容赦くださいませ。

「カバーポップス」については、こちらに詳しく書いています。

ジューシィ・フルーツ「夢見るシェルター人形」~「ジェニーはご機嫌ななめ「~「そんなヒロシに騙されて」 

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ジューシィ・フルーツは、近田春夫のバックバンドだったBEEFが前身。  デビュー曲の「ジェニーはご機嫌ななめ」がヒットし、高田みずえとの共作カバーとなった11枚目のシングル「そんなヒロシに騙されて」(元々は、サザンオールスターズの曲)もヒットしています。
                               
「夢見るシェルター人形」は通算9枚目のシングル。元歌は年配の方なら皆様よくご存じの「夢見るシャンソン人形」。このカバー曲は核兵器に関連した歌詞が禁忌にふれて、レコード発売直後に放送禁止になりました。         フロントでボーカルとリードギターを担当しているのは、イリヤこと奥野敦子。なかなか華があり、BEEF時代も数少ない女性ギタリストとして目立っていました。 
                                  歌詞の改作は「飛んでイスタンブール」で知られるちあき哲也。SF的寓話で核兵器と放射能を思いきり皮肉ったブラックユーモア的センスが光ります。

こちらはスタジオ録音盤です。                  ジューシィ・フルーツ「夢見るシェルター人形」

ちょっと脱線しますが、イリヤつながりで近田春夫& BEEF 「ああ、レディハリケーン」(1979)                          

近田春夫の代表曲。当時はYMOを筆頭にテクノポップ全盛時代で、これに便乗したテクノ歌謡なんてのもありました。

フランス・ギャル「夢見るシャンソン人形」              ※画面右下隅の四角いアイコンをクリックすると画面が拡大されます。

フランス・ギャルは、1965年のユーロビジョン・ソング・コンテストでセルジュ・ゲンスブールの提供曲「夢見るシャンソン人形」を歌って優勝。ヨーロッパでの人気を不動のものにしました。売り出し方は前年の同コンテストで優勝したジリオラ・チンクェッティ(「夢みる想い」)と似ていますね。次のシングル「涙のシャンソン日記」もヒットしています。        

映像の間奏の合間にフランス・ギャルがウロウロ、キョロキョロと周りを見回して挙動不審なのが面白いですね。まだテレビスタジオ慣れしていなかったのでしょうか。 
            
歌の方は飛びぬけてうまいというほどではありませんが、その可愛らしいフランス人形のようなルックスも手伝って曲は大ヒットしました。フレンチポップス系女性歌手の中ではシルヴィ・ヴァルタンと並び、日本で最も人気があった歌手でした。「夢見るシャンソン人形」は、沢山の歌手がカバーしています。

                                  フランス・ギャル関連でもう1曲。                    藤真利子「うわきなパラダイス急行」

女優の藤真利子は、歌も歌っていたんですねえ。知りませんでした。元歌は、フランス・ギャルの「Laisse tomber les filles」(娘たちにかまわないで)。割と軽い感じで、サラッと歌っています。

フランス・ギャル「Laisse tomber les filles」(娘たちにかまわないで)

ファースト・アルバム「夢みるフランス・ギャル」に収録された曲。シングル曲ではないので、当然、日本語カバーもほとんどなく、知る限りでは藤真利子のアルバム収録曲が唯一だと思います。              クエンティン・タランティーノ監督の映画『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2007)のエンディング曲として使われたことも手伝い欧米では大人気。エンディング曲を歌ったエイプリル・マーチを始め、様々なアレンジのカバーがユーチューブにアップされています。

こちらのミュージカル映画『Salut Les Copains』でも挿入歌として使われています。


前記、エイプリル・マーチによるカバー。後半はフランス語に変わりますが、やはりこの曲はフランス語の方がしっくりきますね。

                                  河合奈保子「ハート悲しく」                     

河合奈保子は80年代女性アイドル歌手の中では歌唱力がある方ですが、いかんせんこの曲に関しては歌唱が単調で繊細な表現力が不足しているため曲の内容が心に染み入ってきません。同じカバーなら稲垣潤一盤のほうがいいかもしれません。

