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「さらば冬のかもめ」で心が洗われる
「さらば冬のかもめ」で心が洗われる
皆さんは「さらば冬のかもめ」という映画を知っていますか?
ジャック・ニコルソン主演の1973年のアメリカ映画(日本公開は1976年)です。
ジャック・ニコルソン主演というと、「カッコーの巣の上で」「シャイニング」「チャイナタウン」といったメジャー作品を思い浮かべる人が多いかも。
この「さらば冬のかもめ」は、佳作・小品といった感じですが、彼の主演作で私が一番好きな作品です。
なぜ好きになったのか?
それは、登場人物に愛すべきダメ人間がいるから。
どうしてダメ人間に注目するようになったかというと、
やはり学生時代の吃音の経験でしょうね。
当時の私は吃音に正面から向かい合うことができず、
(向かい合おうとしても挫けることが多く)
映画やミステリーに現実逃避していました。
以来、社会不適合者というか、現実と上手く折り合いをつけるのが苦手な人にどうしても惹かれてしまうみたいなんです。
現実に飲み込まれそうになりながらも、何とか生き残る。
あるいは自分の居場所を作ろうとする主人公に感情移入していたのかもしれません。
ですから、アメリカン・ニューシネマの映画など、まさにうってつけ。
主人公がダメダメだったり、悲劇的な結末を迎えるのが当たり前でしたから。
この「さらば冬のかもめ」もアメリカン・ニューシネマに位置づけられます。
でも、最後は暖かい気持ちにさせてくれます。
そこがまたいいんです。
映画の内容は、海軍の下士官ジャック・ニコルソン演じるバダスキーとマルホールが、ランディ・クエイド演じるメドウスをポーツマス海軍刑務所まで護送するというロードムービーです。
ランディ・クエイドはこの作品以前に「ラストショー」に出演しています。
ところで、なぜメドウスは、刑務所に送られることになったのか?
基地内の小児麻痺献金箱から40ドルを盗んだ罪で、8年の懲役と懲戒除隊の刑を喰らってしまったからです。
少額なのになぜそんな重い罪になったのか?
それは、献金箱が福祉活動大好きな隊長夫人の肝入りだったからという、おまぬけな理由。
しかも、本当は盗んだのではなく、盗もうとしただけなのがあとでわかります。
メドウスが映画の中で「盗みが辞められない」と涙ながらに訴えるシーンがあります。
たぶん窃盗症(クレプトマニア)だったと思われます。
そんなメドウスを気の毒に思った、バダスキーとマルホールが本来は2日間で行けるところを1週間かけて彼に楽しい思い出を作ってあげようとするのです。
本来荒くれもののマダスキーが、ときおり見せる優しさにグッとくるものがありました。
ちなみに、ここでのジャック・ニコルソンは、気性は荒いですが「シャイニング」に見られるような狂気はないです。
登場人物はほとんどこの3人だけで、あとで見直したら、
「殺しのドレス」に出ていたナンシー・アレンもいました。(まだ初々しい)
監督はハル・アシュビー。この後も「帰郷」などの名作を撮りました。