稲垣潤一「ハート悲しく」

河合奈保子とは、歌詞が異なります。こちらの歌詞の方がいいですね。

マーティ・バリン「ハート悲しく」

ヤードバーズの「ハートせつなく」と間違えてしまいそうな邦題ですね。どちらも同じ意味ですが。

マーティ・バリンは、ポール・カントナーらと代表的サイケデリックロックバンド「ジェファーソン・エアプレイン」を1965年に結成。ボーカル担当でしたが、後からグレイス・スリック(松任谷由実が「グレイス・スリックの肖像」で歌ったあの人です) が加入してくると段々出番が減るようになり、サイケデリックロックがあまり性に合わなかったこともあってか、結局、バンドを抜けてしまいます。ただし完全に縁が切れた訳ではなく、1970年代後半グレイス・スリックが薬物問題を起こしたこともあり、「ジェファーソン・スターシップ」時代も出たり入ったりしていました。

「ハート悲しく」はソロ時代のマーティ・バリンの代表曲で全米チャート8位にランクイン。その哀愁溢れるメロディが受けて、日本でもヒットしました。

                                 ザ・ピーナッツ「かわいい小鳥」

ザ・ピーナッツはカバーポップスの草分けとして、その黎明期にデビュー曲「可愛い花」(1959)、「情熱の花」(1959)などを大ヒットさせ、カバーポップス黄金時代を築いた立役者と言っていいでしょう。

ザ・ピーナッツは沢田研二と同様、海外進出を狙っていた時期があり、エド・サリヴァン・ショーに出演してジャズのスタンダードナンバー「恋人よ我に帰れ」を披露したほか、ヨーロッパでも8枚のシングルレコードを出しています。

「かわいい小鳥」は1965年の発売で、これ以降、カバーよりもオリジナル曲に力を入れるようになります。契約条件にもよりますが、カバーだとヒットしても、半分以上の印税を外国に持っていかれる可能性がありますから。
代表的オリジナル曲は、「恋のバカンス」(どういう訳かロシアでヒットしました)、「ふりむかないで」「恋のフーガ」「ウナ・セラ・ディ東京」「ローマの雨」など。

マリアンヌ・フェイスフル「かわいい子鳥」

3枚目のシングルで、U.Kチャート6位、全米チャート32位。
元歌はJohn D Loudermilk が1962年にリリースした「The Little Bird」で、翌年にはナンシー・シナトラがカバーしていす。

1964年、ローリング・ストーンズから提供された「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ (涙あふれて)」で歌手デビュー。この曲が大ヒットして清純派アイドルとしての地位を確立しました。1960年代後半にミック・ジャガーと交際していましたが、麻薬問題を起こして1970年に破局。         

余談ですが、マリアンヌは同時期にポール・マッカートニーと婚約していた映画女優ジェーン・アッシャー(兄はビーター&ゴードンのビーター・アッシャー)とも知り合いで、二人はともに上流階級の出身。ジェーンは1968年にボールとの婚約破棄を発表していますが、こちらはポールの止まらない女遊びが原因でした。
                                  マリアンヌ・フェイスフルはジェーンと同じように映画女優としての一面もあり、ゴダールの『メイド・イン・U.S.A』で映画デビュー。以後14本の映画に出演しています。一番有名なのがアラン・ドロンと共演した『あの胸にもういちど』。全裸に全身黒革のライダースーツをまとってハーレーに跨り、恋人のもとへとぶっ飛ばすシーンが公開当時話題になりました。ラストシーンはアメリカン・ニューシネマ『バニシングポイント』とそっくりで、なかなか衝撃的でした。 
                                 「ルパン三世」の峯不二子のモデルが、この映画のヒロインと言うのも有名です。「サイボーグ009」のヒロイン003のモデルが、かつて日本でも大人気だったフランスの女優フランソワーズ・アルヌールなのと同じようなものですかね。

こちらが、オリジナル曲。
John D Loudermilk 「The Little Bird」

                                  ナッシュビル・ティーンズ「かわいい子鳥」

日本では、マリアンヌ・フェイスフルとの共作扱いで、ほぼ同時期に発売されました。勿論、よく売れたのはマリアンヌ・フェイスフルの方で、こちらはそこそこという感じでした。本国では38位止まりでしたから、それよりは多少よかったかと。

しかし、マリアンヌ・フェイスフル盤とはまた違った独特なよさがあり、静かな歌い出しから始まりハーモニーを生かし徐々に盛り上げていくのがロックバンドらしくて、なかなかよいアレンジだと思います。
 
ナッシュビル・ティーンズは、次回の「リバプール・サウンド」を初めて映像で紹介した映画『ポップ・ギア』でも取り上げます。                    

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